ADMのレーザー治療
回数・経過・副作用
機器名だけで決めず、診断、波長・設定、照射後の反応を確認し、複数回の治療を一回ずつ評価します。
ADMの治療では、メラニンを標的とするQスイッチレーザーやピコ秒レーザーが中心です。日本の美容医療診療指針は、治療を希望するADMにレーザー治療を推奨しています。一方、何回で終わるか、どの波長・機種が最良かを一律に決めることはできません。2026年の系統的レビューでも、Qスイッチとピコ秒レーザーの明確な優劣は示されず、根拠の確実性は非常に低いと評価されています。治療前に肝斑などの混在を確認し、照射後のPIH・色素脱失・赤みを見ながら次回を調整します。
ADMでは色素レーザーが中心になる
ADMは真皮のメラノサイトに関係するため、美白化粧品やピーリングだけで病変自体を除くことは期待しにくく、色素を標的とする短パルスレーザーが中心です。日本皮膚科学会などの指針は、治療を希望する患者へのレーザー治療を強く推奨しています。[1]

治療をしない選択も可能です。診断が不確実な場合や、炎症・日焼けがある場合、ダウンタイムを確保できない場合は、照射を急がず時期を調整します。
Qスイッチとピコ秒レーザーは機種名だけで比較しない
2026年のADM特異的な系統的レビュー・探索的メタ解析は、40研究・50治療群をまとめましたが、多くは単群症例集積でした。Qスイッチとピコ秒レーザーの75%以上改善率に有意差はなく、機種間の同等性を証明したわけでもなく、エビデンス確実性は非常に低いと評価されています。[2]
| 比較軸 | Qスイッチレーザー | ピコ秒レーザー | 患者さんが確認すること |
|---|---|---|---|
| パルス幅 | ナノ秒単位 | ピコ秒単位 | 機種名だけでなく波長・設定 |
| 研究 | ADMの報告が蓄積 | 比較試験・症例集積が増えている | ADM単独か、別疾患を含むか |
| 回数 | 複数回が一般的 | 複数回が一般的 | 固定回数の保証ではなく評価方法 |
| 副作用 | 赤み、腫れ、PIH、色素脱失、瘢痕など | 同様の色調変化・炎症反応があり得る | 起きた時の連絡先と対応 |
| 優劣 | 波長・設定・病変で異なる | 一律に優れるとは断定できない | 費用を含む総合判断 |
2024年の小規模な半顔比較RCTでは、730nmと1064nmのピコ秒レーザーが比較されましたが、パイロット試験であり、全ての機種や設定へ一般化できません。[3]1064nm QスイッチNd:YAGレーザーの後ろ向き研究や、波長を組み合わせた小規模前向き研究もありますが、患者背景と照射条件が異なるため、単純な順位づけには使えません。[4][8]
治療回数と間隔は皮膚反応を見て調整する
複数回の治療が必要になることが多いものの、回数と間隔は病変の濃さ・範囲・深さ、波長・設定、照射後反応、肝斑の混在で異なります。2026年のメタ解析では治療回数と改善の関連が探索的に示されましたが、非ランダム化・単群研究を多く含むため、「回数を増やせば必ず改善する」とは解釈できません。[2]
ADMの診断、混在病変、日焼け・炎症、既往、薬、治療目標を確認します。
必要に応じて小範囲の反応を確認し、眼を保護して照射します。
赤み、腫れ、熱感、痛み、皮膚表面の変化を観察します。
一時的な濃色化、PIH、色素脱失、肝斑の変化を同条件の写真で比較します。
皮膚反応が落ち着いたことを確認し、継続・設定変更・延期・中止を決めます。
診察では、予定した回数をこなすことより、前回照射後の赤みや濃色化がどのくらい続いたかを優先します。写真で変化が乏しく見えても、PIHが重なっている時期に照射を重ねず、状態が落ち着くまで待つことがあります。
照射後は赤み・濃色化・色素脱失を観察する
| 時期 | 起こり得る変化 | 自宅での対応 | 連絡する目安 |
|---|---|---|---|
| 当日〜数日 | 赤み、腫れ、熱感、軽い痛み | 指示された冷却・保護、こすらない | 痛みが増す、水疱、強い腫れ |
| 数日〜数週 | 一時的な濃色化、薄い痂皮など | 無理にはがさず保湿・遮光 | びらん、膿、出血、治癒遅延 |
| 数週〜数か月 | PIH、徐々な色調変化 | 同条件の写真で記録 | 濃色化が強まる、肝斑様に広がる |
| 長期 | 残存、再び目立つ、色素脱失 | 自己判断の再照射を避ける | 白抜け、まだら、瘢痕 |
ABNOMと太田母斑を比較した研究では、ABNOMでレーザー後の紅斑とPIHが多かったと報告されています。[7]また、大規模な観察研究ではADM治療後の肝斑の顕在化・悪化が検討されています。[6]因果関係や頻度を日本人全体へそのまま当てはめることはできませんが、治療前に混在を確認する理由になります。
洗浄・保湿・遮光は施設の指示を優先する

- 患部を強くこすらず、痂皮や皮膜を無理にはがさない
- 洗顔、入浴、メイク、運動、飲酒の再開時期を施設へ確認する
- 処方された軟膏・保護材・日焼け止めの使い方を守る
- 新しい美白剤、レチノール、ピーリング成分を自己判断で重ねない
- 痛み、水疱、膿、強い腫れ、色抜けがあれば早めに連絡する
