- ✓ 胸痛は心臓疾患から消化器疾患、精神的なものまで多岐にわたる原因があります。
- ✓ 危険な胸痛のサインを知り、適切なタイミングで医療機関を受診することが重要です。
- ✓ 症状に応じた専門科の選択と、緊急時の応急処置について理解を深めましょう。
胸痛は、その原因が多岐にわたるため、時に命に関わる重篤な疾患のサインであることもあれば、比較的軽度な症状であることもあります。適切な診断と治療のためには、胸痛の種類や随伴症状を正確に把握し、適切な医療機関を受診することが不可欠です。この記事では、胸痛の主な原因、対処法、そして何科を受診すべきかについて詳しく解説します。
心臓・血管が原因の危険な胸痛とは?

心臓や主要な血管に起因する胸痛は、緊急性が高く、迅速な対応が求められることが多いです。これらの疾患は、生命を脅かす可能性があるため、症状を正確に認識することが極めて重要です。
虚血性心疾患による胸痛とは?
虚血性心疾患とは、心臓の筋肉に血液を送る冠動脈が狭くなったり詰まったりすることで、心臓への血流が不足し、胸痛を引き起こす病気の総称です。代表的なものに狭心症や心筋梗塞があります。
- 狭心症
- 冠動脈の狭窄により、運動時やストレス時に一時的に心臓への血流が不足して起こる胸痛です。通常、数分で治まります。
- 心筋梗塞
- 冠動脈が完全に閉塞し、心臓の筋肉の一部が壊死してしまう状態です。激しい胸痛が30分以上続き、冷や汗、吐き気、呼吸困難などを伴うことが多いです。
これらの胸痛は、胸の中央部や左胸に圧迫感、締め付けられるような痛み、重苦しさとして感じられることが多く、左腕、顎、背中などに放散することもあります。臨床の現場では、典型的な胸痛だけでなく、「胃の不快感」や「肩こり」として表現されるケースもよく経験します。特に高齢者や糖尿病患者では、痛みが非典型的であることがあるため注意が必要です。BMJのレビューでは、胸痛の鑑別において心臓疾患の可能性を常に考慮することの重要性が指摘されています[1]。
大動脈解離による胸痛の特徴は?
大動脈解離は、心臓から全身に血液を送る大動脈の壁が裂けてしまう非常に危険な病気です。突然、胸から背中にかけて引き裂かれるような激しい痛みが特徴で、痛みが移動することもあります。血圧の左右差や意識障害を伴うこともあり、一刻を争う緊急事態です。実臨床では、このような激しい痛みを訴えて来院された患者さんには、まず大動脈解離を疑い、迅速な画像診断を行うようにしています。
心膜炎・心筋炎による胸痛とは?
心膜炎は心臓を包む膜(心膜)の炎症、心筋炎は心臓の筋肉(心筋)の炎症です。これらの疾患による胸痛は、鋭い痛みや刺すような痛みとして感じられることが多く、深呼吸や体位変換で痛みが変化することがあります。発熱や倦怠感を伴うこともあります。ウイルス感染後に発症することが多く、特に若い世代で心筋炎による胸痛を訴える患者さんも少なくありません。
その他の心臓・血管疾患
- 不整脈: 動悸として感じられることが多いですが、心拍の乱れが胸部の不快感や痛みを引き起こすこともあります。
- 弁膜症: 心臓の弁の機能不全により、胸痛や息切れ、動悸が生じることがあります。
- たこつぼ型心筋症: ストレスなどが引き金となり、一時的に心臓のポンプ機能が低下する病気で、心筋梗塞と似た胸痛を呈することがあります。
心臓・血管系の胸痛は、命に関わる可能性が高いため、疑わしい症状がある場合は躊躇せずに救急車を呼ぶか、緊急で医療機関を受診してください。特に、冷や汗、吐き気、呼吸困難、意識障害を伴う場合は、緊急性が非常に高いです。
肺・食道・筋肉などが原因の胸痛とは?

胸痛の原因は心臓だけでなく、肺や食道、胸壁の筋肉や骨など、様々な臓器や組織に由来することもあります。これらの原因による胸痛も、適切な診断と治療が必要です。
肺疾患による胸痛の種類と特徴は?
