肺塞栓症のリスク因子と予防の考え方
「エコノミークラス症候群」は一場面。手術や入院など、ほかの背景も確認します。
肺塞栓症の背景には、手術・入院・骨折後の安静、がん、過去の血栓症、妊娠・産後、ホルモン薬、長時間動かない移動などがあります。飛行機に乗っていなくても起こり、危険因子がなくても完全には否定できません。予防は全員に同じ薬や弾性ストッキングを使うのではなく、血栓と出血のリスクを踏まえて決めます。
血栓の既往、手術・入院、がんなどを優先して確認する
静脈血栓ができる可能性は、長く動けないことに加え、手術・骨折・入院、がん、過去の静脈血栓塞栓症、妊娠・産後、エストロゲンを含む薬、肥満、加齢などで変わります。複数の因子が重なるときや、過去に血栓症を経験した人では、個別の予防計画が大切です。[1][2][3]

- 医療に関係する場面
- 手術・入院・骨折・長期安静・がん治療
- 体質・既往
- 以前の血栓症、特定の血栓傾向、妊娠・産後
- 服薬・生活
- エストロゲンを含む薬、長時間の移動や着座
長時間移動は一因だが、移動時間だけで危険度は決まらない
飛行機、列車、車などで長時間同じ姿勢が続くと、脚の静脈血流が滞りやすくなります。ただし、健康な人の短い移動で一律に抗凝固薬が必要という意味ではありません。席を立てる時に歩く、座ったまま足首を動かす、きつすぎる衣服を避けるなど、無理のない方法を考えます。高リスクの人は旅行前に主治医へ具体的な予防法を相談してください。[1][4][5]
長時間の航空機移動を対象とした研究では無症候性の脚の血栓を減らす根拠がありますが、症候性の肺塞栓症を防ぐ効果を十分に示したものではありません。サイズや適応も個別に確認します。[5]
手術・入院では「動ける時期」と出血リスクを合わせて予防する
入院中や手術後の予防では、病気や手術の種類、歩けるまでの期間、出血の可能性に応じて、早期離床、足を動かす方法、機械的予防、薬物予防などを選びます。薬を使うかどうかは本人が単独で決めず、担当チームの指示を確認してください。がん治療中は病状や治療内容によりリスクが変わります。[1][2][6]
妊娠・産後やホルモン薬は、ほかの背景と一緒に考える
妊娠・産後、経口避妊薬やホルモン補充療法なども血栓リスクに関わる場合があります。ただし薬の種類や既往歴によって考え方は異なります。治療薬を自己中止せず、過去の血栓症、家族歴、喫煙、長期安静などを処方医へ伝え、必要な代替方法を相談してください。[1][2][3]
診察では「旅行したか」だけでなく、移動前後の手術・入院・けが、がん治療、薬、以前の血栓症を時系列で確認します。どれか一つを原因と決めつけず、予防策と検査の必要性を個別に考えるためです。この聞き取りだけで血栓の有無は確定できません。
片脚の腫れ・痛みと、急な息切れ・胸痛を見逃さない
片脚だけの腫れや痛みは深部静脈血栓症の手掛かりです。突然の息切れ、胸痛、失神は肺塞栓症の可能性を含めて緊急評価が必要です。リスク因子がなくても起こり得るため、「旅行していないから大丈夫」と判断しないでください。[1][2][7]
急に息苦しくなった、強い胸痛が続く、倒れた・意識がはっきりしない、唇が青紫色、会話が難しい場合は、記事を読み続けず119番を考えてください。自分で運転しないでください。
緊急時は119番へ予防相談は予定より前に、症状が出たら直ちに
手術・入院・長距離移動が予定され、血栓症の既往、がん、妊娠・産後などがある場合は、事前に主治医へ予防の必要性を尋ねてください。脚の急な左右差が出た時は早めに対面で相談し、息切れ・胸痛・失神があれば救急対応を優先します。市販薬や手持ちの抗凝固薬を自己判断で使わないでください。[1][2]
よくある質問
飛行機に乗らなければ肺塞栓症になりませんか?
いいえ。手術・入院・骨折・がん・妊娠など、移動以外の背景でも起こります。
長時間移動の前に薬を飲むべきですか?
一律には勧められません。血栓と出血の危険、過去の病気、移動時間を踏まえ、主治医と相談してください。
足がむくんだら必ず血栓ですか?
いいえ。むくみには多くの原因があります。ただし片脚だけ急に腫れて痛む場合は対面で評価を受けてください。
参考文献
- 日本循環器学会ほか:2025年改訂版 肺血栓塞栓症・深部静脈血栓症および肺高血圧症に関するガイドライン
- Creager MA, et al. 2026 AHA/ACC guideline for the evaluation and management of acute pulmonary embolism in adults. Circulation. 2026. PMID: 41712677
- Pastori D, et al. A comprehensive review of risk factors for venous thromboembolism. Int J Mol Sci. 2023. PMID: 36834580
- Philbrick JT, et al. Air travel and venous thromboembolism: a systematic review. J Gen Intern Med. 2007. PMID: 17351849
- Clarke MJ, et al. Compression stockings for preventing deep vein thrombosis in airline passengers. Cochrane Database Syst Rev. 2021. PMID: 33878207
- Li M, et al. Venous thromboembolism after oncologic surgery: systematic review and meta-analysis. Thromb Res. 2019. PMID: 30471508
- West J, et al. The value of clinical features in the diagnosis of acute pulmonary embolism: systematic review and meta-analysis. QJM. 2007. PMID: 18089542
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