機能性ディスペプシアの薬・治療と、改善しないとき
「もっと強い薬」へ進む前に、症状の型、飲み方、診断、治療の目標を確かめます。
FDの治療は、症状や背景に合わせ、酸分泌抑制薬、アコチアミド、六君子湯などと生活調整を選びます。薬が効かないときは自己増量せず、服用方法、改善した症状と残る症状、副作用、診断の根拠を見直します。必要に応じて別の治療や心理的支援を相談しますが、根拠の強さ、国内適応、保険適用は選択肢ごとに異なります。
新しい警告症状があれば、薬の効き目を待たない
すぐに救急相談・119番
突然の強い腹痛や胸の圧迫感、冷汗・息苦しさ、吐血、黒い便にふらつきを伴う場合。意識が遠のく、動けないほどつらい場合は119番へ。
当日〜早めに対面受診
黒い便、飲み込みにくさ、繰り返す嘔吐、水分が取れない、意図しない体重減少、貧血、症状の進行。急速な悪化では救急受診を検討します。
予約して消化器内科へ
胃もたれやみぞおちの痛みを繰り返す、食事・仕事・睡眠に支障がある、市販薬が繰り返し必要な場合。
FDで治療中でも、出血、進行する体重減少、つかえ、水分が取れない嘔吐は再評価が必要です。薬の開始後に強い発疹や息苦しさなどが出た場合も、速やかに医療機関へ相談してください。[1][2]
一番困る症状と、試す期間・再診の目安を決める
FDの症状は食後のもたれや早い満腹感、みぞおちの痛みなどが重なります。病型だけで一律に薬を選ぶのではなく、最も支障の大きい症状、併存する逆流症状、服用中の薬、栄養状態を整理します。治療の目標を「全く気にならない」だけに固定せず、食事量や日中の活動も評価します。[1][2]

日本のガイドラインでは、酸分泌抑制薬、アコチアミド、六君子湯が初期治療の選択肢です。ただし薬によって狙う症状、承認効能、使えない条件が違います。開始時に評価の時期と連絡が必要な変化を決め、反応がないまま漫然と種類を増やさないようにします。[1]
有効性の根拠と、自分の症状への適応を分けて見る
- 酸分泌抑制薬
- PPIなどは胃酸を抑える選択肢です。FDでの効果は平均として大きくなく、製剤ごとの国内適応を確認します。下痢、便秘、発疹などの変化も相談します。
- アコチアミド
- 国内ではFDにおける食後膨満感、上腹部膨満感、早期満腹感が効能です。痛みだけを理由に同じように使う薬ではありません。下痢、便秘、吐き気などにも注意します。
- 六君子湯
- 国内ガイドラインの選択肢ですが、漢方だから副作用がないわけではありません。体質、併用薬、生薬成分の重複を確認して処方します。
- 次の段階の薬
- 神経調整を目的とする薬などが検討される場合があります。眠気、便秘などの副作用、国内の適応外使用の可能性を含め、専門医と利益・負担を比較します。
PPIのCochrane系統的レビューでは、プラセボより全体症状の改善が示されましたが、効果は限定的でした。アコチアミドの4週間の比較試験は食事関連症状を対象にしています。異なる対象や評価方法の数値を並べて、どちらが全員に最も効くと断定することはできません。[4][5][7]
P-CABやプロバイオティクスなどの新しい選択肢について、2026年のアジア合意文書は研究の範囲・ばらつきによる限界を指摘しています。胃酸をより強く抑える薬ならFDにも必ず優れる、という理解は避けてください。[3]
食事・栄養・心理的支援は、薬と組み合わせて考える
食べられる量を確保しながら、食事量や食べる速さ、本人に再現する悪化要因を調整します。栄養不足や体重減少があれば、禁止する食品を増やすより医師や管理栄養士に相談します。一般的な生活調整でも、仕事や家庭の事情に合わせた具体化が必要です。[1][2]
認知行動療法などの心理的な支援は、不安への対応だけでなく、胃腸症状との付き合い方を助ける治療として検討されます。症状が心の問題だけという意味ではありません。系統的レビューでは改善が示唆されましたが、介入内容や研究の質に違いがあり、全員に同じ効果を保証するものではありません。[6]
心理的支援の実施施設、費用、保険適用、通院頻度は方法で異なります。薬の代わりに必ず受けるものではなく、本人の希望と利用できる支援に合わせて組み立てます。[2]
飲み方・残る症状・副作用・診断の順に見直す
- 服用方法と継続状況
実際に飲んだ薬名・時刻・期間、飲めなかった理由を確認します。責めるためではなく、評価条件をそろえるためです。
- 何が変わり、何が残るか
痛みは減ったが食事量は戻らないなど、症状を分けて評価します。食べられる量や体重も共有します。
