小児感染症とは、乳幼児から学童期の子どもが罹患しやすい感染症の総称です。子どもは大人に比べて免疫機能が未熟であるため、様々な病原体に対する抵抗力が低く、感染症にかかりやすい傾向があります。また、集団生活を送る機会が多いため、感染症が広がりやすいという特徴もあります。この記事では、小児感染症の主な種類とその特徴、そして日々の診療でよく遭遇するケースについて、専門医の視点から詳しく解説します。
風邪・上気道感染症とは?一般的な症状と対処法

風邪・上気道感染症とは、主にウイルスが鼻や喉などの上気道に感染することで引き起こされる疾患群です。小児において最も頻繁にみられる感染症の一つであり、年間を通じて発生します。原因となるウイルスは多岐にわたり、ライノウイルス、コロナウイルス、アデノウイルス、RSウイルスなどが挙げられます。
小児の風邪の症状と特徴
小児の風邪の症状は、鼻水、鼻づまり、咳、喉の痛み、発熱などが一般的です。乳幼児では、これらの症状に加えて、不機嫌、食欲不振、睡眠障害などがみられることもあります。症状の程度は個人差が大きく、軽症で済む場合もあれば、高熱や咳が長引く場合もあります。特に乳幼児の場合、鼻水や鼻づまりが授乳や睡眠の妨げになることも少なくありません。日常診療では、「鼻が詰まってミルクが飲めない」「夜中に咳き込んで眠れない」と相談される方が多く、保護者の方の不安も大きいと感じています。
診断と治療のポイント
風邪の診断は、主に症状の問診と診察によって行われます。特別な検査は通常不要ですが、症状が重い場合や、他の疾患との鑑別が必要な場合には、迅速抗原検査やPCR検査が行われることもあります。治療は対症療法が中心となり、発熱に対しては解熱剤、鼻水や咳に対しては症状を和らげる薬が処方されることがあります。水分補給をしっかり行い、安静にすることが大切です。抗菌薬(抗生物質)はウイルス感染には効果がないため、通常は処方されません。ただし、細菌による二次感染(例えば中耳炎や副鼻腔炎など)が疑われる場合には、抗菌薬が検討されることもあります。
乳幼児の場合、風邪の症状が急速に悪化し、肺炎や気管支炎などの下気道感染症に移行することがあります。特に呼吸が苦しそう、顔色が悪い、ぐったりしているなどの症状が見られる場合は、速やかに医療機関を受診してください。
胃腸炎・下痢とは?子どもに多い感染経路と予防策
胃腸炎・下痢とは、胃や腸に炎症が起こり、嘔吐や下痢を主症状とする疾患です。小児において非常に一般的な感染症であり、特に乳幼児期に多く見られます。主な原因はウイルス感染で、ロタウイルス、ノロウイルス、アデノウイルスなどが代表的です。細菌感染(サルモネラ菌、O157など)によるものもありますが、ウイルス性が圧倒的に多数を占めます。
感染性胃腸炎の主な症状と経過
感染性胃腸炎の症状は、突然の嘔吐で始まり、その後下痢が続くことが多いです。発熱や腹痛を伴うこともあります。下痢は水様便が特徴で、回数も多く、脱水症状を起こしやすいのが小児の特徴です。特に乳幼児は体重に対する体液の割合が高く、脱水に陥りやすいため注意が必要です。私の臨床経験では、嘔吐が頻回で水分も摂れず、ぐったりして受診されるお子さんをよく診察します。保護者の方からは「こんなに吐くのは初めてで心配」という声がよく聞かれます。
家庭でのケアと医療機関受診の目安
感染性胃腸炎の治療も、基本的には対症療法が中心です。最も重要なのは脱水症状の予防と改善であり、経口補水液などでこまめに水分を補給することが大切です。吐き気が強い場合は、少量ずつ頻回に与えるようにします。食事は、消化の良いものを少量から始め、徐々に普段の食事に戻していきます。抗菌薬はウイルス性胃腸炎には効果がなく、細菌性の場合でも限定的な使用にとどまります。以下の症状が見られる場合は、速やかに医療機関を受診してください。
- ぐったりしている、元気がない
- おしっこが出ない、涙が出ないなど脱水症状が明らかな場合
- 血便がある
- 高熱が続く
- 激しい腹痛がある
予防策としては、手洗いの徹底が最も重要です。特に排泄後やおむつ交換後、調理前には石鹸と流水で十分に手を洗うように指導しています。ロタウイルスにはワクチンがあり、接種することで重症化を予防することが可能です。
発疹を伴う感染症とは?見分け方と注意すべき疾患