肺に関連する胸痛は、呼吸や咳によって悪化することが多いのが特徴です。代表的なものには以下があります。
- 気胸: 肺に穴が開き、空気が漏れて肺がしぼむ病気です。突然の鋭い胸痛と息苦しさが特徴で、特に若い痩せ型の男性に多く見られます。
- 肺炎・胸膜炎: 肺や肺を覆う胸膜の炎症です。深呼吸や咳で悪化する鋭い胸痛、発熱、咳、痰などを伴います。
- 肺塞栓症: 肺の血管に血栓が詰まる病気で、突然の胸痛、呼吸困難、失神などを引き起こすことがあります。長時間のフライト後や手術後などにリスクが高まります。
日常診療では、呼吸器症状を伴う胸痛の患者さんには、まず胸部X線検査やCT検査を行い、肺の状態を詳細に確認するようにしています。小児における胸痛の原因に関する研究でも、心臓以外の原因が多数を占めることが示されており、特に呼吸器系疾患が挙げられています[4]。
消化器疾患による胸痛の症状とは?
食道や胃などの消化器系の問題が胸痛として感じられることも少なくありません。これらの痛みは、心臓の痛みと区別がつきにくい場合があるため、注意が必要です。
- 胃食道逆流症(GERD): 胃酸が食道に逆流することで、胸焼けや胸の痛みを感じます。食後に悪化しやすく、横になると症状が強まることがあります。
- 食道痙攣: 食道の筋肉が異常に収縮することで、突然の激しい胸痛を引き起こします。食べ物を飲み込む際に痛みが生じることもあります。
- 胃潰瘍・十二指腸潰瘍: 胃や十二指腸の粘膜が傷つくことで、みぞおちの痛みとして感じられることが多いですが、胸の痛みとして自覚されることもあります。
実際の診療では、「胸焼けのような痛み」や「食後に悪化する胸痛」を訴える患者さんが多くいらっしゃいます。問診で食事との関連や、症状の持続時間などを詳しく聞くことが診断の重要な手がかりとなります。
筋肉・骨・神経が原因の胸痛とは?
胸壁の筋肉や骨、神経の異常も胸痛の原因となります。これらの痛みは、体の動きや特定の姿勢で悪化することが特徴です。
- 肋間神経痛: 肋骨に沿って走る神経が刺激されることで、ピリピリとしたり、刺すような痛みが起こります。咳やくしゃみ、深呼吸で痛みが強まることがあります。
- 肋軟骨炎(ティーツェ症候群): 肋骨と胸骨をつなぐ軟骨の炎症です。特定の場所を押すと痛みが強くなるのが特徴です。
- 帯状疱疹: ウイルス感染により、胸部の皮膚に発疹が現れる前に、神経痛のような痛みが先行することがあります。
このような胸痛の場合、診察時に痛む部位を触診したり、患者さんに体を動かしてもらったりすることで、痛みの原因を特定できることがあります。特に、特定の動作で誘発される痛みや、押すと痛む場合は、筋肉や骨、神経が原因である可能性が高いです。
精神的な要因による胸痛とは?
ストレスや不安、パニック障害などの精神的な要因が胸痛として現れることもあります。心臓や他の臓器に異常がないにも関わらず、胸の痛みや圧迫感を訴えるケースです。
- パニック発作: 突然の激しい動悸、息苦しさ、胸の痛み、めまいなどを伴い、死の恐怖を感じることがあります。
- 心身症: ストレスが身体症状として現れるもので、胸痛もその一つです。
初診時に「検査では異常がないのに胸が痛い」と相談される患者さんも少なくありません。このような場合、身体的な疾患を除外した上で、精神的な側面からのアプローチも検討します。患者さんの背景にあるストレスや生活環境を丁寧に聞き出すことが、適切な診断と治療に繋がると実感しています。
胸痛の応急処置・受診先・検査とは?
胸痛を感じた際、どのように対処し、どの医療機関を受診すべきか、またどのような検査が行われるのかを知ることは、適切な医療を受ける上で非常に重要です。
緊急性の高い胸痛への応急処置と受診の目安は?