- 薬による負担
下痢、便秘、眠気、発疹などを伝えます。薬が原因と思っても、変更方法は処方医へ相談します。
- 診断と併存症
警告症状、過去の検査、GERD、IBS、ピロリ菌、栄養状態などを見直し、必要な再検査や紹介を検討します。
薬を追加する前に治療が有効でなかった理由を整理します。漫然と同じ薬を続けることも、短期間で次々と変えることも、効果の判断を難しくします。評価時期は薬と病状で異なるため、最初に決めた再診計画を基準にしてください。[1][2]
消化器内科の再診では「効きませんでした」という訴えを、痛み、食後の重さ、食事量、副作用に分けて聞きます。薬の袋やお薬手帳を見ながら実際の服用状況を確認し、追加処方より先に、何の症状にどのような変化があったかを整理します。
海外での推奨や市販品の宣伝と、国内適応を混同しない
FDが保険診療の病名であることと、紹介される薬・検査すべてがFDに保険適用されることは別です。PPI、抗うつ薬などをFDの症状に用いる場合は、処方する製剤と病状に応じて適応を確認します。適応外使用なら、目的、根拠、リスク、標準的な代替、費用を説明してもらいましょう。[1][7]
妊娠中・授乳中、腎臓や肝臓の病気がある、薬のアレルギー歴がある場合は、開始前に伝えてください。市販の胃薬や漢方・サプリメントを重ねると、成分が重複することがあります。症状が安定した場合の減量・中止も含め、薬を続ける理由を定期的に確認します。
よくある質問
飲み忘れた分をまとめて飲んでもよいですか?
まとめ飲みはせず、薬ごとの説明書や薬剤師の指示を確認してください。飲み忘れが続く場合は、生活に合う服用方法を相談します。
薬局の胃薬を追加してもよいですか?
追加前に処方薬と成分の重複を医師・薬剤師へ確認してください。市販薬が繰り返し必要な状態も再診で伝えます。
別の病気の薬も飲んでいる場合はどうしますか?
お薬手帳と市販薬・サプリメントの一覧を共有します。必要な薬を自己中止せず、処方目的と胃腸症状への影響を一緒に確認します。
紹介状をお願いするときは何を伝えればよいですか?
現在困る症状、試した薬と期間、効果と副作用、過去の検査を整理し、診断の再確認、栄養支援など相談したい目的を伝えてください。
参考文献
- Evidence-based clinical practice guidelines for functional dyspepsia 2021. Journal of gastroenterology. 2022. PMID: 35061057. 日本語版:機能性ディスペプシア診療ガイドライン2021
- British Society of Gastroenterology guidelines on the management of functional dyspepsia. Gut. 2022. PMID: 35798375.
- Second Asian Consensus Report on Functional Dyspepsia (2025): Updated Recommendations. Journal of gastroenterology and hepatology. 2026. PMID: 41656163.
- Proton pump inhibitors for functional dyspepsia. The Cochrane database of systematic reviews. 2017. PMID: 29161458.
- A placebo-controlled trial of acotiamide for meal-related symptoms of functional dyspepsia. Gut. 2012. PMID: 22157329.
- The Effects of Psychological Interventions on Symptoms and Psychology of Functional Dyspepsia: A Systematic Review and Meta-Analysis. Frontiers in psychology. 2022. PMID: 35465581.
- PMDA.アコファイド錠100mg(アコチアミド)電子添文・医薬品情報.2026年9月5日確認.
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