【多汗・冷えの原因と改善】|医師が解説

多汗 冷え 原因 改善
多汗・冷えの原因と改善|医師が解説
最終更新日: 2026-05-12
📋 この記事のポイント
  • ✓ 多汗と冷えは、自律神経の乱れや基礎疾患が原因となることがあります。
  • ✓ 日常生活での対処法や市販薬の活用、必要に応じた医療機関への受診が重要です。
  • ✓ 症状が複合的に現れる場合は、背景に別の疾患が隠れている可能性も考慮し、専門医に相談しましょう。
※ 本記事は医療に関する情報提供を目的としています。個別の症状については、かかりつけの医療機関にご相談ください。

多汗と冷えは、多くの人が経験する身体の不調ですが、その原因は多岐にわたります。単なる体質だと諦めている方もいるかもしれませんが、背景には自律神経の乱れや特定の病気が隠れていることも少なくありません。この記事では、専門医としての知見に基づき、多汗と冷えのそれぞれの原因から、具体的な対処法、市販薬の選び方、そして医療機関を受診すべき目安までを詳しく解説します。

異常な汗(多汗)の原因とは?

多汗症の原因となる自律神経の乱れと精神的ストレスの関係性を示す概念図
多汗症を引き起こす主な原因

異常な汗、いわゆる多汗症とは、体温調節に必要な量を超えて、過剰に汗をかく状態を指します。多汗症は、全身にわたって汗をかく「全身性多汗症」と、手のひら、足の裏、わき、顔など特定の部位に汗をかく「局所性多汗症」に大別されます。

多汗症の主な原因

多汗症の原因は、大きく分けて「原発性」と「続発性」の二つがあります。

原発性多汗症
特定の病気や薬剤が原因ではない多汗症で、発症メカニズムは完全には解明されていませんが、交感神経の過活動が関与していると考えられています。思春期頃に発症することが多く、精神的な緊張やストレスによって症状が悪化しやすい特徴があります。手のひらの多汗症に対してボツリヌス毒素注射を用いる際、冷却と局所麻酔クリームを併用することで痛みを軽減できることが報告されています[1]
続発性多汗症
何らかの基礎疾患や薬剤の副作用として多汗が生じる場合を指します。内分泌疾患(甲状腺機能亢進症、褐色細胞腫、糖尿病など)や神経疾患、感染症などが原因となることがあります[2]。また、特定の薬剤(抗うつ薬、非ステロイド性抗炎症薬など)の服用によって多汗が誘発されることもあります。

多汗症の具体的な症状と臨床経験

多汗症の症状は、日常生活に大きな影響を及ぼすことがあります。手のひらの多汗症では、書類が濡れてしまう、握手ができない、スマートフォンの操作がしにくいといった困りごとをよく耳にします。足の裏の多汗症では、靴の中が蒸れて臭いが気になる、水虫になりやすいといった訴えが多いです。わきの多汗症では、衣類の汗染みが目立つため、着る服に制限があるという声も聞かれます。

実臨床では、「人前で緊張すると手のひらから汗が止まらなくなり、仕事に支障が出ている」と相談される患者さんが多く見られます。特に若い世代では、学業や社会生活に深刻な影響を及ぼすケースも少なくありません。問診では、いつから、どの部位に、どのような状況で汗をかくことが多いのか、日常生活で困っていることは何かを詳細に確認し、原発性か続発性かを鑑別するための情報収集を重視しています。

多汗症と関連する疾患や状態

多汗症は、単独で現れるだけでなく、他の症状や疾患と関連して現れることもあります。例えば、冷たい刺激によって多量の汗をかく「寒冷誘発性多汗症」という珍しいタイプも報告されており、過剰なIgE抗体と関連する可能性も示唆されています[4]。また、精神的なストレスや不安、パニック障害などの精神疾患も多汗症を悪化させる要因となり得ます。そのため、多汗症の診療では、身体的な側面だけでなく、患者さんの精神状態や生活環境も考慮に入れることが重要です。

異常な冷え(冷え性)の原因とは?

