- ✓ 糸リフトは、特殊な医療用糸を挿入し、たるみを引き上げ、コラーゲン生成を促進する施術です。
- ✓ PDO、PCL、PLAの3種類の糸が主に用いられ、それぞれ持続期間や柔軟性、コラーゲン生成効果に特徴があります。
- ✓ 糸の種類や本数、挿入方法の選択は、患者さんの肌の状態や希望、医師の経験に基づいて慎重に行われます。
糸リフトとはどのような施術ですか?

糸リフトは、加齢による顔のたるみやしわの改善を目指す低侵襲な美容医療施術の一つです。特殊な医療用の糸を皮膚の下に挿入し、たるんだ組織を物理的に引き上げることで、リフトアップ効果をもたらします。また、挿入された糸が真皮層を刺激し、コラーゲンやエラスチンの生成を促進することで、肌のハリや弾力性も向上させる効果が期待できます[3]。この施術は、メスを使わないためダウンタイムが比較的短く、自然な仕上がりが期待できることから、近年注目を集めています。
糸リフトに使用される糸には、皮膚組織を効果的に持ち上げるための「コグ(とげ)」や「バーブ」と呼ばれる突起が付いているものが多く、これらが皮下組織に引っかかることでリフトアップ効果を発揮します。挿入された糸は時間とともに体内で吸収されるため、半永久的な効果ではありませんが、コラーゲン生成促進効果により、糸が吸収された後も一定期間は肌の若返り効果が持続すると考えられています。日常診療では、「顔のたるみが気になるけれど、手術には抵抗がある」と相談される方が少なくありません。そのような患者さんにとって、糸リフトは有効な選択肢の一つとなり得ます。
- コグ(Cog)
- 糸リフトで使用される糸に付いている、組織をしっかりと掴んで引き上げるための小さな突起やとげのことです。このコグが皮下組織に引っかかることで、たるんだ皮膚を効果的に持ち上げ、リフトアップ効果を発揮します。
糸リフトで使用される主な糸の種類と特徴は何ですか?
糸リフトで使用される糸にはいくつかの種類があり、それぞれ異なる特性を持っています。主に用いられるのは、PDO(ポリジオキサノン)、PCL(ポリカプロラクトン)、PLA(ポリ乳酸)の3種類です。これらの糸は、生体適合性が高く、最終的には体内で安全に吸収される素材でできています[4]。糸の種類を選ぶ際には、持続期間、柔軟性、コラーゲン生成効果、そして患者さんの肌質やたるみの状態を考慮することが重要です。
PDO(ポリジオキサノン)糸の特徴
PDO(Polydioxanone)は、心臓外科手術の縫合糸としても使用される、生体吸収性の高い医療用素材です。糸リフトにおいては、最も広く普及している素材の一つと言えるでしょう。PDO糸の特徴は以下の通りです。
- 吸収期間と持続効果: 体内で約6〜8ヶ月かけてゆっくりと吸収されますが、コラーゲン生成効果により、リフトアップ効果は約1年程度持続するとされています[1]。
- コラーゲン生成: 挿入されたPDO糸は、周囲の組織に微細な刺激を与え、コラーゲンやエラスチンの生成を促進します。これにより、肌のハリや弾力性の改善が期待できます。
- 柔軟性: 比較的硬さがあるため、しっかりとたるみを引き上げる力に優れています。
- 適応部位: 顔全体のたるみ、特に頬やフェイスラインのリフトアップ、首のしわなどに用いられます。
実臨床では、PDO糸は初めて糸リフトを受ける患者さんや、比較的しっかりとしたリフトアップ効果を求める方に提案することが多いです。特に、中顔面のたるみ改善や、フェイスラインの引き締めにおいて効果を実感される方が多く見られます[2]。
PCL(ポリカプロラクトン)糸の特徴
PCL(Polycaprolactone)もまた、生体吸収性の医療用素材で、PDOよりも柔軟性が高く、吸収期間が長いのが特徴です。
- 吸収期間と持続効果: 体内で約1〜2年かけてゆっくりと吸収されます。そのため、PDOよりも長い持続期間が期待できます。
- コラーゲン生成: PDOと同様にコラーゲン生成を促進しますが、吸収期間が長いため、より長期間にわたるコラーゲン生成効果が期待できる可能性があります。
- 柔軟性: 非常に柔軟性が高く、挿入後の違和感が少ないのがメリットです。表情筋の動きに合わせて自然になじみやすいとされています。
