- ✓ 糸リフトは、たるみの改善やフェイスラインの引き上げに効果が期待できる低侵襲な施術です。
- ✓ 効果の持続期間は使用する糸の種類や個人の状態により異なりますが、一般的に1〜2年程度が目安です。
- ✓ 施術回数は、効果の持続や理想の状態を維持するために定期的なメンテナンスが推奨されます。
糸リフトとは?その基本的なメカニズム

糸リフトは、顔や首のたるみを改善し、若々しい印象を取り戻すことを目的とした美容医療の施術の一つです。外科手術によるフェイスリフトよりも侵襲が少なく、ダウンタイムが短いことから、近年注目を集めています。
- 糸リフト(スレッドリフト)
- 皮膚の下に医療用の特殊な糸を挿入し、たるんだ皮膚組織を引き上げて固定することで、リフトアップ効果や肌のハリ改善を目指す低侵襲な美容医療施術です。
この施術では、主に生体内で吸収される医療用の特殊な糸が使用されます。糸には、皮膚組織に引っかかるようにコグと呼ばれる小さな突起や、円錐状の構造がついており、これらが皮下組織にしっかりと固定されることで、たるんだ皮膚を物理的に引き上げます[1]。挿入された糸は、周囲の組織に刺激を与え、コラーゲンやエラスチンの生成を促進する効果も期待できます。これにより、肌の弾力性やハリが向上し、長期的な若返り効果につながると考えられています。
糸リフトのメカニズムは、大きく分けて以下の2つの作用があります。
- 物理的なリフトアップ効果: 糸のコグや突起が皮下組織に引っかかり、たるんだ皮膚や脂肪組織を物理的に引き上げ、固定します。これにより、施術直後からフェイスラインの改善やたるみの軽減が実感できます。
- コラーゲン生成促進効果: 挿入された糸は、異物反応として周囲の組織に微細な炎症を引き起こし、線維芽細胞を活性化させます。これにより、肌の弾力やハリを保つコラーゲンやエラスチンの生成が促進され、肌質の改善や引き締め効果が期待できます。糸が吸収された後も、このコラーゲン生成促進効果は一定期間持続するとされています[2]。
糸リフトで期待できる効果とは?
糸リフトは、顔の様々な悩みに対応できる多角的な効果が期待できる施術です。主な効果としては、たるみの改善、フェイスラインの引き締め、肌質の改善などが挙げられます。
たるみの改善とリフトアップ
最も主要な効果は、顔や首のたるみを引き上げ、改善することです。特に、加齢によって生じる頬のたるみ、ほうれい線、マリオネットライン、フェイスラインの緩みなどに効果を発揮します。糸の力で物理的に組織が持ち上げられるため、施術直後から効果を実感しやすいのが特徴です。実臨床では、「顔全体がすっきりした」「ほうれい線が薄くなった」と喜ばれる患者さんが多く見られます。
フェイスラインの引き締め
顎下のたるみや二重あごの改善にも効果的です。糸を挿入することで、フェイスラインがシャープになり、小顔効果も期待できます。日常診療では、「ブルドッグ顔が気になっていたが、フェイスラインが引き締まって若々しくなった」と相談される方が少なくありません。
肌質の改善とハリ・ツヤの向上
糸が皮下組織に挿入されることで、コラーゲンやエラスチンの生成が促進されます。これにより、肌の弾力性が回復し、ハリやツヤが向上します。小じわの改善にも寄与することがあります。この効果は、糸が吸収されていく過程で徐々に現れるため、長期的な肌の若返りにつながります[2]。筆者の臨床経験では、治療開始2〜3ヶ月ほどで肌のキメが整い、化粧ノリが良くなったと実感される方が多いです。
左右差の改善
顔面麻痺による左右差の改善にも、糸リフトが有効である可能性が示唆されています[4]。これは、片側のたるみを引き上げることで、顔全体のバランスを整える効果が期待できるためです。
糸リフトの効果は、個人の皮膚の状態、たるみの程度、使用する糸の種類や本数、医師の技術によって異なります。また、効果の感じ方には個人差があります。
糸リフトの効果持続期間はどのくらい?

