Gastroenterology / Achalasia

食道アカラシアの症状・検査と治療

飲み込んだものが胃へ進みにくくなる病気です。まず危険な症状を確認し、診断のための検査と、診断後の治療を分けて考えましょう。

最終更新 2026.10.01監修日 2026.10.01
胸やけだけで逆流性食道炎と決めない
検査の目的狭窄と運動障害を分ける
治療後も通院と再評価が必要
結論から

食道アカラシアは、食道の動きと胃への出口の開き方が障害され、食べ物や水が通りにくくなる病気です。症状だけで決めず、内視鏡・造影・食道内圧検査で確認します。治療はPOEM、バルーン拡張、外科手術などを比較します。唾液も飲めない、強い胸痛や息苦しさがある場合は、予約を待たず受診してください。

知りたいことから選ぶ症状と検査・治療比較の詳しい解説へ
01

まず、唾液や水分が飲めるかを確認する

強い胸痛・呼吸困難は119番

強い胸痛に冷汗、息苦しさ、意識が遠のく感じを伴う場合や、窒息して声が出ない場合。アカラシアの症状と決めず救急要請してください。

唾液も飲めないときは直ちに受診

食事が詰まったまま、唾液を飲み込めない、水分が取れない場合は救急外来へ連絡します。水や追加の食べ物で押し流さないでください。

繰り返すつかえは消化器内科へ

体重減少、夜間の逆流・咳、食事時間が延びる変化も伝えます。急な悪化、脱水、発熱を伴う咳は当日中に相談してください。

食道に食物が詰まり、唾液を飲み込めない状態では緊急の内視鏡治療が必要になることがあります。予定の検査日を待ったり、飲食を繰り返して様子を見たりしないでください。[5]

02

胃の手前で通りにくくなる、食道の運動の病気

食道は筋肉を順番に動かして食べ物を胃へ送ります。アカラシアではその動きがうまく働かず、食道と胃の境目も十分に開きません。食道に食物や唾液が残り、つかえや逆流につながります。原因は完全には解明されておらず、食べ方が悪いから起こる病気ではありません。[1][2]

食事中に胸のつかえを感じて手を止め、座ったまま様子を確かめる成人の生成イメージ
食べ物がつかえる場面の生成イメージです。症状から病名を判定する図ではありません。水で無理に押し流さず、唾液も飲めない場合は直ちに医療機関へ連絡してください。

治療では主に胃への出口の抵抗を減らします。飲み込みや食事量の改善を目指す一方、失われた食道の運動そのものを完全に回復させるわけではありません。「治療を受ければ以後の確認は不要」という病気ではなく、症状と食道の状態を長く見ていきます。[2]

03

胸やけがあっても、胃酸の逆流だけとは限らない

アカラシアでみられる変化
固形物だけでなく水も通りにくい、食べたものが戻る、食事時間が長くなる、体重が減る。
逆流性食道炎との違い
アカラシアでは食道内に残ったものが戻ることがあります。酸っぱい感じや胸やけの有無だけでは区別できません。
別の原因も確認する
食道がん、炎症による狭窄、他の運動障害などでもつかえが起こります。年齢や症状の長さだけで除外できません。

胃酸を抑える薬で十分に改善せず、つかえや体重減少がある場合は、処方医に「飲み込みにくさが残っている」と具体的に伝えてください。自分で薬を増やすのではなく、診断を見直す相談が必要です。[2]

診察室から

つかえの相談では、「胸やけ」という言葉だけでなく、固形物と水のどちらが通りにくいか、食後何分で戻るか、横になると咳が出るかを分けて確認します。食事量や体重の変化を一緒に確認すると、検査の急ぎ方や栄養の支援を相談しやすくなります。ただし、この聞き取りだけで診断は決まりません。

04

診断前と診断後で、確認することを分ける

診断前

症状と原因を確かめる

対象
食べ物や水がつかえる、胃薬で改善しない方
根拠
内視鏡・造影・内圧検査を組み合わせる。[2]
注意
がんなどの狭窄を除外し、症状だけで確定しない。
必要な検査を確認する
診断後

治療を選び、経過を見る

対象
食道アカラシアと診断された方
根拠
POEM、バルーン拡張、外科手術を状態に応じ比較する。[1]
注意
食道の運動を完全に元へ戻す治療ではない。
治療ごとの違いを確認する

既に診断されている方は、検査結果に病型や食道の拡張について記載があるかを確認しましょう。受けた治療がある場合は名称と時期も手がかりになります。まだ診断がついていない方は、最初から治療方法を一つに絞る必要はありません。