- 適応部位: 自然な仕上がりを求める方、皮膚が薄い方、表情の動きが多い部位などに適しています。
日々の診療では、「より自然な仕上がりと、長持ちする効果が欲しい」と相談される患者さまも少なくありません。PCL糸は、その柔軟性と持続性から、そうしたニーズに応える選択肢となり得ます。
PLA(ポリ乳酸)糸の特徴
PLA(Poly-L-lactic Acid)も生体吸収性の医療用素材で、特に強力なコラーゲン生成促進作用を持つことで知られています。
- 吸収期間と持続効果: 体内で約1.5〜2年かけて吸収されます。コラーゲン生成が非常に強力なため、糸が吸収された後も効果が数年間持続する可能性があります。
- コラーゲン生成: 3種類の糸の中でも特に強力なコラーゲン生成能力を持つとされており、肌の根本的な若返り効果が期待できます。
- 柔軟性: PDOよりは柔軟ですが、PCLよりは硬さがあります。しっかりとしたリフトアップ効果とコラーゲン生成を両立したい場合に選択されます。
- 適応部位: 中程度から重度のたるみ、長期的な改善を希望する方に適しています。
臨床経験上、PLA糸は、たるみ改善だけでなく、肌質の根本的な改善を望む患者さんに特に有効であると感じています。治療開始から数ヶ月後には、リフトアップ効果に加え、肌のハリやツヤの向上を実感される方が多いです。
| 項目 | PDO(ポリジオキサノン) | PCL(ポリカプロラクトン) | PLA(ポリ乳酸) |
|---|---|---|---|
| 吸収期間 | 約6〜8ヶ月 | 約1〜2年 | 約1.5〜2年 |
| 持続効果 | 約1年 | 約1.5〜2年 | 数年間(コラーゲン生成による) |
| 柔軟性 | 比較的硬い | 非常に柔軟 | 中程度 |
| コラーゲン生成 | 中程度 | 中〜高程度 | 非常に強力 |
| 主な適応 | しっかりリフトアップしたい方、初めての方 | 自然な仕上がり、皮膚が薄い方、長持ちさせたい方 | 中〜重度のたるみ、長期的な肌質改善を求める方 |
糸リフトのメリットとデメリットは何ですか?

糸リフトは、多くの患者さんにとって魅力的な選択肢ですが、メリットとデメリットを理解しておくことが重要です。施術を検討する際には、これらの点を考慮し、自身の状態や希望に合っているかを見極める必要があります。
糸リフトのメリット
- 低侵襲性: メスを使わないため、外科手術に比べて体への負担が少なく、傷跡も目立ちにくいです。
- 短いダウンタイム: 施術後の腫れや内出血は数日から1週間程度で落ち着くことが多く、日常生活への復帰が比較的早いです。
- 自然な仕上がり: 顔全体のバランスを見ながら、たるみを自然に引き上げることができます。
- コラーゲン生成効果: 糸が吸収される過程でコラーゲン生成が促進され、肌のハリや弾力性が向上し、若返り効果が期待できます。
- 即効性: 施術直後からリフトアップ効果を実感できることが多いです。
外来診療では、「翌日から仕事に行けるか」といったダウンタイムに関する質問を多く受けます。糸リフトは、適切なケアを行えば比較的短い期間で通常の生活に戻れるため、忙しい方にも選ばれやすい施術です。
糸リフトのデメリットと注意点
- 持続期間の限界: 糸は吸収されるため、効果は永続的ではありません。一般的に1〜2年程度で再施術を検討する必要があります。
- 合併症のリスク: 施術に伴い、腫れ、内出血、痛み、感染、糸の露出、ひきつれ、神経損傷などのリスクが考えられます。
- 効果の個人差: たるみの程度や肌質、使用する糸の種類や本数、医師の技術によって効果には個人差があります。
- 費用: 比較的高額な施術となることがあります。
糸リフトは医療行為であり、合併症のリスクをゼロにすることはできません。施術を受ける際は、経験豊富な医師による十分なカウンセリングを受け、リスクとメリットを十分に理解した上で判断することが重要です。
実際の診療では、術後のひきつれや左右差を心配される患者さんもいらっしゃいます。これらは医師の技術やデザインによって最小限に抑えることが可能ですが、完全にゼロにするのは難しい場合もあります。そのため、術後のフォローアップで細かく状態を確認し、必要に応じて修正を行うこともあります。
どのような人が糸リフトに適していますか?