異常な冷え、一般に「冷え性」と呼ばれる状態は、手足の末端や腰、お腹などが温まりにくく、常に冷たく感じる症状を指します。医学的な診断名ではありませんが、多くの人が日常生活で不快感を覚える症状であり、様々な原因によって引き起こされます。

冷え性の主な原因

冷え性の原因は多岐にわたりますが、主に以下の要素が複合的に関与していることが多いです。

  • 自律神経の乱れ: ストレスや不規則な生活習慣により、体温調節を司る自律神経(交感神経と副交感神経)のバランスが崩れると、血管が収縮しやすくなり、血行不良を引き起こします。
  • 血行不良: 運動不足による筋力低下、長時間の同じ姿勢、喫煙などが血流を悪化させ、手足の末端に血液が届きにくくなります。
  • 筋肉量の不足: 筋肉は体内で熱を産生する重要な役割を担っています。特に女性に冷え性が多いのは、男性に比べて筋肉量が少ないことが一因と考えられます。
  • 低血圧・貧血: 血液量が少ない、または血圧が低いと、全身に十分な血液が供給されにくくなり、冷えを感じやすくなります。
  • ホルモンバランスの乱れ: 更年期や生理周期に伴うホルモン変動は、自律神経に影響を与え、冷えを引き起こすことがあります。
  • 基礎疾患: 甲状腺機能低下症、レイノー病、閉塞性動脈硬化症などの病気が原因で冷えが生じることもあります[2]

冷え性の具体的な症状と臨床経験

冷え性の症状は、単に手足が冷たいだけでなく、肩こり、頭痛、腰痛、不眠、倦怠感など、全身の不調として現れることがあります。特に冬場だけでなく、夏場の冷房が効いた室内でも手足が冷たくなる「隠れ冷え性」の方も少なくありません。

日常診療では、「一年中、足先が氷のように冷たくて眠れない」「お腹が冷えるとすぐに下痢をしてしまう」といった訴えをよく経験します。特に女性の患者さんで、生理不順や月経痛といった婦人科系の症状と冷えが同時に現れるケースは非常に多いです。問診では、冷えを感じる部位や時間帯、生活習慣、食事内容、運動習慣、ストレスの有無などを詳しく聞き取り、冷えの原因を多角的に探るようにしています。また、冷えが原因で「しもやけ(凍瘡)」や、重症化すると「非凍結性寒冷障害(塹壕足)」のような状態を引き起こす可能性もあるため、注意が必要です[3]

冷え性と関連する疾患や状態

冷え性は、単なる体質と見過ごされがちですが、背景に重要な疾患が隠れていることもあります。例えば、甲状腺機能低下症では、代謝が低下して体温が上がりにくくなり、全身の冷えを感じることがあります。また、血管の病気であるレイノー病では、寒冷刺激や精神的ストレスにより手足の指の血管が発作的に収縮し、蒼白になったり紫色になったりする症状とともに強い冷えを伴います。これらの疾患は専門的な治療が必要となるため、冷えが強く、他の症状を伴う場合は、医療機関での精密検査が推奨されます。

多汗・冷えの対処法、市販薬、受診先は?

多汗と冷えの症状を改善するための市販薬と具体的な対処法を一覧で解説
多汗・冷えの改善策と市販薬

多汗や冷えの症状は、日常生活に大きな影響を与えることがあります。適切な対処法を知り、必要に応じて市販薬を活用し、症状が改善しない場合は医療機関を受診することが重要です。

多汗の対処法と市販薬

多汗の対処法は、原因や症状の程度によって異なります。

日常生活での対処法

  • 制汗剤の活用: 塩化アルミニウム配合の制汗剤は、汗腺に作用して汗の分泌を抑える効果が期待できます。夜寝る前に塗布し、朝洗い流す方法が一般的です。
  • 衣類の工夫: 吸湿性・速乾性に優れた素材の衣類を選び、重ね着を避けることで、汗による不快感を軽減できます。
  • ストレス管理: ストレスは多汗症を悪化させる要因となるため、リラックスできる時間を作る、適度な運動を取り入れるなど、ストレスを軽減する工夫が大切です。

市販薬の選び方

市販薬としては、塩化アルミニウム配合の制汗剤が一般的です。また、漢方薬では、精神的な緊張からくる多汗に効果が期待できるものもあります。例えば、「柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)」や「防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)」などが用いられることがあります。ただし、漢方薬は体質によって効果が異なるため、薬剤師や医師に相談して選ぶことをお勧めします。