05

胃カメラと、食道の動きを調べる検査を組み合わせる

  1. 内視鏡で通り道を確認

    食道や胃の入口を観察し、腫瘍や炎症による狭窄などがないか調べます。

  2. 造影で通過を確認

    バリウムなどが食道を通る様子、拡張や曲がり方、残り方を調べます。

  3. 食道内圧検査で運動を確認

    細い管で飲み込み時の圧を測り、出口の開き方と食道の収縮を評価します。

  4. 検査結果を合わせて説明

    結果が一致しない場合は専門施設で再評価し、追加検査の目的を確認します。

初期には内視鏡で特徴的な変化が乏しいこともあります。「胃カメラで異常なし」でもつかえが続くなら、検査結果を持って再相談してください。内圧検査によるタイプ分けは治療を選ぶ材料であり、タイプだけで一律に治療を決めるものではありません。[2][6]

06

POEM・バルーン拡張・手術を、効果と負担から比較する

POEM(経口内視鏡的筋層切開術)
口から内視鏡を入れ、食道の壁の内部から筋肉の一部を切開します。全身麻酔を用い、治療後の胃酸逆流にも注意します。
バルーン拡張術
食道と胃の境目を専用の風船で広げます。複数回の治療が必要になることがあり、食道に穴が開く合併症にも備えます。
腹腔鏡下Heller-Dor手術
腹部から食道の筋肉を切開し、胃を用いた逆流防止の処置を組み合わせます。全身麻酔・手術の負担を含めて検討します。

食道の病型や形、これまでの治療、全身状態、施設の経験、ご本人の希望を合わせて決めます。強い収縮を伴うタイプでは切開範囲を調整できる治療が検討されます。薬は効果や持続時間に限界があり、通常は内視鏡治療や手術と同等の長期治療とは考えません。[1][3]

初回治療のPOEMとバルーン拡張を比較した無作為化試験では、5年後の成績に差がみられました。ただし、追加の拡張を「治療不成功」に含めた評価です。繰り返し拡張する実際の診療全体と同じ意味ではなく、成功率だけで選ぶことはできません。[4]

07

結果用紙と、食事で困っていることを持参する

受診時に伝えること
いつから、固形物と液体の違い、夜間の逆流や咳、体重の変化、治療歴。記録がなくても受診を遅らせないでください。
予約時に確認すること
検査内容、絶食・飲水の指示、鎮静や麻酔の有無、帰宅方法。食道に内容物が残る可能性があるため、普段の食事状況も伝えます。
薬の確認
お薬手帳を持参し、血液を固まりにくくする薬や糖尿病薬を申告します。検査前の休薬は自分で判断せず、施設に確認してください。
費用・生活への影響
保険の扱い、検査・治療・麻酔・入院の自己負担、食事再開と仕事復帰の見込みを施設へ確認します。費用や日数は方法と病状で変わります。

POEMは日本で2016年から保険適用となった治療です。保険が使える場合も、入院費などを含む自己負担は病状や施設で異なるため、事前に見積もりと利用できる医療費制度を相談してください。[7]

食べられる物だけに偏り、体重が減っている場合は、治療の予約と並行して栄養の相談をします。食事の工夫は症状をやわらげる補助であり、必要な検査や治療の代わりではありません。[2]

08

「つかえ」と「逆流」は別々に確認する

治療後に食べやすくなっても、胃酸の逆流や再びつかえる変化に気づくことがあります。胸やけ、食後の逆流、飲み込みにくさ、体重の変化を記録し、決められた再診で相談します。症状だけでは逆流や食道の通過状態を十分に判断できず、内視鏡や造影などを組み合わせます。[2][3]

つかえが再発しても、すぐに「治療失敗」と決まるわけではありません。食道に物が残る原因、逆流による炎症、治療部分の状態などを調べ、必要なら追加治療を検討します。次回受診の時期、悪化したときの連絡先、薬を続ける期間を、退院や結果説明の際に確認しておきましょう。[2]

09

よくある質問

何科に相談すればよいですか?

まず消化器内科へ相談します。食道内圧検査やPOEMに対応する専門施設への紹介が必要な場合があります。唾液も飲めない、強い胸痛や呼吸困難がある場合は通常の予約を待たず救急へ連絡してください。

診断がつくまで食事の記録は必要ですか?

必須ではありませんが、つかえた食物、液体でも起こるか、逆流する時刻、体重の変化を簡単に残すと説明に役立ちます。記録をそろえるために受診を遅らせないでください。

治療法は自分で選べますか?

希望は大切な判断材料です。ただし病型、食道の形、麻酔のリスク、過去の治療などで適した方法が変わります。受けられる選択肢とその理由、別の方法を選んだ場合の見通しを担当医に確認しましょう。

治療後の通院はいつまで続きますか?

一律には決まりません。症状が軽くなっても逆流や通過状態を確認するため通院が必要です。次回検査の目的と時期、症状が戻った際の連絡方法を担当医と決めてください。

10

参考文献