- ✓ 眼科検査は視力測定から専門的な精密検査まで多岐にわたり、目の健康維持に不可欠です。
- ✓ 各検査には目的があり、疾患の早期発見や適切な治療方針の決定に役立ちます。
- ✓ 定期的な眼科受診と検査は、自覚症状がない段階での目の病気の発見につながります。
眼科の検査は、私たちの目の健康を守る上で非常に重要です。視力低下や目の痛みといった自覚症状がなくても、加齢や生活習慣によって目の病気は進行していることがあります。早期発見・早期治療のためには、定期的な眼科検査が不可欠です。このガイドでは、眼科で行われる様々な検査の種類とその目的、そしてそれぞれの検査で何がわかるのかを専門医の視点から詳しく解説します。
基本的な眼科検査とは?

基本的な眼科検査とは、眼科を受診した際に最初に行われることが多く、目の状態を総合的に把握するための検査群を指します。これらの検査は、視力低下の原因特定や、緑内障、白内障などの一般的な眼疾患のスクリーニングに役立ちます。
視力検査(屈折検査)
視力検査は、遠方視力や近方視力を測定し、裸眼視力と矯正視力(眼鏡やコンタクトレンズ使用時)を評価します。屈折検査は、目のピント合わせの状態(近視、遠視、乱視)を客観的に測定するもので、オートレフラクトメーターという機器を用いて行われることが一般的です。この検査は、眼鏡やコンタクトレンズの処方だけでなく、白内障手術前の眼内レンズ度数決定にも重要な情報を提供します。
日常診療では、「最近、遠くの看板が見えにくくなった」「スマートフォンの文字がかすむ」と相談される方が少なくありません。視力検査と屈折検査によって、その原因が近視や老眼の進行なのか、あるいは他の眼疾患によるものなのかを判断する第一歩となります。
眼圧検査
眼圧検査は、目の内部の圧力(眼圧)を測定する検査です。眼圧が高い状態が続くと、視神経に負担がかかり、緑内障の発症リスクが高まります。非接触型眼圧計(空気眼圧計)が一般的に用いられ、目に空気を吹き付けて眼圧を測定します。痛みはなく、短時間で完了します。正常な眼圧は通常10~21mmHgとされていますが、個人差や日内変動があるため、一度の検査だけで判断せず、必要に応じて複数回測定することもあります[3]。
細隙灯顕微鏡検査(さいげきとうけんびきょうけんさ)
細隙灯顕微鏡検査は、細い光を当てて目の前部(角膜、結膜、前房、虹彩、水晶体など)を拡大して観察する検査です。これにより、角膜の傷、結膜炎、白内障の有無や進行度、ぶどう膜炎の兆候などを詳細に確認できます[1]。この検査は、眼科医が患者さんの目の状態を直接目で確認する上で最も基本的な検査であり、多くの眼疾患の診断に不可欠です。
- 細隙灯顕微鏡(スリットランプ)とは
- 目の前部に細い光(スリット光)を当て、それを顕微鏡で拡大して観察するための装置です。目の表面から内部まで、立体的に詳細な情報を得ることができます。
眼底検査
眼底検査は、目の奥にある網膜、視神経、血管の状態を観察する検査です。瞳孔を開く目薬(散瞳薬)を使用する場合としない場合があります。散瞳薬を使用すると、瞳孔が大きく開くため、より広範囲の眼底を詳細に観察できますが、検査後数時間はまぶしく感じたり、ピントが合いにくくなったりするため、車の運転などは避ける必要があります。糖尿病網膜症、緑内障、加齢黄斑変性などの診断に非常に重要です[2]。
実臨床では、糖尿病を患っている患者さんには定期的な眼底検査を強く推奨しています。自覚症状がなくても、網膜に出血や浮腫が見られるケースは少なくなく、早期発見が失明予防につながります。
散瞳薬を使用した眼底検査後は、数時間ピントが合いにくくなったり、まぶしく感じたりすることがあります。車の運転や精密な作業は控えるようにしてください。
眼底・網膜の検査にはどのような種類がある?

眼底・網膜の検査は、網膜や視神経の病気を診断するために行われる専門的な検査です。糖尿病網膜症、加齢黄斑変性、緑内障、網膜剥離など、失明につながる可能性のある重篤な疾患の早期発見と病状評価に不可欠です。
光干渉断層計(OCT)検査とは?
