肺がんのステージとTNM第9版|臨床病期・病理病期の違いを解説

肺内の病変と肺の中央にあるリンパ節を示した模式図
Respiratory medicine / Understanding stage

肺がんのステージとTNM第9版の読み方

診断書の記号を、病気の広がりを共有するための情報として読み解きます。

更新日 2026.09.21監修日 2026.09.21
分類TNM第9版を確認
区別臨床病期と病理病期
相談病期だけで治療は決まらない
結論から

肺がんのステージは、原発巣の大きさと広がりを示すT、所属リンパ節への転移を示すN、遠隔転移を示すMの組み合わせで決まります。日本肺癌学会の2025年版ガイドラインはTNM第9版を掲載しています。症状や腫瘍の直径だけでは決められず、臨床病期か病理病期か、どの版かも合わせて確認します。[1]

01

Tは原発巣、Nはリンパ節、Mは遠隔転移を表す

Tは、肺に最初にできたがんの大きさや、周囲の構造へどこまで及んでいるかを表します。Nは、決められた範囲のリンパ節に転移があるか、どの場所かを表します。Mは遠隔転移の有無や広がりを表します。それぞれの記号に付く数字は同じ意味ではないので、Tの数字とステージの数字を同一視しないようにします。[1]

T
原発巣の大きさ、周囲への広がりなど
N
所属リンパ節への転移とその範囲
M
遠隔転移の有無や分布

Mの評価には、ほかの臓器への転移だけでなく、反対側の肺への転移や悪性胸水などの状態も関係します。ただし、胸水や別の肺の影があるだけで自動的に転移と決まるわけではありません。原因を検査で評価し、医師が総合して分類します。患者さん自身で画像の所見を表に当てはめて確定しないでください。[1]

02

TNM第9版ではN2とM1cの区分などが細かくなった

第9版では、N2が単一のリンパ節領域か複数の領域かによってN2a・N2bに分かれ、M1cは転移が一つの臓器系にあるか複数の臓器系にあるかによってM1c1・M1c2に分かれました。これらに伴い、一部のT・N・Mの組み合わせと病期グループの対応が変わっています。[1][2]

この分類は、大規模な国際データを分析して、がんの解剖学的な広がりをより細かく整理するために作られています。ただし、分類が細かくなっても個人の余命を正確に予測できるわけではありません。以前の説明と名前が違うときは、病気の変化なのか、版の変更なのか、評価方法の違いなのかを確認してください。[2]

肺内の病変と肺の中央にあるリンパ節を示した模式図
図|病期は肺内の病変とリンパ節、他の臓器への広がりを評価 説明のための生成イラストです。特定のステージや実際の検査画像を表すものではありません。
03

Ⅰ期からⅣ期という名前だけで、治療や見通しを決めない

病期はT・N・Mを組み合わせた分類で、早い段階から広がりのある段階までを区分します。同じⅠ期、Ⅱ期、Ⅲ期でもさらに細分され、がんの大きさだけで境界を説明することはできません。「リンパ節転移があるから必ずⅢ期」「小さいから必ずⅠ期」という読み方は正確ではありません。[1]

Ⅳ期にも状態の違いがあり、がんの種類、転移の分布、遺伝子の変化、体の状態などによって治療の相談内容は変わります。また、小細胞肺がんではTNM分類に加え、治療を考える際に限局型・進展型という区分が用いられます。これらはTNMの一つのステージと単純に同じ意味ではありません。[3]

覚えるより、自分の結果を確認する

「自分のT・N・Mは何か」「まだ確かめる検査があるか」「治療の相談に何が影響するか」の3点を聞くと、分類表の暗記より説明を理解しやすくなります。

04

治療前の臨床病期と、切除標本で分かる病理病期を区別する

臨床病期は、画像や生検など、治療前に得られた情報をもとに評価します。病理病期は、手術で取り出したがんやリンパ節を調べた結果などをもとに評価します。検査で見える範囲と顕微鏡で分かる範囲には違いがあるため、手術前後で病期が変わることがあります。変更があったことだけで、短期間に急速に進行したとは限りません。[3][4]

記録にあるc、p、治療後を示す接頭辞などは、どの時点の評価かを読み取る手掛かりです。手術前の薬物療法などを受けた方では、治療後の評価も区別します。説明を聞くときは、治療前、手術後、現在のどの時点について話しているかをそろえ、違う時点の数字をそのまま比較しないようにしてください。

診察室から

呼吸器内科で病期を説明する際は、画像に基づく現在の評価と、組織を調べて初めて分かる情報を分けて確認します。検査が追加された理由や結果説明の予定を並べると、「病期が変わった」という言葉の意味を整理できます。分類だけでなく、治療選択にどう関係するかを個別に確かめる必要があります。

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画像・必要な組織検査・体の状態を合わせて治療を考える

造影CT、PET/CT、脳MRIなどは、目的に応じて広がりの評価に使います。PET/CTで集積があるリンパ節にも炎症が関係することがあり、必要に応じて組織を採って確認します。一方、画像や採取検査にも限界があるため、すべての不確実性を一度に解消できるとは限りません。追加検査で治療方針がどう変わるかを尋ねましょう。[4]

治療方針には病期だけでなく、組織型、遺伝子の変化、肺や心臓などの機能、持病、生活、本人の希望も関係します。検査を増やすことだけが目的ではありません。安全性や検査負担、結果を待つ期間も含めて相談します。具体的な薬剤や手術の適応は、自分の検査結果をそろえて担当医から説明を受けてください。

06

版・検査時点・未確定の部分を結果説明で確認する

診断書や結果票があれば、「TNM第何版ですか」「臨床病期と病理病期のどちらですか」「T・N・Mのうち確定していない部分はありますか」「次に何を調べますか」と質問します。検査結果の言葉をそのままメモし、分からない略語は説明してもらいましょう。以前の結果と違う場合は、変更の根拠も確認します。

病期の説明を受けるまでの間でも、強い息切れ、意識の変化、多量の喀血などは待たずに救急対応を取ります。症状が安定している場合は、結果説明に同席してほしい人や、質問の優先順位を準備してください。病期の情報は次の行動を相談するためのものであり、数字だけを見て治療をあきらめたり、自己判断で変更したりする必要はありません。

07

よくある質問

同じ大きさの肺がんならステージも同じですか?

同じとは限りません。周囲への広がり、リンパ節や遠隔転移なども合わせて分類します。直径だけではステージを決められません。

第8版と第9版を自分で読み替えてよいですか?

分類の対応が変わる部分があるため、担当医に確認してください。元の記録はそのまま保管し、何版の評価かを明示して比較します。

治療が効いたら診断時のステージも小さくなりますか?

診断時の病期と治療後の状態は区別して記録します。治療効果の評価方法や現在の状態を担当医に確認し、診断時の数字だけを書き換えて理解しないようにしましょう。

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参考文献