糸リフトの効果持続期間は、使用する糸の種類、挿入部位、個人の体質や生活習慣など、様々な要因によって異なります。一般的には、1年から2年程度が目安とされていますが、これはあくまで平均的な期間であり、個人差が大きいことを理解しておく必要があります。
糸の種類による持続期間の違い
現在、糸リフトで使用される糸は、その素材によって持続期間が異なります。主に吸収性の糸が用いられますが、代表的な素材は以下の通りです。
- PDO(ポリジオキサノン): 約6〜12ヶ月で体内に吸収される素材です。吸収される過程でコラーゲン生成を促進する効果が期待できます。
- PLLA(ポリ乳酸): 約12〜18ヶ月で吸収される素材で、PDOよりも持続期間が長い傾向にあります。コラーゲン生成促進効果も高いとされています。
- PCL(ポリカプロラクトン): 約18〜24ヶ月と比較的ゆっくりと吸収される素材です。柔軟性があり、自然な仕上がりが期待できます。
これらの糸は、それぞれ特性が異なり、患者さんの希望やたるみの状態に合わせて選択されます。例えば、より長期的な効果を求める場合にはPCLやPLLAが、手軽に試したい場合にはPDOが選ばれることが多いです。臨床現場では、患者さんのライフスタイルや予算、期待する効果を詳しくヒアリングし、最適な糸の種類と本数を提案するようにしています。
効果の減衰とメンテナンス
糸リフトの効果は、糸が体内に吸収されるにつれて徐々に減衰していきます。しかし、糸が吸収された後も、糸の刺激によって生成されたコラーゲンが肌のハリを保つため、施術前の状態に完全に戻るわけではありません。効果を維持するためには、定期的なメンテナンスや追加の施術が推奨されます。
外来診療では、「いつ頃追加の施術を検討すればいいですか?」と質問される患者さんも多いです。一般的には、効果が薄れてきたと感じ始めた頃、または前回の施術から1年〜1年半を目安に、再度カウンセリングを受けることをお勧めしています。これにより、常に良好な状態を維持しやすくなります。
| 糸の種類 | 主な特性 | 吸収期間の目安 |
|---|---|---|
| PDO(ポリジオキサノン) | 標準的な強度、コラーゲン生成促進 | 6〜12ヶ月 |
| PLLA(ポリ乳酸) | 高いコラーゲン生成促進効果、強度 | 12〜18ヶ月 |
| PCL(ポリカプロラクトン) | 柔軟性、自然な仕上がり、長期間持続 | 18〜24ヶ月 |
糸リフトの施術回数は?最適なタイミングと頻度
糸リフトは一度の施術で効果を実感できますが、その効果を維持し、さらに理想的な状態に近づけるためには、適切な施術回数とタイミングが重要になります。多くの場合、単回で完結するのではなく、定期的なメンテナンスが推奨されます。
初回施術と追加施術の考え方
初回施術では、現在のたるみの状態や患者さんの希望に応じて、最適な本数と種類の糸を挿入します。これにより、たるみの改善やフェイスラインのリフトアップ効果を実感できます。しかし、時間の経過とともに糸は吸収され、効果は徐々に薄れていくため、多くの方が追加施術を検討されます。
追加施術のタイミングは、主に以下の2つの考え方があります。
- 効果が薄れてきたと感じた時: 施術後1年〜1年半程度で、効果の減衰を感じ始める方が多いです。このタイミングで追加施術を行うことで、効果の持続を促し、たるみの進行を予防できます。
- 予防的なメンテナンスとして: 効果が完全に失われる前に、定期的に少量の糸を追加することで、常に若々しい状態を維持する方法です。例えば、1年に1回、数本の糸を追加するといったアプローチです。
臨床経験上、一度に多くの糸を挿入するよりも、定期的に適切な本数を追加していく方が、自然な仕上がりを維持しやすく、患者さんの満足度も高い傾向にあります。日々の診療では、「効果が落ちてきたらまたお願いしたい」という患者さまも少なくありません。その際には、前回の施術からの変化や、現在の肌の状態を丁寧に診察し、最適なプランを提案するようにしています。
最適な施術頻度とは?
