- ✓ PDRN(ポリデオキシリボヌクレオチド)は、サーモン由来のDNA断片から抽出される成分です。
- ✓ 皮膚の再生、創傷治癒促進、抗炎症作用など、多様な効果が期待されます。
- ✓ 注入治療として、肌の若返りや薄毛治療に応用されています。
PDRN(ポリデオキシリボヌクレオチド)注射、通称「サーモン注射」は、近年美容医療や再生医療の分野で注目を集めている治療法です。この治療は、皮膚の再生能力を高め、肌の若返りや様々な肌トラブルの改善に寄与するとされています。本記事では、PDRNの基本的なメカニズムから期待される効果、治療の注意点まで、専門医の視点から詳しく解説します。
PDRN(ポリデオキシリボヌクレオチド)とは?

PDRN(ポリデオキシリボヌクレオチド)は、サケ科魚類(主にサーモン)の精子や精巣から抽出されるDNAを、特定の大きさに分解して精製した物質です[1]。このDNA断片は、人間のDNAと非常に類似した構造を持つため、生体適合性が高いとされています。PDRNは、細胞の増殖や組織の再生を促進する作用を持つことが研究で示されています[2]。
日常診療では、患者さんから「サーモンの成分と聞いて驚いたけれど、具体的に何が良いの?」と質問されることが少なくありません。PDRNは、単なる栄養補給ではなく、細胞レベルで組織の修復を促すシグナル分子として機能すると理解していただくと良いでしょう。
- PDRN(ポリデオキシリボヌクレオチド)
- サケ科魚類由来のDNAを特定の大きさに分解・精製した成分。細胞の増殖や組織の再生を促進する作用を持つとされ、美容医療や再生医療に応用されています。
- サーモン注射
- PDRNを主成分とする製剤を皮膚に直接注入する治療法の通称。肌の再生、弾力性向上、小じわ改善、薄毛治療などに用いられます。
PDRNの作用メカニズムとは?
PDRNの主な作用メカニズムは、以下の点が挙げられます。
- 細胞増殖の促進: PDRNは、アデノシンA2A受容体を活性化させることで、線維芽細胞や血管内皮細胞などの増殖を促進します。これにより、コラーゲンやエラスチンといった肌の弾力性を保つ成分の生成が促されます。
- 組織修復作用: 損傷した組織の修復過程をサポートし、創傷治癒を早める効果が期待されます。これは、PDRNがDNAの合成に必要なヌクレオチドを供給し、細胞の代謝活動を活性化させるためと考えられています[3]。
- 抗炎症作用: 炎症性サイトカインの産生を抑制し、炎症反応を和らげる効果も報告されています。これにより、肌の赤みや刺激を軽減し、落ち着いた状態に導くことが期待されます。
- 血管新生の促進: 新しい血管の形成を促すことで、組織への酸素や栄養供給を改善し、再生能力を高めます。
PDRN(サーモン注射)で期待できる効果とは?
PDRN注射は、その再生促進作用により、美容医療分野で様々な効果が期待されています。特に肌の若返りや特定の肌トラブルの改善に有効性が示唆されています。
実臨床では、PDRN注射を希望される患者さんの多くが「肌のハリやツヤがなくなってきた」「小じわが気になる」といった加齢による変化を訴えて受診されます。治療開始から数週間で肌質の変化を実感される方が多い印象です。
| 期待される効果 | 詳細 |
|---|---|
| 肌の弾力・ハリの改善 | コラーゲン・エラスチン生成促進による肌の引き締め効果 |
| 小じわ・ちりめんじわの軽減 | 真皮層の再生と水分保持能力向上による改善 |
| 肌のトーンアップ・ツヤ感向上 | 血行促進と細胞活性化による肌全体の輝き |
| ニキビ跡・瘢痕の改善 | 組織修復作用による肌の平滑化 |
| 薄毛・抜け毛の改善 | 頭皮の血行促進と毛母細胞の活性化 |
| 毛穴の引き締め | 肌の弾力性向上と皮脂バランスの調整 |
肌の若返り効果
PDRNは、真皮層の線維芽細胞を活性化し、コラーゲンやエラスチンの生成を促進します。これにより、肌の弾力性やハリが向上し、小じわやちりめんじわの改善が期待できます。また、肌の水分保持能力も高まるため、乾燥による小じわの軽減にもつながります。肌のターンオーバー(新陳代謝)が正常化されることで、くすみが改善され、全体的にトーンアップした明るい印象の肌を目指せます。
創傷治癒・組織修復効果
PDRNの持つ組織修復作用は、ニキビ跡や手術後の傷跡、レーザー治療後の皮膚の回復などにも応用されます。細胞の再生を促し、炎症を抑えることで、より早く、よりきれいに傷を治す手助けをします。特に、慢性的な創傷や難治性の潰瘍治療において、PDRNの有効性が示唆されており、医療現場での応用も進められています。
薄毛・抜け毛への効果は?