発疹を伴う感染症とは、ウイルスや細菌の感染によって、皮膚に様々な形態の発疹が出現する疾患群です。小児期に特有のものが多く、麻疹、風疹、水痘、手足口病、突発性発疹、りんご病などが代表的です。発疹の形態や出現部位、発熱などの随伴症状によって、ある程度の鑑別が可能です。
主な発疹性疾患とその特徴
それぞれの疾患には特徴的な発疹と経過があります。
- 麻疹(はしか): 高熱、咳、鼻水、目の充血に続き、全身に赤い発疹が出現します。非常に感染力が強く、重症化のリスクが高い疾患です。予防接種が極めて重要です。
- 風疹(三日はしか): 発熱とともに全身に淡い赤い発疹が出ます。麻疹より症状は軽いことが多いですが、妊娠中の女性が感染すると胎児に影響を及ぼす可能性があります。
- 水痘(水ぼうそう): 全身に水ぶくれを伴う発疹が特徴です。かゆみが強く、発熱を伴うこともあります。ワクチンで予防可能です。
- 手足口病: 手、足、口の中に水疱性の発疹が出現します。発熱を伴うこともあります。夏に流行することが多いです。
- 突発性発疹: 生後6ヶ月〜2歳頃の乳幼児に多く、高熱が数日続いた後、熱が下がると同時に全身に赤い発疹が出現します。
- りんご病(伝染性紅斑): 頬が赤くなるのが特徴で、その後腕や足に網目状の発疹が広がります。
診察の場では、「この発疹は何の病気ですか?」と質問される患者さんも多いです。発疹の性状、出現順序、他の症状との組み合わせから総合的に判断します。特に麻疹や風疹、水痘は予防接種で防げる疾患であり、接種率の維持が重要です。
発疹を伴う感染症の診断と対応
発疹を伴う感染症の診断は、発疹の視診と問診が中心となります。必要に応じて、血液検査やウイルス抗原検査が行われることもあります。治療は対症療法が基本ですが、水痘には抗ウイルス薬が用いられることもあります。発疹性疾患の中には、登園・登校停止期間が定められているものも多いため、診断後は医師の指示に従うことが重要です。また、発疹を掻きむしることで細菌感染を起こすこともあるため、爪を短く切る、かゆみ止めを使用するなどの対策も有効です。
その他の感染症とは?重症化リスクと予防の重要性
小児感染症には、上記以外にも様々な種類があり、中には重症化リスクが高いものも存在します。例えば、細菌性髄膜炎、急性骨髄炎[1]、肺炎、尿路感染症などが挙げられます。これらの感染症は、早期診断と適切な治療が予後を大きく左右するため、保護者の方には特に注意していただきたい疾患です。
重症化リスクのある感染症
- 細菌性髄膜炎: 脳や脊髄を覆う髄膜に細菌が感染する重篤な疾患です。高熱、嘔吐、頭痛、けいれん、意識障害などが主な症状です。Hibワクチンや肺炎球菌ワクチンで予防が可能です。
- 急性骨髄炎: 骨に細菌が感染し、炎症を起こす疾患です。発熱、患部の痛みや腫れ、歩行困難などがみられます。早期の抗菌薬治療が必要です[1]。
- 肺炎: 肺に炎症が起こる疾患で、ウイルス性が多いですが、細菌性の場合もあります。咳、発熱、呼吸困難が主な症状です。
- 尿路感染症: 尿路に細菌が感染する疾患で、乳幼児では発熱のみが症状であることも少なくありません。放置すると腎臓に影響を及ぼす可能性があります。
臨床現場では、特に乳幼児で発熱の原因がはっきりしない場合、これらの重篤な感染症を常に念頭に置いて診療を進めます。血液検査や尿検査、画像検査などを組み合わせて、正確な診断を目指します。早期発見のためには、普段と違う様子、特にぐったりしている、機嫌が悪い、顔色が悪いといったサインを見逃さないことが重要です。
予防接種による予防
これらの重症化リスクのある感染症の多くは、予防接種によって効果的に予防できます。Hibワクチン、肺炎球菌ワクチン、B型肝炎ワクチン、MRワクチン(麻疹・風疹)、水痘ワクチンなどは、小児の健康を守る上で非常に重要な役割を果たします。定期接種のスケジュールに沿って、確実に接種を受けることが推奨されます。
最新コラム(感染症): 小児感染症の動向と新たな知見
小児感染症の分野は常に進化しており、新たな病原体の出現や既存の感染症の動向変化、診断・治療法の進歩など、最新の知見が日々更新されています。感染症対策の専門家として、常に最新のエビデンスに基づいた情報提供を心がけています[3]。
小児感染症の国際的な動向
