- ✓ 鼻血の多くは鼻の入り口付近からの出血で、乾燥や物理的刺激が主な原因です。
- ✓ 適切な応急処置は、座って前かがみになり、小鼻を強く押さえることです。
- ✓ 頻繁な鼻血や止まりにくい鼻血、他の症状を伴う場合は医療機関への受診を検討しましょう。
鼻血は、鼻の粘膜にある血管が損傷して出血する状態を指します。多くの場合、軽度で自然に止まりますが、中には基礎疾患が隠れていたり、適切な処置が必要なケースもあります。この記事では、鼻血の主な原因から正しい止め方、そして医療機関を受診すべきタイミングまで、専門家の視点から詳しく解説します。
日常的な鼻血の原因とは?

日常的な鼻血の多くは、鼻の入り口に近い部分からの出血であり、比較的軽度で自然に止まる傾向があります。実臨床では、特に冬場の乾燥時期やアレルギー性鼻炎の患者さんから「最近鼻血が出やすい」という相談を多く受けます。
鼻の粘膜の乾燥
鼻の粘膜は非常にデリケートであり、乾燥によって傷つきやすくなります。特に、空気が乾燥する季節や暖房の効いた室内では、鼻腔内の湿度が低下し、粘膜がひび割れやすくなるため、鼻血のリスクが高まります。乾燥した粘膜は、わずかな刺激でも血管が破れやすくなるため注意が必要です。
物理的な刺激
鼻をほじる行為、強く鼻をかむ行為、あるいは鼻をぶつけるなどの物理的な刺激は、鼻の粘膜の血管を傷つけ、鼻血の直接的な原因となります。特に、お子様の場合、無意識に鼻をほじることが多く、鼻血の頻度が高い傾向にあります。臨床の現場では、鼻血で受診されるお子様の約半数以上が、このような物理的刺激が原因であるケースをよく経験します。
アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎
アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎などの鼻の炎症性疾患は、鼻の粘膜を充血させ、脆弱にすることがあります。これらの疾患を持つ患者さんは、鼻のかゆみから鼻をこすったり、頻繁に鼻をかんだりするため、粘膜への物理的刺激が増え、鼻血が出やすくなります。また、炎症自体が血管の透過性を高め、出血しやすくする要因となることも報告されています[1]。
薬剤の影響
一部の薬剤、特に抗凝固薬(血液をサラサラにする薬)や抗血小板薬を服用している方は、血液が固まりにくくなるため、鼻血が出やすく、また止まりにくくなることがあります。これらの薬剤は、心臓病や脳梗塞などの治療・予防のために処方されることが多く、服用中の患者さんには、鼻血が出た際の適切な対処法を事前に指導することが重要です。実際の診療では、初診時に「抗凝固薬を飲んでいるが鼻血が止まらない」と相談される患者さんも少なくありません。
- キーゼルバッハ部位とは
- 鼻の入り口から約1cm奥にある、毛細血管が集中している部位です。鼻血の約90%はこの部位からの出血とされており、物理的な刺激を受けやすい特徴があります[4]。
注意が必要な鼻血・その他の症状とは?
ほとんどの鼻血は心配のないものですが、中には注意が必要なケースや、他の全身疾患のサインである場合もあります。特に、日常診療では、止血に時間がかかる鼻血や、繰り返す鼻血の患者さんに対しては、より詳細な問診と検査を行うようにしています。
止まりにくい鼻血や繰り返す鼻血
通常の鼻血は、適切な応急処置を行えば数分から15分程度で止まることがほとんどです[3]。しかし、20分以上止血しても出血が続く場合や、一度止まってもすぐに再発を繰り返す場合は、より深い部位からの出血や、血液凝固機能に問題がある可能性が考えられます。また、鼻血の量が多い場合も注意が必要です。臨床の現場では、特に高齢の患者さんで、高血圧や抗凝固薬の服用が背景にあるケースで、止まりにくい鼻血をよく経験します。
鼻血以外の症状を伴う場合
鼻血だけでなく、以下のような全身症状を伴う場合は、単なる鼻の局所的な問題ではない可能性があります。このような症状が見られる場合は、速やかに医療機関を受診することが重要です。
- 全身のあざや点状出血: 血液凝固異常や血小板減少症などの血液疾患の可能性があります。
- 歯茎からの出血や月経量の増加: 同様に血液凝固異常が疑われます。
- 発熱、倦怠感、体重減少: 感染症や悪性腫瘍など、より重篤な疾患の可能性も考慮されます。
- 高血圧: 重度の高血圧は血管に負担をかけ、鼻血のリスクを高めるだけでなく、止まりにくくする要因にもなります。
後方からの鼻血(後鼻出血)
鼻血のほとんどは鼻の入り口付近(キーゼルバッハ部位)からの出血ですが、稀に鼻の奥、喉に近い部分からの出血(後鼻出血)が起こることがあります。後鼻出血は、出血量が多く、自然に止まりにくい傾向があり、喉に血液が流れ込むため、吐き気や窒息感を引き起こすこともあります。このタイプの鼻血は、高齢者に多く見られ、高血圧や動脈硬化が背景にあることが多いです。診察の中で、患者さんが「喉に血が流れてくる」「血を吐いてしまう」と訴える場合は、後鼻出血を強く疑い、より専門的な処置が必要となることを実感しています。
| 項目 | 前方からの鼻血(キーゼルバッハ部位) | 後方からの鼻血(後鼻出血) |
|---|---|---|
| 出血部位 | 鼻の入り口付近 | 鼻の奥、喉に近い部分 |
| 出血量 | 比較的少量 | 多量になることが多い |
| 止血のしやすさ | 比較的容易 | 困難なことが多い |
| 主な原因 | 物理的刺激、乾燥 | 高血圧、動脈硬化、基礎疾患 |
| 受診の必要性 | 多くは不要、繰り返す場合は検討 | 速やかな医療機関受診を推奨 |
鼻血の応急処置・予防法・受診先は?