緊急性の高い胸痛の場合、迅速な対応が命を救うことにつながります。特に以下の症状がある場合は、迷わず救急車を呼ぶか、緊急で医療機関を受診してください。
- 突然の激しい胸痛、締め付けられるような痛み
- 痛みが30分以上続く場合
- 冷や汗、吐き気、呼吸困難、意識障害を伴う場合
- 左腕、顎、背中などに痛みが広がる場合
応急処置としては、まずは楽な姿勢で安静にし、衣類を緩めて呼吸を楽にすることが重要です。狭心症の持病がある方は、処方されているニトログリセリン舌下錠を使用してください。しかし、ニトログリセリンが効かない場合や、症状が悪化する場合は、すぐに救急車を要請する必要があります。欧州心臓病学会の報告では、胸痛で救急外来を受診する患者の適切なトリアージが、医療資源の効率的な利用と患者の予後改善に繋がるとされています[3]。
胸痛で何科を受診すべき?
胸痛の原因は多岐にわたるため、どの科を受診すべきか迷うこともあるでしょう。症状に応じて、以下の科が考えられます。
| 症状の特徴 | 推奨される受診科 | 考えられる疾患例 |
|---|---|---|
| 締め付けられるような痛み、息切れ、冷や汗 | 循環器内科 | 狭心症、心筋梗塞、大動脈解離 |
| 呼吸時の痛み、咳、痰、発熱 | 呼吸器内科 | 気胸、肺炎、胸膜炎 |
| 胸焼け、食後の痛み、胃の不快感 | 消化器内科 | 胃食道逆流症、食道痙攣、胃潰瘍 |
| 特定の動作や圧迫で痛む、ピリピリする痛み | 整形外科、内科 | 肋間神経痛、肋軟骨炎 |
| 不安、ストレス、パニック症状を伴う | 心療内科、精神科 | パニック障害、心身症 |
まずは内科を受診し、医師の判断で専門科を紹介してもらうのが一般的です。特に緊急性が疑われる場合は、救急外来を受診してください。
胸痛の診断で行われる主な検査は?
胸痛の診断には、問診や身体診察に加え、様々な検査が行われます。実際の診療では、患者さんの症状や既往歴、リスク因子などを総合的に評価し、適切な検査を選択することが重要なポイントになります。
- 心電図: 心臓の電気的活動を記録し、不整脈や虚血性心疾患の有無を調べます。緊急性の高い胸痛では、まず行われる検査の一つです。
- 血液検査: 心筋障害マーカー(トロポニンなど)や炎症反応、貧血の有無などを調べます。
- 胸部X線検査: 肺や心臓の形、大きさ、胸水の有無などを確認します。気胸や肺炎の診断に有用です。
- 心臓超音波検査(心エコー): 心臓の動きや弁の状態、心臓の壁の厚さなどをリアルタイムで観察します。
- CT検査: 肺の病変、大動脈解離、肺塞栓症など、より詳細な情報を得ることができます。
- 内視鏡検査(胃カメラ): 食道や胃の疾患が疑われる場合に行われます。
症状の掛け合わせ(胸痛+〇〇)でわかることとは?

胸痛は単独で現れることもありますが、他の症状と組み合わさることで、より具体的な原因を特定する手がかりとなります。複数の症状が同時に現れる場合、特に注意が必要です。
胸痛と息切れが同時に起こる場合、どんな病気が考えられますか?
胸痛と息切れが同時に現れる場合、呼吸器系または循環器系の重篤な疾患が隠れている可能性があります。特に、突然発症した場合は緊急性が高いです。
- 心筋梗塞: 心臓への血流が途絶え、心臓のポンプ機能が低下することで息切れを伴います。
- 肺塞栓症: 肺の血管が詰まることで、突然の胸痛と激しい息切れが生じます。
- 気胸: 肺がしぼむことで、胸痛とともに呼吸が苦しくなります。
- 心不全: 心臓の機能が低下し、全身に十分な血液を送れなくなることで、息切れやむくみを伴う胸痛が生じることがあります。
臨床の現場では、胸痛と息切れを訴える患者さんに対し、まず心電図と胸部X線検査、そして血液中の酸素飽和度を測定し、緊急性の判断を迅速に行います。特に、安静時にも息切れが続く場合は、重篤な状態である可能性が高いです。
胸痛と発熱がある場合、どのような疾患が疑われますか?
