【ミッドフェイスリフト・ネックリフトの適応と術式】|医師が解説

ミッドフェイスリフト・ネックリフトの適応と術式|医師が解説
最終更新日: 2026-09-26
📋 この記事のポイント
  • ✓ ミッドフェイスリフトは中顔面(目の下から頬)の下垂やゴルゴ線を劇的に改善する深部リフト術です
  • ✓ ネックリフトは広頸筋の弛緩を補正し、シャープな二重あご解消と首元のシワに強力にアプローチします
  • ✓ 骨膜下アプローチや広頸筋縫縮など、解剖学的根拠に基づく高度な術式選択が美しく自然な仕上がりの鍵となります
※ 本記事は医療に関する情報提供を目的としています。個別の症状については、かかりつけの医療機関にご相談ください。

ミッドフェイスリフトとネックリフトの基礎知識とは?

顔全体の若返りを図るうえで、中顔面(ミッドフェイス)と頸部(ネック)のエイジングケアは非常に重要な役割を果たします。単に皮膚の表面を引き張るだけの一時的なアプローチとは異なり、解剖学的な深部組織へ直接作用させることで、より長期的かつ自然な改善を目指すのが、ミッドフェイスリフトおよびネックリフトの最大の特徴です。

中顔面領域は、下眼瞼(目の下)から上唇までのエリアを指します。加齢が進むと、このエリアの骨組織(上顎骨など)が徐々に吸収されて後退するほか、頬を高い位置に留めているリガメント(保持靭帯)の緩みによって深部脂肪組織(メーラーファット)が下方かつ前方へと下垂します。これにより、目の下の凹みやゴルゴ線(鼻頬溝)、深いほうれい線(鼻唇溝)が形成され、顔全体が疲れて平坦な印象に見えるようになります。

一方の頸部領域(ネック)は、顎のライン(フェイスライン)から鎖骨にかけたエリアを指します。首の美しさを形作るのは皮膚だけでなく、その直下に広がる「広頸筋(こうけいきん)」と呼ばれる薄い筋肉です。加齢によって広頸筋が中央部で左右に離れたり、皮膚が過剰に進展したりすることで、首元の縦ジワ(プラティズマル・バンド)や顎下のたるみが目立ち、いわゆる「七面鳥の首」と呼ばれる変化をもたらします。これらの構造変化に最適化された治療を計画するために、まず知っておべき基本的な医療用語とその定義を以下にまとめます。

ミッドフェイスリフト(中顔面挙上術)
下垂した中顔面の軟部組織(メーラーファット等)を元の位置へ垂直に引き上げ、骨や硬固な筋膜組織に固定して顔の中心部にふっくらとした若々しい高さを取り戻す外科的手術です。
ネックリフト(頸部挙上術)
首元のたるんだ皮膚を除去するとともに、深層にある広頸筋(プラティズマ)を再配置・縫縮・引き上げることで、引き締まった美しい顎下の角度(頸部顎角)を取り戻すための手術です。
骨膜下アプローチ(Subperiosteal Approach)
骨を包む「骨膜」のすぐ下の層を剥離し、血管や神経を傷つけないように安全性を確保しながら、顔面の深い軟部組織を塊のまま安全に引き上げる高度な手法です。
プラティズマル・バンド(Platysmal Band)
加齢により広頸筋の内側縁が緩み、緊張することで首の前方に浮き出てくる、2本の平行した縦方向の筋状のシワのことです。

ミッドフェイスリフト・ネックリフトの適応となる状態

これら二つのリフトアップ術は、お悩みの部位や組織の緩みの程度により、明確な適応基準が異なります。若返り治療においては、患者自身の顔立ちや老化の「どの階層」にトラブルが生じているかを見極めることが何よりも大切です。

ミッドフェイスリフトが適応となる状態

ミッドフェイスリフトの主たる適応は、下眼瞼(目の下)から頬の中央部にかけての組織の下垂です。具体的には、下まぶたの裏のふくらみ(ヘルニア化した眼窩脂肪)と、その直下の皮膚やメーラーファットの下垂により、頬の位置が下がってしまった状態が挙げられます[3]。これによりゴルゴ線がくっきりと現れ、頬のトップの位置(最も高い部分)が低くなることで、顔全体に張りが失われ実年齢より老けて見えやすくなります。

  • 目の下のクマ・たるみが著しく、ヒアルロン酸注入や脱脂だけでは改善が困難な方
  • 頬の位置(中顔面)全体が下垂し、ゴルゴ線やほうれい線が目立つ方
  • 頬が痩せて平坦になり、実年齢よりも疲れて不健康に見えやすい方

