Gastroenterology / Gastritis

胃炎の種類・症状・検査と治療の考え方

胃が痛いときと、検査で胃炎を指摘されたときでは、確認したいことが異なります。症状・原因・胃の粘膜の状態を分けて考えましょう。

最終更新 2026.09.25監修日 2026.09.24
胃痛と胃炎は同じ意味ではない
治療の基本原因に合わせる
萎縮の指摘がんの診断とは別
結論から

胃炎は胃の内側の粘膜に炎症が起こる病気で、ピロリ菌や自己免疫など原因により対応が異なります。胃痛だけで胃炎とは診断できず、症状がなくても検査で変化が見つかることがあります。出血や激しい痛みを先に確認し、その後に検査結果と感染歴、薬の情報を整理して、治療と経過観察を相談します。

知りたいことから選ぶ急性・萎縮性・自己免疫性胃炎の詳しい解説へ
01

吐血・黒い便・激しい痛みは、胃炎と思って待たない

今すぐ119番へ

吐血、コーヒーかす状の嘔吐、突然の激しい腹痛。胸の強い痛み、息苦しさ、冷汗、意識が遠のくときも救急対応です。自分で運転しません。

当日中に連絡・受診

原因不明の黒くタール状の便、繰り返す嘔吐、水分が取れない場合。黒い便に冷汗・ふらつきなどを伴う場合は119番へ連絡します。

症状・検査結果を予約相談

胃の不快感が続く・繰り返す場合や、健診で胃炎を指摘された場合は消化器内科へ相談します。体重減少、貧血、食事量の低下があれば、予約日を待たず受診時期を相談してください。

胃の表面の傷から出血することがありますが、吐血や黒い便の原因は胃炎に限りません。胃潰瘍などの病気も含めて診察が必要です。突然の強い腹痛や胸の痛みを、以前に言われた胃炎のせいと決めないでください。症状が急に変わった場合は、前回の診断があっても改めて対応します。[1][8]

受診先に電話するときは、いつ始まったか、吐いたものや便の色、水分が取れるか、冷汗やふらつきがあるかを伝えます。お薬手帳が手元にあれば持参しますが、記録や荷物をそろえるために救急要請を遅らせないでください。迷う場合も重い症状があるなら119番へ連絡します。

02

症状の名前と、胃粘膜の検査結果を分けて確認する

このガイドは主に成人の胃炎を扱います。胃炎は粘膜の炎症を指し、胃痛・胃もたれ・吐き気は患者さんが感じる症状の名前です。炎症の強さと症状の強さは必ずしも一致せず、症状がない胃炎もあります。内視鏡での見え方や、必要な場合の生検(小さな組織を採って顕微鏡で調べる検査)を含めて評価します。[1][2]

胃の模型を見ながら、胃炎の検査結果について患者と医師が相談する生成イメージ
胃の粘膜について模型を使って説明する診察場面を描いた生成イメージです。実在の監修医・患者、検査結果や特定の製品を示すものではありません。

薬やアルコールなどで胃粘膜が傷む一方、炎症が目立たない状態は、厳密には胃粘膜障害(gastropathy)と区別されます。診療ではこうした状態を含めて胃炎と説明されることもあります。病名だけでなく、「何が見つかり、原因は何と考えられるか」を聞くと、処方の目的を理解しやすくなります。[3]

胃炎・胃粘膜障害
炎症や粘膜の傷みを調べます。原因に合う対応と、必要な経過観察を考えます。
胃潰瘍
粘膜がより深く傷ついた病変です。胃炎という説明だけで、潰瘍や出血がないとは判断できません。
症状はあるが原因が見つからない
検査や経過を踏まえて、機能性ディスペプシアなど別の状態を検討することがあります。

痛みが食前か食後か、食事で変わるかは大切な情報ですが、それだけで病名は確定しません。胃カメラで大きな異常がないと言われても、つらさが想像上のものという意味ではありません。続く症状の整理は機能性ディスペプシアの検査と治療、傷を指摘された方は胃潰瘍・十二指腸潰瘍の治療も参考にしてください。

03

急性・萎縮性・自己免疫性は、同じ軸の分類ではない

「急性」は短い経過、「萎縮性」は胃の腺が減る粘膜の変化、「自己免疫性」は自分の胃に対する免疫反応という原因を表します。三つから必ず一つを選ぶ分類ではなく、自己免疫性胃炎に萎縮を伴うこともあります。呼び方の違いを知ると、別の病名を言われたときも整理しやすくなります。[6]

急に痛くなった

まず緊急性を確認

対象
突然の胃痛や吐き気がある方
根拠
薬・飲酒・出血などを調べる。[1]
注意
急な痛みだけで胃炎とは決めない。
急な胃痛の受診目安を読む
萎縮を指摘された

感染歴と今後の検査を確認

対象
胃カメラで胃粘膜の変化を指摘された方
根拠
感染検査と除菌を検討する。[5]
注意
痛みがなくても結果の確認は必要。
萎縮性胃炎の検査後の対応を読む
自己免疫が疑われる

胃の所見と採血を組み合わせる

対象
胃炎と貧血、自己抗体の関連を調べる方
根拠
国内の診断基準で総合評価する。[6]
注意
自己抗体の結果だけで確定しない。
自己免疫性胃炎の診断を読む

長く続く胃炎では、まずピロリ菌感染の有無や除菌歴が重要になります。萎縮があるという結果だけでは、菌が現在もいるのか、過去の感染後なのかは分かりません。自己免疫性胃炎が疑われる場合は、胃の所見と自己抗体などの検査を組み合わせます。[5][6]