レーザー後にEGF含有クリームを検討した小規模RCTでは、PIH予防効果は示されませんでした。[5]「再生」「成長因子」などの名称だけで標準的アフターケアとみなさず、製品ごとの根拠と費用を確認します。
治療を延期・中止して相談したい状態を確認する
強まる痛み、広がる赤み・腫れ、水疱、びらん、膿、出血、治癒の遅れ、急な白抜け、まだらな黒ずみ、視覚症状がある場合は、自己処置を重ねず連絡してください。
日焼け直後、活動性の湿疹・感染、強い刺激性皮膚炎がある場合は治療を延期します。妊娠・授乳、光過敏を起こし得る薬やサプリ、ケロイド歴、過去の色素脱失などは事前に申告してください。
契約前に総額・中止基準・合併症対応を確認する
| 確認項目 | 質問例 | 確認する理由 |
|---|---|---|
| 診断と範囲 | どこがADMで、肝斑などはどこですか? | 顔全体へ一律照射するのを避ける |
| 機器・設定 | 波長、照射方法、テスト照射は? | 機器名だけでは治療内容が分からない |
| 回数と総額 | 1回料金、想定幅、麻酔・薬・再診料は? | 複数回と経過観察を含めて判断する |
| 中止・変更 | どの反応で延期・設定変更しますか? | PIHや色素脱失時に照射を重ねない |
| 合併症対応 | 時間外連絡先と診察費は? | 水疱・感染・強い色調変化へ備える |
自費診療では、症例写真や割引よりも、診断根拠、治療計画、合併症時の診療体制、総費用を書面で比較してください。
ADMのレーザー治療でよくある質問
ピコレーザーはQスイッチレーザーより優れていますか?
一律に優れるとは断定できません。2026年の系統的レビューでは明確な差は示されず、エビデンス確実性は非常に低いと評価されました。波長・設定・診断・皮膚反応を含めて選びます。
ADMのレーザー治療は1回で終わりますか?
複数回が必要になることが多く、1回での終了は保証できません。毎回の色調、赤み、PIH、色素脱失を確認し、次の照射時期と設定を調整します。
レーザー後に濃くなったら失敗ですか?
一時的な濃色化、炎症後色素沈着、肝斑の顕在化、残存など複数の可能性があります。すぐ再照射せず、同条件の写真と診察で原因を分けてください。
レーザー後はいつから美白化粧品を使えますか?
製品成分、皮膚の回復、照射方法で異なります。赤みや刺激がある間は自己判断で再開せず、施術施設の指示に従ってください。
参考文献
- 日本皮膚科学会ほか. 令和3年度美容医療診療指針:ADMに対するレーザー治療. 2022.
- Li F, et al. Efficacy of Q-Switched and picosecond lasers for acquired bilateral nevus of Ota-like macules: a systematic review and exploratory dose-response meta-analysis. Lasers Med Sci. 2026. PMID: 42560400
- Chen W, et al. 730-nm and 1064-nm picosecond lasers for ABNOM: a split-face randomized controlled pilot trial. J Cosmet Dermatol. 2024. PMID: 39180331
- Yang X, et al. A retrospective study of 1064-nm Q-switched Nd:YAG laser therapy for acquired bilateral nevus of Ota-like macules. Skin Res Technol. 2023. PMID: 36973977
- Wattanakrai P, et al. EGF cream after Q-switched laser treatment of ABNOM: split-face randomized controlled study. J Cosmet Dermatol. 2022. PMID: 35066982
- Wang B, et al. Induction of melasma by 1064-nm Q-switched Nd:YAG laser therapy for ABNOM. J Dermatol. 2016. PMID: 26777390
- Lee B, et al. Comparison of ABNOM and nevus of Ota according to therapeutic outcome. J Korean Med Sci. 2004. PMID: 15308847
- Ee HL, et al. 532-nm plus 1064-nm Q-switched Nd:YAG laser for Hori nevus: prospective study. Dermatol Surg. 2006. PMID: 16393596
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