ネックリフトが適応となる状態

ネックリフトの主な適応は、頸部の緩みと顎下の輪郭喪失です。加齢による皮下脂肪の蓄積や皮膚の伸展、広頸筋の離開などが重なり合うと、顎の下から首元にかけて平坦なラインになってしまいます。特に「首元だけ年齢が隠せない」「あごを引いたときに著しく皮膚が余る」という場合に本術式の適応となります[2]。

  • 首全体に縦のシワ(プラティズマル・バンド)や、細かい横ジワが深く刻まれている方
  • 顎下の脂肪と皮膚がたるみ、二重あご(ダブルチン)やフェイスラインの不鮮明さが目立つ方
  • HIFUや糸リフトなど、切開を伴わない治療で満足いく首元の引き締めが得られなかった方

日々の診療では、「他院で何度も糸リフトを繰り返したが、目の下のくぼみや顎下のたるみに太刀打ちできなかった」と深刻に悩まれて受診される患者さまが少なくありません。実臨床では、これらのお悩みを抱える患者さまの皮膚の余剰や脂肪の分布、表情を作ったときの筋肉の動きを立体的に触診しながら適応を慎重に見極め、最適な術式提案を行っています。

ミッドフェイスリフトの具体的な術式とアプローチ

中顔面のリフトアップ(ミッドフェイスリフト)を安全かつ永続的に行うためには、正確な解剖層でのアプローチと、強固な固定技術必要不可欠です。本術式における主要な侵入経路および固定方法について解説します。

骨膜下ミッドフェイスリフト(Subperiosteal Midface Lift)

数ある術式の中でも、骨膜下のレベルで剥離を行う「骨膜下ミッドフェイスリフト」は非常にエレガントかつ根治的なアプローチです。このアプローチでは、上顎骨の表面を覆っている骨膜下という無血管野(血管が極めて少ない層)を通りながら剥離を行います[1][4]。骨に近い深い層を移動させるため、顔面神経の主要な枝(運動神経)を安全に回避しながら、メーラーファットを骨膜とともに一塊として頭側へスライドさせることができます。

アプローチ部位としては、一般的に下眼瞼(下まつ毛のすぐ下)の皮膚切開、または目立たないまぶたの裏側の結膜切開(経結膜アプローチ)が用いられます。さらに、側頭部(こめかみの髪の毛の中)に小切開を加え、中顔面の軟部組織を引き上げるための牽引経路を確保します。これにより、側頭部から下眼瞼へ向けた多方向の引き上げ(ベクトルの分散)が可能になります。

骨孔(ドリルホール)や懸垂装置による確実な固定

引き上げた中顔面組織をどの部位に固定するかも、術後の持続性を高めるために極めて重要です。側頭部へ十分に引き寄せたのち、側頭筋膜に組織を縫合固定するのが一般的な手法ですが、これに加えて顎顔面骨格へダイレクトに固定を行うこともあります。Perryらの報告によると、眼窩下縁や側頭骨に微細な骨孔(ドリルホール)を設けて、その骨孔に通した非吸収性の糸によって組織を強固に固定する手法が採用されることもあり、非常に安定したリフトアップ効果が長期間にわたり持続します[1]。

日常診療では、「骨を剥離する手術はものすごく腫れるのではないか」と相談される患者さまが後を絶ちません。しかし実際の臨床現場では、骨膜下というターゲット層を的確にアプローチすれば筋肉や神経への不要な愛護的損傷を最小限に抑えられるため、むしろ手術時間は短く、術後1週間程度の腫れが引いたのちには驚くほどシャープで自然な頬の高さを取り戻すことができることを詳しく説明し、患者さまの不安を和らげるよう丁寧な診療フローを確立しています。

ネックリフトの具体的な術式とアプローチ

ネックリフトの術式は、首のたるみ具合、皮下脂肪の量、広頸筋(こうけいきん)の動きの状態に合わせてプランニングします。ただ皮膚を引っ張り取るだけでは不自然に突っ張った首元になってしまうため、深部構造(広頸筋)の徹底的な再建が必要になります。

広頸筋縫縮術(コルセットプラティズマプラスティ)

首の中央部に縦ジワ(プラティズマル・バンド)が目立つ場合、また二重あごが深刻な場合は、広頸筋のコントロールが必要となります。耳後部からの側方への引き上げに加え、顎下部に約2〜3cmの目立たない切開を加え、左右に離れてしまっている広頸筋の中央部分をアプローチします。この両端の筋肉を引き寄せて中央でしっかりと縫い合わせる術式を「広頸筋縫縮術」またはコルセットプラティズマプラスティと呼びます。これにより、緩んでいた首周りの筋肉がコルセットのようにしっかりと引き締まり、顎下の鋭角で美しいラインが蘇ります。