PDRNは、頭皮の血行を促進し、毛母細胞の活性化を促すことで、薄毛や抜け毛の改善にも期待が寄せられています。AGA(男性型脱毛症)やFAGA(女性型脱毛症)の治療補助として、メソセラピーのように頭皮に直接注入されることがあります。毛周期を正常化し、健康な髪の成長をサポートすることで、髪の密度や太さの改善が期待できます。筆者の臨床経験では、治療開始から3ヶ月ほどで抜け毛の減少や産毛の増加を実感される方が多いです。
PDRN注射の施術方法と注意点

PDRN注射は、一般的にメソセラピーと呼ばれる手法で、PDRN製剤を直接皮膚の真皮層や頭皮に注入します。施術にはいくつかの方法があり、患者さんの状態や希望に応じて選択されます。
施術の流れと痛みについて
- カウンセリング: 医師が患者さんの肌の状態や悩みを詳しく伺い、PDRN注射が適しているか、期待できる効果やリスクについて説明します。
- 麻酔: 痛みを軽減するため、施術部位に麻酔クリームを塗布します。
- 注入: 極細の針や専用の注入器(水光注射など)を用いて、PDRN製剤を皮膚の浅い層に細かく注入していきます。
- アフターケア: 施術後は、冷却や鎮静パックなどを行い、ダウンタイムを軽減します。
注入時の痛みは、麻酔クリームの使用や注入器の種類、個人の痛みの感じ方によって異なりますが、一般的にはチクチクとした軽い痛みを感じることが多いです。日常診療では「思ったよりも痛くなかった」「麻酔のおかげで我慢できる程度だった」とおっしゃる方が多いですが、痛みに敏感な方にはより丁寧な麻酔や、笑気麻酔などの併用を検討することもあります。
ダウンタイムと副作用は?
PDRN注射のダウンタイムは比較的短く、数日から1週間程度で落ち着くことが多いです。主な症状としては、以下のものが挙げられます。
- 赤み・腫れ: 注入部位に一時的な赤みや腫れが生じることがあります。
- 内出血: 針の刺激により、小さな内出血が生じることがありますが、数日で吸収されます。
- 凸凹: 注入直後は、薬剤が皮膚内に留まることで、一時的に小さな凸凹が生じることがありますが、通常数時間から数日でなじみます。
重篤な副作用は稀ですが、アレルギー反応や感染症のリスクもゼロではありません。特に、サーモン由来の成分を使用するため、魚介類アレルギーのある方は事前に医師に申告することが重要です。臨床現場では、施術前の問診でアレルギー歴を詳細に確認し、安全性を最優先しています。
PDRN注射は、体質や肌の状態によって効果や反応に個人差があります。また、妊娠中・授乳中の方、特定の疾患をお持ちの方、魚介類アレルギーのある方は施術を受けられない場合がありますので、必ず事前に医師と十分に相談してください。
PDRN注射の治療頻度と持続期間
PDRN注射の効果を最大限に引き出すためには、適切な治療頻度と継続が重要です。効果の持続期間も、個人の肌質や生活習慣によって異なります。
推奨される治療間隔は?
一般的に、PDRN注射は複数回の施術を重ねることで、より高い効果が期待できます。推奨される治療間隔は、通常2~4週間に1回程度で、これを3~5回繰り返すのが標準的なプロトコルです。その後は、効果の維持のために数ヶ月に1回程度のメンテナンス治療を行うことが推奨されます。
日々の診療では、「何回くらい受ければ効果が出ますか?」と質問されることが多いです。筆者の臨床経験では、多くの方が2〜3回目の施術後から肌質の変化を実感し始め、薄毛治療では3〜4ヶ月ほどで効果を実感されるケースが多いです。しかし、効果の現れ方には個人差が大きいため、医師と相談しながら最適な治療計画を立てることが大切です。
効果の持続期間はどのくらい?