光干渉断層計(Optical Coherence Tomography: OCT)検査は、網膜の断面図を非侵襲的に高解像度で撮影できる画期的な検査です。網膜の各層の厚みや構造、視神経乳頭の形状、黄斑部の浮腫やドルーゼン(老廃物)の有無などを詳細に評価できます。これにより、加齢黄斑変性、糖尿病黄斑浮腫、網膜静脈閉塞症、緑内障による視神経線維層の菲薄化などを早期に、かつ定量的に診断することが可能です[4]。検査時間は数分で、痛みもなく、散瞳薬を使用しないで行える場合も多いです。
筆者の臨床経験では、OCT検査は網膜疾患の診断と治療効果の評価に欠かせないツールとなっています。特に、滲出型加齢黄斑変性の患者さんでは、治療開始後数ヶ月ほどで網膜下液や網膜内浮腫の改善が実感される方が多く、OCT画像でその変化を客観的に示すことで、患者さんの治療継続へのモチベーションにもつながっています。
眼底カメラ(眼底撮影)
眼底カメラは、眼底の網膜や血管、視神経乳頭を写真として記録する検査です。これにより、病変の有無や進行度を客観的に評価し、経時的な変化を比較することができます。糖尿病網膜症の出血や血管異常、緑内障による視神経乳頭の陥凹拡大、網膜色素変性症などの診断や経過観察に用いられます[2]。散瞳薬を使用する場合としない場合がありますが、広範囲を撮影するには散瞳が必要となることが多いです。
蛍光眼底造影検査
蛍光眼底造影検査は、腕の静脈から蛍光色素(フルオレセイン)を注射し、時間経過とともに眼底の血管を撮影する検査です。これにより、通常の眼底検査では見えにくい網膜の血管の異常(新生血管、血管閉塞、漏出など)を詳細に評価できます。加齢黄斑変性の活動性評価、糖尿病網膜症の治療方針決定、網膜血管疾患の診断に非常に有用です。検査時間は20~30分程度かかります。
| 検査名 | 主な目的 | 特徴 |
|---|---|---|
| OCT検査 | 網膜・視神経の断面構造評価 | 非侵襲的、高解像度、短時間 |
| 眼底カメラ | 眼底の記録、経時的変化の比較 | 写真記録で客観的評価 |
| 蛍光眼底造影検査 | 網膜血管の異常(新生血管、漏出など)評価 | 造影剤使用、血管病変の詳細な評価 |
視野の検査とは?緑内障の診断に不可欠?
視野の検査は、見える範囲(視野)を測定する検査です。特に緑内障の診断と進行度評価において極めて重要な役割を果たします。緑内障は、視神経が障害されて視野が徐々に狭くなる病気であり、早期には自覚症状がないことが多いです[3]。
静的量的視野検査(ハンフリー視野検査など)
静的量的視野検査は、視野計と呼ばれる機器を用いて、視野の感度を定量的に測定する検査です。患者さんは顎を固定し、一点を見つめながら、様々な位置や明るさで提示される光の点が見えたらボタンを押します。これにより、視野のどこに感度の低下があるかを詳細にマッピングできます。緑内障の診断基準の一つであり、病状の進行度や治療効果の評価に定期的に行われます[3]。
診察の場では、「視野検査は時間がかかって大変」と質問される患者さんも多いです。確かに片眼で10分程度かかることもありますが、緑内障の早期発見や進行を食い止めるためには非常に重要な検査であることを丁寧に説明し、ご理解いただくように努めています。
動的量的視野検査(ゴールドマン視野検査など)
動的量的視野検査は、動く光の点を用いて視野の広さを測定する検査です。検査員が手動で光の点を動かし、患者さんがそれが見えなくなった点を申告することで、視野の境界線をマッピングします。静的量的視野検査に比べて、より広い範囲の視野を評価できるため、末期の緑内障や脳神経疾患による視野障害の評価に用いられることがあります。また、視野の周辺部を評価するのに適しています。
視野検査で何がわかるのか?
視野検査によって、以下のような情報が得られます。
- 視野欠損の有無とパターン: 緑内障では特徴的な視野欠損パターンが見られます。
- 病状の進行度: 視野欠損の範囲や深さから、病気の進行度を評価できます。
- 治療効果の判定: 治療によって視野欠損の進行が抑制されているかを確認します。
- 脳神経疾患の診断: 脳腫瘍や脳梗塞など、脳の病気が原因で視野障害が起こることもあります。
緑内障の治療では、眼圧を下げることで視野の進行を遅らせることが主な目的となります。視野検査の結果は、治療方針の決定や変更に直結するため、定期的な検査が推奨されます。
その他の専門的な検査とは?