タイプ主な成分期待される効果
外用制汗剤塩化アルミニウム汗腺を閉塞し、汗の分泌を抑制
漢方薬(内服)柴胡加竜骨牡蛎湯、防已黄耆湯など自律神経の調整、水分代謝の改善

冷えの対処法と市販薬

冷えの対処法は、生活習慣の改善が中心となります。

日常生活での対処法

  • 体を温める食事: 生姜や根菜類、発酵食品など、体を温める食材を積極的に取り入れましょう。温かい飲み物も効果的です。
  • 適度な運動: ウォーキングやストレッチなど、無理のない範囲で体を動かすことで、血行促進と筋肉量増加に繋がります。
  • 入浴: シャワーだけでなく、湯船にゆっくり浸かることで全身の血行が促進され、体の芯から温まります。
  • 衣類の工夫: 首、手首、足首など「首」とつく部位を温めることで、全身の冷えを軽減できます。重ね着や保温性の高い素材を選びましょう。

市販薬の選び方

冷え性対策の市販薬としては、血行促進作用のあるビタミンE製剤や、漢方薬がよく用いられます。漢方薬では、「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」や「桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)」、「当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)」などが冷えの改善に期待できます。これらの漢方薬は、血行を改善したり、体を温めたりする作用があるとされています。

受診の目安と医療機関

多汗や冷えの症状が日常生活に支障をきたす場合や、市販薬やセルフケアで改善が見られない場合は、医療機関を受診することをお勧めします。

⚠️ 注意点

多汗や冷えの症状が急に現れたり、体重減少、動悸、倦怠感、発熱などの他の症状を伴う場合は、早急に医療機関を受診してください。背景に重篤な疾患が隠れている可能性があります。

受診すべき医療機関

  • 皮膚科: 多汗症の専門的な治療(塩化アルミニウム外用、イオントフォレーシス、ボツリヌス毒素注射、内服薬など)が受けられます。
  • 内科: 冷えや多汗の原因が甲状腺機能亢進症・低下症、糖尿病などの内分泌疾患や、貧血などの全身性疾患である場合に診断・治療を行います。
  • 婦人科: ホルモンバランスの乱れによる冷えや多汗(更年期症状など)が疑われる場合に相談できます。
  • 心療内科・精神科: ストレスや不安、うつ病などが原因で多汗や冷えが悪化している場合に、精神的なケアや薬物療法を行います。

診察の場では、「どの科を受診すればいいかわからない」と質問される患者さんも多いです。まずはかかりつけ医に相談し、症状に応じて適切な専門医を紹介してもらうのがスムーズな方法です。専門医としては、患者さんの訴えを丁寧に聞き、全身状態を総合的に評価することが、適切な診断と治療に繋がると考えています。

多汗・冷えと他の症状の掛け合わせ(多汗・冷え+〇〇)とは?

多汗や冷えは、単独で現れることもありますが、他の様々な症状と同時に現れることで、特定の疾患を示唆する重要なサインとなることがあります。これらの症状の組み合わせを理解することは、早期診断と適切な治療に繋がります。

多汗と他の症状の組み合わせ

多汗が以下の症状と同時に現れる場合、背景に特定の疾患が隠れている可能性があります。

  • 多汗+動悸・体重減少・疲れやすい: 甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)の可能性があります。甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることで、代謝が異常に高まり、発汗量が増加し、心拍数も上昇します[2]
  • 多汗+発熱・倦怠感・寝汗: 感染症(結核など)や悪性腫瘍(リンパ腫など)の可能性があります。特に夜間の寝汗は、これらの疾患の重要な兆候となることがあります。
  • 多汗+手の震え・冷や汗・意識障害: 低血糖の可能性があります。糖尿病患者さんや、特定の薬剤を服用している場合に注意が必要です。
  • 多汗+顔面紅潮・高血圧発作: 褐色細胞腫という副腎の腫瘍が疑われます。カテコールアミンというホルモンが過剰に分泌されることで、これらの症状が発作的に現れます[2]

臨床現場では、「最近、汗をかく量が増えて、同時に心臓がドキドキする感じもする」という訴えから、甲状腺機能亢進症が発見されるケースをしばしば経験します。このような複合的な症状は、見逃さずに医療機関を受診することが極めて重要です。