PDRN注射による効果の持続期間は、個人差がありますが、一般的には数ヶ月から半年程度とされています。これは、PDRNが肌の自己再生能力を高めることで効果を発揮するため、その効果が持続する期間も肌のターンオーバーや加齢、生活習慣などの影響を受けるためです。効果を維持するためには、定期的なメンテナンス治療が推奨されます。
PDRN注射と他の美容治療との組み合わせ

PDRN注射は、単独でも効果が期待できますが、他の美容治療と組み合わせることで、相乗効果を発揮し、より高い満足度を得られる場合があります。患者さんの肌の状態や目指すゴールに合わせて、適切な組み合わせを検討することが重要です。
ヒアルロン酸注射との違いと併用
PDRN注射とヒアルロン酸注射は、どちらも肌の若返りに用いられますが、その作用メカニズムは異なります。
- PDRN注射: 肌細胞そのものの再生能力を高め、コラーゲンやエラスチンの生成を促進することで、肌の根本的な若返りを目指します。
- ヒアルロン酸注射: 主にボリュームアップやシワの溝を埋めることで、即時的な改善効果をもたらします。
両者を併用することで、PDRNで肌の土台を整えつつ、ヒアルロン酸で気になるシワや凹みをピンポイントで改善するといったアプローチが可能です。日常診療では、肌全体のハリ不足にはPDRNを、ほうれい線やマリオネットラインといった深いシワにはヒアルロン酸を、と使い分けるケースをよく経験します。
ダーマペンやレーザー治療との組み合わせ
ダーマペンや一部のレーザー治療は、肌に微細な穴を開けたり、熱刺激を与えたりすることで、肌の自己治癒力を引き出し、コラーゲン生成を促す治療です。これらの治療とPDRN注射を組み合わせることで、相乗効果が期待できます。
- ダーマペン+PDRN: ダーマペンで開けた微細な穴からPDRNを導入することで、PDRNの浸透率を高め、より効率的に肌再生を促進します。ニキビ跡や毛穴の開き、肌質の改善に特に有効です。
- レーザー治療+PDRN: レーザー治療後の肌は、再生能力が高まっている状態です。このタイミングでPDRNを導入することで、回復を早め、治療効果をさらに高めることが期待できます。
実際の診療では、ダーマペンとPDRNの組み合わせは非常に人気があり、特にクレーター状のニキビ跡でお悩みの患者さんから「肌の凹凸がなめらかになってきた」という声をよく聞きます。ただし、肌への負担も考慮し、治療間隔や組み合わせ方については医師の判断が不可欠です。
まとめ
PDRN(ポリデオキシリボヌクレオチド)注射、通称サーモン注射は、サーモン由来のDNA断片を主成分とし、細胞の再生促進、創傷治癒、抗炎症作用など多様な効果が期待される治療法です。肌の弾力・ハリの改善、小じわの軽減、ニキビ跡の改善、薄毛治療など、幅広い美容医療分野に応用されています。施術はメソセラピーによって行われ、ダウンタイムは比較的短いですが、赤みや腫れ、内出血などの一時的な症状が生じることがあります。効果を最大限に引き出すためには、複数回の施術と定期的なメンテナンスが推奨され、他の美容治療との併用も有効です。治療を検討する際は、自身の肌の状態やアレルギーの有無を医師に伝え、適切な治療計画を立てることが重要です。
よくある質問(FAQ)
- Jong Hun Lee, Jin Woo Han, Jin Hwan Byun et al.. Comparison of wound healing effects between Oncorhynchus keta-derived polydeoxyribonucleotide (PDRN) and Oncorhynchus mykiss-derived PDRN.. Archives of craniofacial surgery. 2020. PMID: 29609429. DOI: 10.7181/acfs.2018.19.1.20
- Joon-Yeop Yi, Sanghwa Park, Minyoung Kim et al.. Emerging wound-healing injectable polydeoxyribonucleotide: potential as a prohibited doping method and its simple detection via CRISPR/Cas12a system.. International journal of biological macromolecules. 2025. PMID: 40216108. DOI: 10.1016/j.ijbiomac.2025.142999
- T N Rysina. [Contents of soluble polydesoxyribonucleotides and DNP in tissues of irradiated rats during administration of high-polymer DNA].. Radiobiologiia. 1975. PMID: 4438614
- ディフェリン(アダパレン)添付文書(JAPIC)
- ベピオ(過酸化ベンゾイル)添付文書(JAPIC)
- ダラシン(クリンダマイシン)添付文書(JAPIC)