糸リフトは、特定のたるみや肌質の悩みを抱える方に特に適した施術です。しかし、すべての人に最適なわけではなく、適応を見極めることが重要です。
糸リフトの主な適応
- 顔の軽度〜中程度のたるみ: 頬のたるみ、ほうれい線、マリオネットライン、フェイスラインのぼやけなどが気になる方。
- 肌のハリや弾力性の低下: 肌のたるみだけでなく、全体的な肌の若返りを希望する方。
- 外科手術に抵抗がある方: メスを使う手術に不安がある、またはダウンタイムを短くしたい方。
- 自然な仕上がりを希望する方: 極端な変化ではなく、自然なリフトアップ効果を求める方。
日常診療では、「まだ本格的な手術は考えていないけれど、たるみを何とかしたい」という初期のたるみ症状を訴える患者さんが、糸リフトの適応となるケースをよく経験します。また、他の施術と組み合わせることで、より高い相乗効果が得られることもあります[2]。
糸リフトが適さない可能性のあるケース
- 重度のたるみ: 皮膚のたるみが非常に重度の場合、糸リフトだけでは十分な効果が得られないことがあります。その場合は、外科的なリフトアップ手術の方が適している可能性があります。
- 極端に皮膚が薄い方: 糸が透けて見えたり、触れたときに違和感を感じやすかったりする場合があります。
- 体内に異物を入れることに抵抗がある方: 医療用の糸とはいえ、体内に挿入することに心理的な抵抗がある場合は、別の治療法を検討すべきです。
- 特定の疾患をお持ちの方: 自己免疫疾患、重度の糖尿病、出血性疾患、ケロイド体質、妊娠中・授乳中の方などは、施術を受けられない場合があります。
診察の場では、「以前に他の施術で満足できなかった」と質問される患者さんも多いです。その場合、肌の状態や過去の施術歴を詳しく伺い、糸リフトが本当に最適な選択肢であるかを慎重に判断します。
糸リフトの施術の流れと術後の経過は?

糸リフトの施術は、一般的に以下のような流れで進められます。術後の経過や注意点も理解しておくことで、安心して施術に臨むことができます。
施術の流れ
- カウンセリング・診察: 医師が患者さんのたるみの状態、肌質、希望などを詳しくヒアリングし、最適な糸の種類、本数、挿入部位などを決定します。この際、リスクやダウンタイムについても十分に説明します。
- デザイン: 施術部位にマーキングを行い、糸の挿入位置や引き上げ方向をデザインします。
- 麻酔: 局所麻酔を施し、施術中の痛みを軽減します。必要に応じて、笑気麻酔や静脈内鎮静法を併用することもあります。
- 糸の挿入: 特殊なカニューレ(針)を用いて、デザインした位置から糸を皮下組織に挿入します。糸のコグが組織に引っかかるように調整しながら、たるみを引き上げます。
- 確認・調整: 左右のバランスやリフトアップ効果を確認し、必要に応じて微調整を行います。
- 施術完了: 挿入部位を消毒し、保護テープなどを貼って終了です。
臨床現場では、カウンセリング時に患者さんの顔の動きや表情の癖を細かく観察し、自然な仕上がりになるよう糸の挿入方向や深さを調整することが重要なポイントになります。患者さんの「こうなりたい」というイメージと、医学的に可能な範囲での最適な結果をすり合わせる作業が不可欠です。
術後の経過と注意点
- ダウンタイム: 施術後、数日間は腫れや内出血、軽い痛みが続くことがあります。個人差はありますが、通常1週間程度で落ち着きます。
- 違和感: 施術直後から数週間は、顔に軽いひきつれ感や違和感を覚えることがあります。これは糸が組織になじむ過程で生じるもので、徐々に解消されます。
- 日常生活の制限: 施術後1ヶ月程度は、顔のマッサージや強い圧迫、激しい運動、歯科治療などは避けるよう指導されることが多いです。
- メイク・洗顔: 施術部位を避ければ、翌日からメイクや洗顔が可能な場合が多いですが、強く擦らないように注意が必要です。
実際の診療では、術後のフォローアップで、患者さんが違和感なく過ごせているか、痛みや腫れの程度、効果の実感などを確認します。特に、糸の定着を妨げないよう、術後の過ごし方について具体的なアドバイスをすることが、良好な結果に繋がると考えています。
糸リフトの効果を長持ちさせるには?