冷えと他の症状の組み合わせ

冷えが以下の症状と同時に現れる場合も、注意が必要です。

  • 冷え+むくみ・体重増加・疲れやすい: 甲状腺機能低下症の可能性があります。甲状腺ホルモンの分泌が低下すると、代謝が落ち、体温が上がりにくくなります[2]
  • 冷え+手足の指の色変化(白→紫→赤)・しびれ: レイノー病や膠原病(全身性エリテマトーデス、強皮症など)の可能性があります。寒冷刺激で血管が過剰に収縮し、血流障害を起こします。
  • 冷え+間欠性跛行(歩くと足が痛くなる)・足のしびれ: 閉塞性動脈硬化症の可能性があります。足の血管が動脈硬化で狭くなり、血流が悪化することで冷えや痛みが生じます。
  • 冷え+便秘・肌の乾燥・抜け毛: これらも甲状腺機能低下症でよく見られる症状です。

筆者の臨床経験では、足の冷えと同時に歩行時の痛みを訴える患者さんで、閉塞性動脈硬化症が発見されたケースがあります。特に高齢の患者さんや喫煙歴のある患者さんでは、下肢の血流評価を積極的に行うようにしています。冷えが単なる体質ではなく、血管や内分泌系の問題から来ている可能性も考慮し、慎重な診察を心がけています。

複合症状への対応の重要性

多汗と冷え、そしてそれらに付随する他の症状は、身体が発する重要なサインです。これらのサインを見逃さず、早期に医療機関を受診することで、病気の進行を防ぎ、適切な治療を受けることができます。特に、これまで経験したことのない症状、急激に悪化した症状、日常生活に大きな支障をきたす症状がある場合は、自己判断せずに専門医に相談することが最も重要です。

まとめ

多汗と冷えの症状に悩む人が専門医に相談する様子、適切な治療の重要性
多汗・冷えの治療と専門医

多汗と冷えは、多くの人が経験する身近な症状ですが、その原因は自律神経の乱れから、甲状腺疾患、糖尿病、血管の病気、さらには精神的なストレスまで多岐にわたります。単なる体質と諦めず、日常生活での工夫や市販薬の活用を試みることが大切です。しかし、症状が改善しない場合や、他の症状(動悸、体重変化、発熱、痛み、しびれなど)を伴う場合は、背景に重要な疾患が隠れている可能性も考慮し、皮膚科、内科、婦人科、心療内科などの専門医への受診を検討しましょう。早期に適切な診断と治療を受けることで、症状の改善だけでなく、潜在的な疾患の発見にも繋がります。

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よくある質問(FAQ)

多汗と冷えは同時に起こることがありますか?
はい、多汗と冷えは同時に起こることがあります。例えば、自律神経の乱れが原因で、体の一部では過剰な発汗が起こる一方で、手足の末端では血行不良による冷えを感じるといったケースが考えられます。また、特定の疾患が原因で両方の症状が現れることもあります。
市販薬で多汗や冷えは改善できますか?
症状の程度や原因にもよりますが、市販薬で改善が期待できるケースもあります。多汗には塩化アルミニウム配合の制汗剤や漢方薬、冷えには血行促進作用のあるビタミンE製剤や漢方薬などが利用されます。ただし、自己判断せずに薬剤師に相談し、使用上の注意をよく読んでから使用してください。症状が改善しない場合は医療機関を受診しましょう。
多汗や冷えの改善のために、日常生活でできることはありますか?
はい、多くの対策があります。多汗に対しては、制汗剤の使用、吸湿速乾性の衣類選び、ストレス管理が有効です。冷えに対しては、体を温める食事、適度な運動、湯船に浸かる入浴、首・手首・足首を温める服装などが効果的です。規則正しい生活習慣を心がけ、自律神経のバランスを整えることも重要です。
多汗や冷えで受診する際、何科に行けば良いですか?
多汗症の場合は皮膚科、冷えの場合は内科や婦人科が一般的です。もし、動悸、体重変化、発熱、しびれなど他の症状を伴う場合は、内分泌内科や循環器内科、心療内科など、原因に応じた専門科を受診する必要があります。まずはかかりつけ医に相談し、適切な専門医を紹介してもらうのがスムーズです。
この記事の監修
💼
井上祐希
救急科医
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