耳後部切開からうなじにかけた余剰皮膚の切除

首元に多大な皮膚の余りがある場合、耳の裏からうなじ(ヘアライン)に沿って切開線をのばし、皮膚を上方かつ後方に引き上げて余分な部分を綺麗に切除します。このとき、耳元や生え際の不自然な変形(例えば、耳たぶが下に引っ張られる「ピクシーイヤー」)を防ぐため、耳の後ろの深い溝や髪の毛の中に巧みに傷跡を隠すような縫合技術が求められます。

男性における「ショートスカー(短傷跡)ネックリフト」

近年では男性のネックリフト需要も増加しています。しかし男性の場合、髪が短いことが多いため、長い切開傷を髪で隠すことが困難です。これに対してSomenekらによる男性用ショートスカーネックリフトなどの低侵襲な選択肢が開発されています[2]。これは、耳の後ろのごくわずかな範囲と顎下の最小限のアプローチを駆使することで、傷跡を周囲に悟らせないようにしながら顎下を強力にシャープにする治療法です。

外来診療では、特に男性の患者さまから「周囲にバレずに顎下のたるみをなくしたい」という具体的な訴えをよく耳にします。臨床現場では、患者さま一人ひとりの髪の長さやもみあげの形状、皮膚の弾力を細部まで評価し、切開線の位置を数ミリ単位で綿密にシミュレーションします。さらに術後用の薄型の圧迫サポーターを用いたきめ細かなフォローアップ指導を行うことで、社会復帰を早めつつ最大の効果を引き出すよう努めています。

治療効果を高めるための併用療法と術式比較

顔の若返りは、一部位の皮膚を単純に伸ばすだけでは全体のバランスが崩れて不自然になりがちです。中顔面をあげるミッドフェイスリフトと、首元を引き締めるネックリフト、あるいはその他のボリューム補充施術を賢く組み合わせることで、3次元的に調和のとれた若返り効果を得ることができます。

効果を高めるための具体的な併用手法

ミッドフェイスリフトと相乗効果が高い治療法としては、下まぶたの膨らみを除去する「経結膜脱脂」や、ゴルゴ線・ほうれい線の溝を内側からふっくらと持ち上げる「ナノ脂肪注入(マイクロファットグラフト)」が挙げられます。中顔面を下側から上に持ち上げつつ、凹みに対して自身の良質な脂肪を少量補うことで、皮膚の張り感が飛躍的に向上します[3]。同様に、ネックリフト時には「顎下脂肪吸引」を同時に行うことで、筋肉への負荷を減らし、よりシャープに引き締まったフェイスラインを作り出すことが容易になります。

術式名主なアプローチ対象主な切開ライン解剖学的なアプローチ深さ
ミッドフェイスリフト目の下のくぼみ、ゴルゴ線、頬位置の下垂下眼瞼(睫毛下)、結膜、側頭髪際内骨膜下層(主に上顎骨表面)[1]
ネックリフト首の縦じわ、二重あご、首全体のたるみ耳の後ろ、髪の生え際、あご下(約3cm)皮下層、および広頸筋(プラティズマ)深層
フルフェイスリフト頬〜フェイスライン〜首全体の広範なたるみもみあげ〜耳の前〜耳の後ろ一帯SMAS層(表情筋膜下)、皮下層

実際の診療現場では、顔全体の調和が最も重視されます。臨床経験上、ひとつの施術に固執して過度な引き上げを行うよりも、ミッドフェイスリフトで頬に自然な丸みを戻し、マイルドなネックリフトを並行してすっきりした顎ラインを形成したほうが、周囲に手術をしたことを気付かれない極めてナチュラルな美しさを達成できる場合が多いため、個々の構造に合わせたオーダーメイドな複合プランを慎重に提案しています。

術後の経過と注意すべき副作用はある?

これらの切開を伴う本格的なリフトアップ手術を安全に進め、患者さまに納得いただける結果を出すためには、あらかじめ想定されるダウンタイム(経過期間)やリスク・副作用を正しく理解しておくことが極めて重要です。

術後のダウンタイムと経過の目安

個人差はありますが、手術直後から術後3〜5日にかけて、腫れ、軽度の痛み、内出血がピークを迎えます。ミッドフェイスリフトの場合、特に目の下から頬周りにかけて強い腫れが出現しやすく、一時的に下まぶたが少し外側に引っ張られるように感じることがありますが、腫れの軽減とともに速やかに改善に向かいます。ネックリフトでは首元に皮膚のツッパリ感や硬結(皮膚が一時的に硬くなる拘縮現象)が見られますが、術後1〜2か月で柔らかく馴染んでいきます。