胸痛に発熱が加わる場合、感染症や炎症性の疾患が原因である可能性が高いです。
- 肺炎・胸膜炎: 肺や胸膜の炎症により、胸痛、咳、痰、発熱が生じます。
- 心膜炎・心筋炎: 心臓を覆う膜や心臓の筋肉の炎症で、胸痛とともに発熱、倦怠感を伴うことがあります。
- 帯状疱疹: 発疹が現れる前に、神経痛のような胸痛と微熱を伴うことがあります。
発熱を伴う胸痛の場合、感染症の有無を確認するために血液検査で炎症反応(CRPなど)を調べることが多いです。また、ウイルス感染後に胸痛を訴える場合は、心筋炎の可能性も考慮し、慎重に診察を進めます。
胸痛と吐き気・嘔吐がある場合、考えられる病気は?
胸痛に吐き気や嘔吐が伴う場合、消化器系の疾患だけでなく、心臓疾患の可能性も十分に考慮する必要があります。
- 心筋梗塞: 特に下壁梗塞の場合、吐き気や嘔吐、みぞおちの痛みを伴うことがあり、胃の症状と間違われやすいです。
- 胃食道逆流症・胃潰瘍: 消化器系の問題が胸痛として現れ、吐き気や嘔吐を伴うことがあります。
- 急性膵炎・胆嚢炎: これらの腹部臓器の炎症が、放散痛として胸痛や背部痛を引き起こし、吐き気や嘔吐を伴うことがあります。
日々の診療では、吐き気を伴う胸痛の患者さんが来院された場合、心電図検査を最優先で行い、心臓疾患の緊急性を評価します。特に心筋梗塞では、非典型的な症状として吐き気や胃の不快感を訴える方が多く、注意が必要です。コカイン使用による胸痛も、吐き気を伴うことがあると報告されています[2]。
その他の症状との組み合わせ
- 胸痛と動悸: 不整脈、パニック障害、甲状腺機能亢進症などが考えられます。
- 胸痛と冷や汗: 心筋梗塞や大動脈解離など、緊急性の高い心血管疾患のサインであることが多いです。
- 胸痛と咳: 肺炎、気管支炎、気胸、喘息などが考えられます。
複数の症状が重なる場合は、単独の症状よりも重篤な疾患の可能性が高まります。自己判断せずに、速やかに医療機関を受診することが肝要です。
まとめ
胸痛は、心臓や血管の重篤な疾患から、肺、食道、筋肉、精神的な要因まで、非常に多岐にわたる原因によって引き起こされます。特に、締め付けられるような激しい痛み、息切れ、冷や汗、吐き気を伴う場合は、心筋梗塞や大動脈解離などの緊急性の高い疾患である可能性があり、速やかに救急車を呼ぶか、緊急で医療機関を受診する必要があります。症状に応じて、循環器内科、呼吸器内科、消化器内科、心療内科などの専門科が考えられますが、まずは内科を受診し、医師の判断を仰ぐのが一般的です。正確な診断のためには、心電図、血液検査、X線検査、CT検査、心エコーなどの様々な検査が行われます。胸痛に他の症状が組み合わさることで、より具体的な原因が絞り込まれるため、ご自身の症状を正確に医師に伝えることが重要です。不安な症状がある場合は、決して自己判断せずに、専門医にご相談ください。
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- Christopher Bass, Richard Mayou. Chest pain.. BMJ (Clinical research ed.). 2002. PMID: 12228139. DOI: 10.1136/bmj.325.7364.588
- J L Zimmerman, R P Dellinger, P A Majid. Cocaine-associated chest pain.. Annals of emergency medicine. 1991. PMID: 2039098. DOI: 10.1016/s0196-0644(05)82377-7
- Bruna Gigante. To be or not to be admitted to the emergency department for chest pain? A costly dilemma.. European heart journal. 2023. PMID: 36918747. DOI: 10.1093/eurheartj/ehad116
- Abdulrahman Ahmad Alnaim, Hasna Wafi AlGarni, Hussain Adil Al Ghadeer et al.. Characteristics of chest pain among children presenting to the pediatric emergency department.. Journal of medicine and life. 2024. PMID: 38406783. DOI: 10.25122/jml-2023-0280