眼科では、基本的な検査や網膜・視野の検査に加え、特定の疾患の診断や治療方針の決定のために、さらに専門的な検査が行われることがあります。これらは、より詳細な情報を提供し、複雑な目の問題の解決に役立ちます。
角膜内皮細胞検査
角膜内皮細胞検査は、角膜の最も内側にある「角膜内皮細胞」の数や形、大きさを測定する検査です。角膜内皮細胞は、角膜の透明性を保つために重要な役割を担っており、一度減少すると再生しない特徴があります。この細胞が減少すると、角膜がむくみ(角膜浮腫)、視力低下につながることがあります。白内障手術前やコンタクトレンズの長期装用者、角膜疾患の診断・経過観察に用いられます。正常な細胞密度は年齢とともに減少しますが、極端な減少は注意が必要です。
臨床現場では、白内障手術を検討されている患者さんに対して、術後の角膜浮腫のリスクを評価するためにこの検査は必須です。特に、角膜内皮細胞の数が少ない方には、手術方法の選択や術後の注意点についてより詳細な説明を行う必要があります。
電気生理学的検査(ERG, VEPなど)
電気生理学的検査は、網膜や視神経の電気的な活動を測定することで、視覚機能の異常を評価する検査です。網膜電図(ERG: Electroretinogram)は網膜の光に対する反応を、視覚誘発電位(VEP: Visual Evoked Potential)は視神経から脳への電気信号の伝達を評価します。これらの検査は、網膜色素変性症などの遺伝性網膜疾患、視神経炎、脳の視覚経路の異常など、通常の検査では診断が難しい疾患の診断に有用です。
- 網膜電図(ERG): 網膜の光受容細胞(桿体細胞、錐体細胞)や双極細胞の機能を評価します。
- 視覚誘発電位(VEP): 視神経から視覚野(脳)までの経路の機能障害を検出します。
超音波検査(エコー検査)
眼科における超音波検査は、目の内部が混濁していて眼底が見えない場合(例: 白内障が進行しすぎている、硝子体出血など)に、目の奥の状態を評価するために用いられます。超音波を当てることで、網膜剥離の有無、眼内腫瘍、硝子体出血の範囲などを確認できます。また、眼軸長(目の奥行きの長さ)を測定し、白内障手術の眼内レンズ度数計算にも利用されます。
色覚検査
色覚検査は、色の識別能力を評価する検査です。先天性の色覚異常(いわゆる色盲・色弱)や、後天性の視神経疾患、網膜疾患によっても色覚異常が生じることがあります。石原式色覚検査表やアノマロスコープなどが用いられ、色覚異常の種類や程度を診断します。特定の職業に就く際の適性検査としても行われることがあります。
まとめ
眼科の検査は、私たちの目の健康を維持し、様々な眼疾患を早期に発見・治療するために不可欠です。視力検査や眼圧検査、細隙灯顕微鏡検査といった基本的な検査から、OCT検査や視野検査、さらには電気生理学的検査などの専門的な検査まで、多岐にわたります。
それぞれの検査には明確な目的があり、目の状態を総合的に評価することで、適切な診断と治療方針の決定につながります。自覚症状がなくても、加齢や生活習慣病によって目の病気が進行している可能性は十分にあります。定期的に眼科を受診し、適切な検査を受けることが、長期的な目の健康を守る上で非常に重要です。目の不調を感じた際はもちろん、特に症状がなくても、定期的な検診をおすすめします。
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- Douglas A Jabs, Robert B Nussenblatt, James T Rosenbaum. Standardization of uveitis nomenclature for reporting clinical data. Results of the First International Workshop.. American journal of ophthalmology. 2005. PMID: 16196117. DOI: 10.1016/j.ajo.2005.03.057
- Christina J Flaxel, Ron A Adelman, Steven T Bailey et al.. Diabetic Retinopathy Preferred Practice Pattern®.. Ophthalmology. 2020. PMID: 31757498. DOI: 10.1016/j.ophtha.2019.09.025
- Marta Pazos, Carlo E Traverso, Ananth Viswanathan. European Glaucoma Society – Terminology and guidelines for glaucoma, 6th Edition.. The British journal of ophthalmology. 2025. PMID: 41026937. DOI: 10.1136/bjophthalmol-2025-egsguidelines
- Lasse Malmqvist, Lulu Bursztyn, Fiona Costello et al.. The Optic Disc Drusen Studies Consortium Recommendations for Diagnosis of Optic Disc Drusen Using Optical Coherence Tomography.. Journal of neuro-ophthalmology : the official journal of the North American Neuro-Ophthalmology Society. 2020. PMID: 29095768. DOI: 10.1097/WNO.0000000000000585