想定されるリスクと合併症

  • 血腫(けっしゅ):術後の急激な血圧上昇などにより、皮下に血液が溜まってしまう現象です。特に広く皮膚を剥離するネックリフトでは徹底した血腫予防が求められます。
  • 顔面神経麻痺:中顔面の挙上操作や剥離の際に表情神経の側頭枝や頬筋枝が一過性に引き伸ばされ、一時的に眉毛が上がりにくくなったり、口元に左右差が出たりするリスクが稀にあります[4]。
  • 感覚鈍麻:切開や剥離に伴い、耳の周りや頬、顎下の皮膚感覚が鈍くなりますが、通常は3〜6か月をかけて徐々に元通りになります。
⚠️ 注意点

術後最も警戒すべきは「血腫(けっしゅ)」です。急激な血流の増加は傷口の出血に直結するため、術後1週間程度は長風呂、激しい運動、過度のお酒や辛いものの摂取は絶対に避けてください。万が一、片側だけ急激に不自然な腫れが生じた場合や、強い痛みが急増した場合は、直ちに執刀医に連絡することが合併症の早期発見につながります。

実際の診療では、術後のトラブルを未然に防ぐため、術後翌日や数日目の検診時の触診で血腫の兆候がないかを徹底して確認します。外来の場では「日常生活へはいつ頃戻れますか?」というご質問を数多くいただきますが、丁寧な創部ケアを実践し指示に従っていただくことで、臨床経験上、大半の患者さまが2週間後には腫れや内出血をメイクで隠せるようになり、非常に前向きに経過を過ごされるのを目の当たりにしています。

まとめ

ミッドフェイスリフトとネックリフトは、顔中央部のたるみ(目の下の凹み、ゴルゴ線)および首元の緩み(二重あご、広頸筋の縦じわ)を外科的なアプローチによって劇的に、かつ長期的に改善する素晴らしい若返り術です。解剖学的な深部組織への正確なアプローチ、すなわち骨膜下での丁寧な剥離やドリルホールを用いた確実な固定手法[1]、広頸筋の細密な縫縮処理などを行うことで、仕上がりの持続性と自然さは格段に向上します[2]。これらの治療は、単独の施術はもちろんのこと、脂肪注入や脂肪吸引といった他施術を組み合わせることでその若返り効果を最大化することが期待できます。しかしその一方で、高度なテクニックを求められる大がかりな手術であるため、自身の求める希望に合わせた「正確な適応判定」が成功への最初の関門となります。信頼できる専門医のカウンセリングを受け、リスクやダウンタイムを十分に理解したうえで、安全で満足度の高い一歩を踏み出すことをお勧めいたします。

よくある質問(FAQ)

手術後の腫れはどのくらいで引きますか?仕事は休むべきでしょうか?
大きな腫れや内出血は1〜2週間ほどで落ち着いてきます。ミッドフェイスリフトは目元の周囲に、ネックリフトは首周りに黄色い内出血斑が出ることがありますが、2週間後にはお化粧で十分にカバーできるレベルになるのが一般的です。お仕事の休みの目安としては、デスクワークであれば術後1週間、接客業などで周囲に目立たせたくない場合は10日〜2週間ほどの休暇を確保されるのが理想的です。
手術による傷跡は本当に目立たなくなりますか?
切開部位は目立たない部位を選んで慎重に設計されます。ミッドフェイスリフトは下まぶたの睫毛のキワや結膜の裏、あるいは側頭部の髪の中に隠れます。ネックリフトは耳の裏のシワやうなじの生え際、あご下の影になる部分(約3cm)を切開します。最初の数か月は傷跡が赤く、やや硬くなりますが、3〜6か月、長くて1年ほどで白くて平らな、ほとんど気にならない線状の傷へと落ち着いていきます。
糸リフト(スレッドリフト)とこれらの切開手術は何が違いますか?
最も大きな違いは「持続期間」と「アプローチ可能な深さ」です。糸リフトは、トゲのついた糸を挿入して一時的に組織を引き上げる施術で、1〜2年程度の持続が一般的です。一方、ミッドフェイスリフトやネックリフトは、たるんだ「余剰皮膚を切り取って破棄」するほか、筋肉(広頸筋)や深い脂肪層(骨膜下)を根本から剥離して元のあるべき位置へ移動して強固に固定するため、はるかに高いリフトアップ効果と、数年から10年近く持続する長期的な治療効果をもたらします。
この記事の監修
👨‍⚕️
新井智博
美容外科医
👨‍⚕️
林一樹
美容外科医