糸リフトの効果を最大限に引き出し、できるだけ長く持続させるためには、いくつかのポイントがあります。施術後のケアや生活習慣が大きく影響するため、意識して取り組むことが大切です。
効果持続のためのポイント
- 術後の適切なケア: 施術後1ヶ月程度は、顔への強い刺激(マッサージ、エステ、歯科治療など)を避けることが重要です。糸が定着する前に強い力が加わると、糸がずれたり、効果が半減したりする可能性があります。
- 紫外線対策: 紫外線は肌の老化を促進し、コラーゲンやエラスチンを破壊する原因となります。日焼け止めや帽子、日傘などを活用し、日常的に紫外線対策を行いましょう。
- 保湿ケア: 肌の乾燥は、ハリや弾力の低下につながります。セラミドやヒアルロン酸などの保湿成分が配合されたスキンケア製品で、しっかりと保湿を行いましょう。
- バランスの取れた食事と生活習慣: コラーゲン生成に必要な栄養素(タンパク質、ビタミンCなど)を積極的に摂取し、十分な睡眠と適度な運動を心がけることで、肌の健康を維持できます。喫煙は肌の老化を早めるため、避けるべきです。
- 定期的なメンテナンス: 糸リフトの効果は永続的ではないため、効果の減退を感じ始めたら、定期的に再施術を検討することで、若々しい状態を維持しやすくなります。ヒアルロン酸注入やHIFU(高密度焦点式超音波)などの他の施術と組み合わせることで、より効果的なエイジングケアが可能です。
臨床経験上、術後の過ごし方を丁寧に守ってくださる患者さんほど、効果の持続期間が長い傾向にあります。特に、術後1ヶ月間の安静は非常に重要であり、この期間をいかに過ごすかが結果を左右すると言っても過言ではありません。
まとめ
糸リフトは、たるみの改善と肌のハリ・弾力アップを同時に目指せる低侵襲な美容医療施術です。PDO、PCL、PLAといった異なる特性を持つ医療用糸が使用され、それぞれ吸収期間、柔軟性、コラーゲン生成効果に違いがあります。PDO糸はしっかりとしたリフトアップ効果と中程度の持続性、PCL糸は高い柔軟性と長い持続期間、PLA糸は強力なコラーゲン生成効果と長期的な肌質改善が期待できます。施術のメリットはダウンタイムの短さや自然な仕上がり、コラーゲン生成による肌質改善ですが、デメリットとして効果の持続期間に限りがあることや、合併症のリスクも存在します。個々の患者さんのたるみの状態、肌質、ライフスタイル、そして希望に応じて、最適な糸の種類や施術プランを医師と十分に相談し、選択することが重要です。術後の適切なケアや生活習慣の改善も、効果を長持ちさせるために不可欠となります。
よくある質問(FAQ)
- Mehmet Unal, Gizem Kaya İslamoğlu, Gülbahar Ürün Unal et al.. Experiences of barbed polydioxanone (PDO) cog thread for facial rejuvenation and our technique to prevent thread migration.. The Journal of dermatological treatment. 2021. PMID: 31267809. DOI: 10.1080/09546634.2019.1640347
- Jun Ho Park, Ji Won Jeong, Ji-Ung Park. Advanced Facial Rejuvenation: Synergistic Effects of Lower Blepharoplasty and Ultrasound Guided Mid-Face Lift Using Polydioxanone (PDO) Threads.. Aesthetic plastic surgery. 2024. PMID: 38519570. DOI: 10.1007/s00266-024-03975-6
- Gi-Woong Hong, Soo Yeon Park, Kyu-Ho Yi. Revolutionizing thread lifting: Evolution and techniques in facial rejuvenation.. Journal of cosmetic dermatology. 2024. PMID: 38679891. DOI: 10.1111/jocd.16326
- Gi-Woong Hong, Soo-Bin Kim, Soo Yeon Park et al.. Thread Lifting Materials: A Review of Its Difference in Terms of Technical and Mechanical Perspective.. Clinical, cosmetic and investigational dermatology. 2024. PMID: 38737945. DOI: 10.2147/CCID.S457352