最適な施術頻度は、個人の年齢、肌質、たるみの進行度、使用する糸の種類、そして目指すゴールによって大きく異なります。一般的には、1年から2年に一度のペースでメンテナンスを行うことが推奨されます[3]。
- 軽度のたるみの場合: 1年半〜2年に一度の施術で十分な効果が維持できることがあります。
- 中等度以上のたるみや、より高い効果を求める場合: 1年に一度、あるいは半年に一度といった短い間隔で、少量の糸を追加する方が良い結果につながることがあります。
重要なのは、画一的な頻度ではなく、個々の状態に合わせたカスタマイズされた治療計画を立てることです。診察の場では、「もう少し引き上げたいけど、不自然になるのは嫌だ」といった具体的なご要望を伺い、患者さんと一緒に最適なプランを検討します。施術後のフォローアップでは、効果の持続状況や副作用の有無、患者さんの満足度などを確認し、次回の施術時期や本数について相談します。
糸リフトのメリット・デメリットは?

糸リフトは多くの魅力的な効果を持つ一方で、いくつかのデメリットや注意点も存在します。施術を検討する際には、これらの両面を理解し、ご自身の状況に合っているか慎重に判断することが重要です。
メリット
- 低侵襲でダウンタイムが短い: 外科的なフェイスリフトと比較して切開が不要なため、体への負担が少なく、術後の腫れや内出血も比較的軽度で済みます。日常生活への復帰が早いのが大きな利点です。
- 即効性がある: 糸を挿入して引き上げるため、施術直後からリフトアップ効果を実感しやすいです。
- 自然な仕上がりが期待できる: 糸の挿入方向や本数を調整することで、個々の顔立ちに合わせた自然なリフトアップが可能です。
- 肌質改善効果: 糸の刺激によりコラーゲン生成が促進され、肌のハリや弾力性向上が期待できます。
- 修正が可能: 万が一、仕上がりに不満がある場合やトラブルが発生した場合でも、糸を抜去したり、追加で調整したりすることが比較的容易です。
デメリット・注意点
- 効果は永久ではない: 糸は体内に吸収されるため、効果は永続的ではありません。持続的な効果を求める場合は、定期的なメンテナンスが必要です。
- 費用がかかる: 糸の種類や本数によって費用は異なりますが、複数回の施術を考慮すると、それなりの費用がかかる可能性があります。
- 合併症のリスク: 施術に伴い、腫れ、内出血、痛み、感染、引きつれ感、左右差、糸の露出、神経損傷などの合併症のリスクがあります。これらのリスクは稀ですが、ゼロではありません。
- 重度のたるみには限界がある: 非常に重度のたるみの場合、糸リフトだけでは十分な効果が得られないことがあります。その場合は、外科的フェイスリフトなど、他の治療法が適している可能性もあります。
実際の診療では、患者さんから「施術後に痛みはありますか?」「内出血はどれくらいで引きますか?」といった質問をよく受けます。一般的に、施術後数日間は鈍い痛みや圧痛を感じることがありますが、多くの場合、市販の鎮痛剤でコントロール可能です。内出血は個人差がありますが、1〜2週間程度で引くことが多いです。これらのリスクやダウンタイムについて、カウンセリング時に詳しく説明し、患者さんが納得した上で施術に進むようにしています。
糸リフト施術の流れと術後の注意点
糸リフトの施術を受けるにあたり、どのような流れで進むのか、また術後にどのような点に注意すべきかを知っておくことは、安心して施術を受ける上で非常に重要です。
施術の流れ
- カウンセリング・診察: まず、医師が患者さんの顔のたるみの状態、肌質、骨格などを詳しく診察します。患者さんの希望や不安を丁寧にヒアリングし、糸の種類、本数、挿入部位、期待できる効果、リスク、費用などについて詳しく説明します。この段階で、患者さんの疑問を解消し、最適な治療計画を立てます。
- デザイン: 施術前に、リフトアップしたい部位や糸の挿入経路を顔にマーキングし、デザインを行います。これは、左右差なく自然な仕上がりを実現するために非常に重要な工程です。
- 麻酔: 施術部位に局所麻酔を行います。これにより、施術中の痛みを軽減します。希望に応じて、笑気麻酔や静脈内鎮静法を併用することもあります。
- 糸の挿入: 極細の針やカニューレ(先端が丸い針)を用いて、デザインした経路に沿って皮下に糸を挿入します。糸のコグや突起が組織に引っかかるように丁寧に引き上げ、固定します。この際、皮膚の表面に針穴が数カ所開くだけで、大きな切開は行いません。
- 術後確認: 糸の挿入後、鏡で仕上がりを確認し、必要に応じて微調整を行います。