鼻血が出た際の適切な応急処置を知っておくことは、出血を速やかに止めるために非常に重要です。また、日頃からの予防も鼻血の頻度を減らす上で役立ちます。治療を始めて数ヶ月ほどで「鼻血の回数が減った」とおっしゃる方が多いですが、これは適切な予防策と、必要に応じた治療が奏功した結果だと考えられます。
鼻血の正しい止め方(応急処置)
鼻血が出た際は、以下の手順で応急処置を行いましょう。これは、米国耳鼻咽喉科・頭頸部外科学会の臨床診療ガイドラインでも推奨されている方法です[1]。
- 落ち着く: パニックになると血圧が上がり、出血が悪化する可能性があります。まずは落ち着きましょう。
- 座って前かがみになる: 椅子などに座り、頭を少し前かがみにします。これにより、血液が喉に流れ込むのを防ぎ、誤嚥(ごえん)のリスクを減らします。仰向けになったり、頭を後ろに傾けたりすると、血液を飲み込んでしまい、吐き気を催すことがあります。
- 小鼻を強く押さえる: 親指と人差し指で、鼻の柔らかい部分(小鼻)をしっかりとつまみ、鼻中隔(びちゅうかく:左右の鼻の穴を隔てる壁)に圧迫を加えます。このとき、鼻骨(硬い部分)ではなく、柔らかい部分をしっかり押さえるのがポイントです。
- 10〜15分間圧迫を続ける: 途中で指を離さず、最低でも10分から15分間、継続して圧迫します。この間、口で呼吸してください。
- 冷やす(任意): 鼻の付け根や首筋を冷たいタオルなどで冷やすと、血管が収縮し、止血効果が高まることがあります。
15分以上圧迫しても出血が止まらない場合は、再度10分程度圧迫を試み、それでも止まらない場合は医療機関を受診してください[2]。
鼻血の予防法
鼻血の頻度を減らすためには、日頃からの予防が重要です。
- 鼻の乾燥対策: 加湿器を使用したり、鼻腔保湿スプレー(生理食塩水など)を使ったりして、鼻の粘膜の乾燥を防ぎましょう。
- 鼻をほじる癖をやめる: 特に小さなお子様には、爪を短く切るなどの対策も有効です。
- 優しく鼻をかむ: 片方ずつ、ゆっくりと鼻をかむように心がけましょう。
- アレルギー性鼻炎の治療: アレルギー症状がある場合は、適切な治療を行うことで、鼻の粘膜の炎症を抑え、鼻血のリスクを減らすことができます。
- 高血圧の管理: 高血圧は鼻血の原因となるだけでなく、止まりにくくする要因でもあります。定期的な血圧測定と、必要に応じた治療で適切に管理しましょう。
医療機関を受診するタイミングと受診先
以下のような場合は、耳鼻咽喉科などの医療機関を受診することをおすすめします。
- 応急処置をしても鼻血が止まらない(20〜30分以上)
- 鼻血の量が非常に多い、または頻繁に繰り返す
- 全身のあざ、歯茎からの出血、発熱など、他の症状を伴う
- 抗凝固薬を服用している方が鼻血を出した場合
- 鼻を強くぶつけた後に鼻血が出た場合
耳鼻咽喉科では、鼻腔内の詳細な観察や、必要に応じて止血処置(電気凝固、薬剤塗布、ガーゼ充填など)を行います。また、基礎疾患が疑われる場合は、血液検査などの追加検査や、内科など他科への連携も検討されます。実際の診療では、止血が難しい患者さんに対しては、鼻腔内に止血剤を含んだガーゼを挿入したり、電気凝固で出血部位を焼灼したりする処置を行うことがあります。これらの処置は、患者さんの負担を最小限に抑えつつ、確実な止血を目指すものです。
症状の掛け合わせ(鼻血・鼻の異常+〇〇)で考えられる疾患は?