急な症状がある方は受診の緊急度から、健診の結果を受け取った方は指摘された項目から読んでください。検査用紙に複数の所見が並んでいる場合は、一つずつ別の病気が増えたとは限りません。説明を受けた言葉をそのままメモして、同じ検査で確認されたことかを医師に尋ねましょう。

04

胃カメラ・感染検査・採血は目的が異なる

  1. 今の症状と薬を伝える

    痛む場所、経過、食事との関係、処方薬・市販薬、飲酒、除菌歴を確認します。

  2. 必要な検査を選ぶ

    内視鏡は粘膜の状態、生検は組織の変化、感染検査はピロリ菌、採血は貧血などを調べるために使います。

  3. 結果をそろえて説明を受ける

    胃カメラの当日の説明と、生検・感染検査の後日の結果を分けて確認します。

  4. 治療と次回予定を決める

    何の治療か、いつ薬を見直すか、次の検査は何のためかを共有します。

すべての胃痛に同じ検査一式が必要なわけではありません。症状、年齢、病歴、診察所見などを基に検査を選びます。胃カメラで見た状態と採血の結果は置き換えられず、貧血があれば胃以外からの出血などを調べる場合もあります。検査を追加するときは、その検査で何を確かめたいか説明を受けましょう。[2]

ピロリ菌検査は胃薬や抗菌薬、過去の除菌などの影響を考えて選びます。「陰性」という言葉だけではなく、検査名と時期を記録してください。検査のための薬の調整は医師の指示で行い、自己判断で中止しません。[5]

診察室から

消化器内科で胃炎の相談を整理するときは、まず「痛みが気になる」のか「健診の所見が心配」なのかを分けて考えます。症状の経過と検査用紙を並べると、今ある症状への対応と、将来に向けた検査の予定を別々に確認できます。この整理だけで診断を確定することはできず、診察と検査結果の照合が必要です。

05

胃薬だけでなく、原因への対応を考える

一時的な粘膜障害では、原因となる薬や刺激物との関係を見直し、必要に応じて胃酸を抑える薬などを使います。薬によって適応や飲み合わせが異なり、症状が似ていても同じ薬が合うとは限りません。処方の目的と、いつまで飲んで経過をみるかを確認します。[3]

大切な処方薬を自分で止めない痛み止めなどが関係していそうでも、処方の必要性を医師と確認します。心臓や脳の病気に対するアスピリンなどは、自己中止せず処方元へ相談してください。出血を疑う症状があるときは、薬の電話相談だけで待たず救急対応を優先します。

現在のピロリ菌感染が確認されれば、原因への対応として除菌を検討します。薬を飲み終えただけで成功とせず、適切な時期の判定まで行います。具体的な治療はピロリ菌の除菌治療と服薬中の注意で確認できます。[5]

2025年の系統的レビューでは、除菌による胃がん発生の減少が複数の研究で支持されています。ただし、対象や胃の状態によって利益は異なり、全員の危険がなくなるという意味ではありません。症状が軽くなること、菌がいなくなること、今後の胃の管理は別に考えます。[7]

自己免疫性胃炎は、ピロリ菌の除菌だけで説明できる病気ではありません。原因の確認と、貧血や栄養素不足などへの対応が必要なことがあります。萎縮や自己免疫という言葉を、全員が胃酸を抑える薬を長く飲む理由にしないでください。[6][3]

06

食事だけで治そうとせず、次に確認することを残す

多くの胃炎で、特定の食品が主な原因になるとは限りません。食べてつらくなるものを調整することと、胃炎の原因を治療することは別です。極端な制限で栄養が偏らないよう、食べられる量や体重の変化も相談しましょう。多量の飲酒は粘膜を傷める要因になるため、症状がある間の飲酒は避けて相談します。[4]

診察に持参
お薬手帳、市販薬の箱や写真、胃カメラ・生検・ピロリ菌の結果。除菌した方は成功判定の記録も。
その場で確認
胃炎の種類と原因、症状への薬、追加検査、結果説明日、悪化時の連絡先。
費用を確認
診療と健診の違い、胃カメラ・生検・採血・感染検査の内訳、保険の対象かどうかを予約先へ確認。

保険で行う検査・治療と、症状のない方が希望して受ける健診は扱いが異なります。また、同じ名前の胃炎でも、必要な検査の種類や回数は変わります。費用だけで検査を選ぶのではなく、「今の状態で必要な検査」と「希望に応じて追加する検査」を分けて説明を受けてください。

次回までに薬がなくなる、検査の準備が難しい、引っ越しで通院先が変わるといった事情も早めに伝えましょう。検査結果を紙や電子データで残し、症状が落ち着いているときも結果説明を受ける予定は取り消さないことが、確認漏れを防ぐ助けになります。

07

よくある質問

どの診療科を予約すればよいですか?

胃の症状や胃カメラの所見は、消化器内科またはかかりつけの内科へ相談できます。急な激痛や吐血などは予約外来ではなく救急対応を優先してください。

検査用紙に複数の胃炎の名前があります。別々の病気ですか?

経過・原因・粘膜の変化など、違う観点の言葉が並んでいる場合があります。用紙を持参し、それぞれが何を示すか説明を受けてください。

以前の胃カメラ画像も必要ですか?

持っていれば結果用紙や生検の報告と一緒に共有してください。記録が手元になくても受診はできます。緊急症状があるときは資料をそろえるために受診を遅らせません。

胃炎と言われた家族と同じ薬を飲めますか?

同じ病名でも原因、併用薬、持病によって処方は異なります。家族の薬を使わず、本人の症状と薬の情報を医師や薬剤師へ伝えて相談してください。

08

参考文献