実際の診療では、カウンセリングに最も時間をかけます。患者さんの「こうなりたい」という具体的なイメージと、医学的に可能な範囲をすり合わせ、最も満足度の高い結果を導き出すことが重要だと考えています。
術後の注意点とダウンタイム
糸リフトは比較的ダウンタイムが短い施術ですが、術後の過ごし方によって仕上がりや回復期間が変わるため、以下の点に注意が必要です。
- 冷却: 施術直後から数日間は、施術部位を優しく冷やすことで、腫れや内出血を軽減できます。
- 安静: 施術後数日間は、激しい運動や飲酒、長時間の入浴は避け、安静に過ごしましょう。
- 洗顔・メイク: 施術当日は、洗顔やメイクを控えるよう指示されることが多いです。翌日以降は、優しく洗顔し、メイクも可能ですが、施術部位を強く擦らないように注意してください。
- 食事: 施術後数日間は、硬い食べ物や大きく口を開ける動作は避け、柔らかいものを摂取するようにしましょう。
- マッサージ・エステ: 施術後1ヶ月程度は、顔のマッサージやエステ、歯科治療など、顔に強い圧力がかかる行為は避けてください。糸がずれたり、外れたりする可能性があります。
- 就寝時の姿勢: 施術後数日間は、仰向けで寝るようにし、顔に負担がかからないように注意しましょう。
臨床現場では、特に術後のケアが重要だと考えています。患者さんには、術後の注意点をまとめた書面をお渡しするだけでなく、口頭でも丁寧に説明し、不明な点があればいつでも連絡してもらうよう伝えています。術後数日〜1週間後に経過観察を行い、腫れや内出血の状態、痛みの有無、仕上がりの確認などを実施します。
まとめ
糸リフトは、顔や首のたるみを改善し、フェイスラインを引き締める効果が期待できる低侵襲な美容医療施術です。物理的なリフトアップ効果に加え、コラーゲン生成促進による肌質改善効果も期待できます。効果の持続期間は使用する糸の種類や個人の状態によって異なりますが、一般的に1〜2年程度が目安とされています。効果を維持し、理想的な状態を保つためには、1年から2年に一度程度の定期的なメンテナンスや追加施術が推奨されます。施術にはメリットとデメリットがあり、腫れや内出血などのダウンタイムや合併症のリスクも理解した上で、信頼できる医師と十分に相談し、ご自身の状態に合った治療計画を立てることが重要です。
よくある質問(FAQ)
- Gi-Woong Hong, Soo Yeon Park, Kyu-Ho Yi. Revolutionizing thread lifting: Evolution and techniques in facial rejuvenation.. Journal of cosmetic dermatology. 2024. PMID: 38679891. DOI: 10.1111/jocd.16326
- Gi-Woong Hong, Soo-Bin Kim, Soo Yeon Park et al.. Thread Lifting Materials: A Review of Its Difference in Terms of Technical and Mechanical Perspective.. Clinical, cosmetic and investigational dermatology. 2024. PMID: 38737945. DOI: 10.2147/CCID.S457352
- Haydar Aslan Gülbitti, Britt Colebunders, Ali Pirayesh et al.. Thread-Lift Sutures: Still in the Lift? A Systematic Review of the Literature.. Plastic and reconstructive surgery. 2018. PMID: 29481392. DOI: 10.1097/PRS.0000000000004101
- Anuj Bhatnagar, Roma Rai, Sanjay Kumar et al.. Safety and Efficacy of Restoring Facial Symmetry Using Polydioxanone Thread Face Lift Technique in Patients with Facial Palsy.. The Journal of clinical and aesthetic dermatology. 2022. PMID: 35309880