鼻血や鼻の異常は、単独で発生することも多いですが、他の症状と組み合わさることで、特定の疾患を示唆する重要な手がかりとなることがあります。実際の診療では、患者さんの訴える複数の症状を総合的に判断し、適切な診断に繋げることが重要なポイントになります。
鼻血+鼻づまり・鼻水・くしゃみ
これらの症状の組み合わせは、アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎でよく見られます。鼻の粘膜が炎症を起こし、充血しているため、鼻をかんだり、こすったりする刺激で鼻血が出やすくなります。特に、アレルギー性鼻炎では、鼻のかゆみから鼻を頻繁に触ることで、キーゼルバッハ部位が傷つきやすくなります。副鼻腔炎の場合、炎症による粘膜の脆弱化に加え、膿性鼻汁(のうせいびじゅう:膿のような鼻水)が粘膜を刺激し、出血を誘発することもあります。
鼻血+頭痛・発熱・顔面痛
これらの症状が同時に現れる場合、急性副鼻腔炎の可能性を考慮する必要があります。副鼻腔炎が重症化すると、副鼻腔内に貯留した膿が炎症を引き起こし、頭痛や顔面痛、発熱を伴うことがあります。鼻血は、炎症によって脆弱になった粘膜から生じることがあります。また、稀に、鼻の奥にできる腫瘍(鼻腔・副鼻腔腫瘍)が原因で、鼻血とともに頭痛や顔面痛、鼻づまりなどの症状が出現することもあります。特に片側性の鼻血や鼻づまりが続く場合は、専門医による詳細な検査が推奨されます。
鼻血+全身のあざ・出血傾向
鼻血だけでなく、皮膚に原因不明のあざができやすい、歯茎からの出血、月経量の異常な増加など、全身的な出血傾向が見られる場合は、血液疾患の可能性を疑う必要があります。具体的には、血小板減少症(血を止める細胞が少ない)、血友病などの凝固因子異常症、白血病などが挙げられます。これらの疾患では、血液が固まる機能が低下しているため、小さな刺激でも出血しやすくなり、止まりにくくなります。このような症状を訴える患者さんには、血液検査を行い、専門医への紹介を検討します。
鼻血+高血圧
高血圧は、鼻血の直接的な原因となるだけでなく、出血を止まりにくくする重要な要因です。特に高齢者において、高血圧による血管の脆弱化や動脈硬化が進行している場合、鼻の奥からの出血(後鼻出血)のリスクが高まります。高血圧の患者さんが鼻血を繰り返す場合、血圧コントロールの再評価が必要となることがあります。また、鼻血が止まらないことで血圧がさらに上昇し、悪循環に陥ることもあるため、適切な降圧管理が重要です。
鼻血が頻繁に出る、止まりにくい、または他の症状を伴う場合は、自己判断せずに必ず医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けてください。特に、抗凝固薬を服用中の方は、鼻血が出た際に医師に相談することが非常に重要です。
まとめ

鼻血は多くの人が経験する一般的な症状ですが、その原因は乾燥や物理的刺激から、アレルギー、薬剤の影響、さらには全身疾患まで多岐にわたります。ほとんどの鼻血はキーゼルバッハ部位からの出血であり、適切な応急処置で止血が可能ですが、止まりにくい鼻血や、全身症状を伴う場合は注意が必要です。特に、後鼻出血は多量出血につながる可能性があり、速やかな医療機関受診が推奨されます。日頃からの鼻のケアや、基礎疾患の適切な管理が、鼻血の予防には不可欠です。ご自身の鼻血の状況を正しく理解し、必要に応じて専門医の診察を受けることで、安心して日常生活を送ることができるでしょう。
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- David E Tunkel, Samantha Anne, Spencer C Payne et al.. Clinical Practice Guideline: Nosebleed (Epistaxis).. Otolaryngology–head and neck surgery : official journal of American Academy of Otolaryngology-Head and Neck Surgery. 2020. PMID: 31910111. DOI: 10.1177/0194599819890327
- Bastien A Valencia-Sanchez, Angela M Donaldson. Epistaxis.. The Medical clinics of North America. 2025. PMID: 41206200. DOI: 10.1016/j.mcna.2025.05.003
- Linda Diamond. Managing epistaxis.. JAAPA : official journal of the American Academy of Physician Assistants. 2016. PMID: 25303882. DOI: 10.1097/01.JAA.0000455643.58683.26
- Paul M Middleton. Epistaxis.. Emergency medicine Australasia : EMA. 2005. PMID: 15537406. DOI: 10.1111/j.1742-6723.2004.00646.x