近年、国際的な人の移動や気候変動の影響により、これまで日本国内では稀だった感染症が報告されるケースも増えています。例えば、デング熱やジカ熱などの蚊媒介感染症、海外渡航歴のある小児における輸入感染症などです。また、薬剤耐性菌の問題も深刻化しており、抗菌薬の適正使用が世界的な課題となっています。小児科医は、これらの国際的な動向にも目を向け、適切な感染対策を講じる必要があります[2]。
新たな診断技術と治療法の進歩
診断技術の進歩も目覚ましく、PCR法などの分子生物学的検査の普及により、病原体の特定がより迅速かつ正確に行えるようになりました。これにより、適切な治療の早期開始や、感染拡大の防止に貢献しています。治療法においても、新たな抗ウイルス薬や抗菌薬の開発が進められており、特に重症感染症に対する治療選択肢が広がっています。しかし、薬剤耐性菌の出現を抑制するためにも、安易な抗菌薬の使用は避け、必要最小限の期間と量で投与することが重要です。
- 薬剤耐性菌
- 抗菌薬が効かなくなった細菌のこと。抗菌薬の不適切な使用により、薬剤耐性菌が増加するリスクがあります。
予防接種の重要性と今後の展望
予防接種は、小児感染症対策の要であり、新たなワクチンの開発も活発に進められています。例えば、RSウイルスに対するワクチンや、より広範囲の病原体に対応する多価ワクチンの研究などが挙げられます。予防接種の普及は、個々の子どもの健康を守るだけでなく、集団免疫の形成を通じて社会全体の感染症リスクを低減する効果も期待できます。
小児の肝炎・肝疾患とは?感染症との関連性

小児の肝炎・肝疾患とは、肝臓に炎症や機能障害が生じる病態の総称です。成人とは異なる原因や経過を示すことが多く、感染症が原因となるケースも少なくありません。肝炎ウイルス感染症(A型、B型、C型など)が代表的ですが、サイトメガロウイルスやEBウイルスなどの非肝炎ウイルスによっても肝機能障害が引き起こされることがあります。
小児肝炎の主な原因と症状
小児の肝炎の原因は多岐にわたりますが、感染症によるものが大きな割合を占めます。特にB型肝炎ウイルスは、母子感染によって出生時に感染し、キャリアとなるケースが依然として存在します。症状としては、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)、尿の色が濃くなる、食欲不振、倦怠感、腹痛などが挙げられます。しかし、小児の場合、症状が軽微であったり、無症状で経過したりすることも少なくなく、健康診断や他の病気の検査で偶然発見されることもあります。私の臨床経験では、乳児健診で肝機能異常を指摘され、精密検査の結果、サイトメガロウイルス感染症による肝炎と診断されたケースを経験したことがあります。早期の発見が重要です。
診断と治療の進歩
肝炎の診断には、血液検査による肝機能マーカー(AST, ALTなど)の測定や、肝炎ウイルスマーカーの検査が不可欠です。必要に応じて、腹部超音波検査や肝生検が行われることもあります。治療は原因によって異なりますが、ウイルス性肝炎の場合、対症療法が中心となることが多いです。B型肝炎やC型肝炎に対しては、近年、効果的な抗ウイルス薬が開発されており、小児においても適用が検討されることがあります。
| 肝炎の種類 | 主な感染経路 | 小児における特徴 |
|---|---|---|
| A型肝炎 | 経口感染(汚染された水や食品) | 急性肝炎のみ。慢性化しない。ワクチンあり。 |
| B型肝炎 | 血液・体液感染、母子感染 | 母子感染でキャリア化しやすい。ワクチンあり。 |
| C型肝炎 | 血液・体液感染 | 小児では稀だが、慢性化しやすい。 |
| 非肝炎ウイルス性肝炎 | 飛沫感染、接触感染など | サイトメガロウイルス、EBウイルスなどによる。一過性の肝機能障害が多い。 |
予防と長期的な管理
B型肝炎は、予防接種によって効果的に予防できます。現在、日本でもB型肝炎ワクチンは定期接種となっています。小児の肝炎・肝疾患は、慢性化すると将来的に肝硬変や肝がんのリスクがあるため、長期的なフォローアップが重要です。定期的な血液検査や画像検査で肝臓の状態を評価し、必要に応じて専門的な治療を継続していくことになります。
まとめ
小児感染症は、子どもの成長・発達に大きな影響を与える可能性のある重要な健康問題です。風邪や胃腸炎といった日常的な疾患から、麻疹や髄膜炎のような重症化リスクのある疾患まで、その種類は多岐にわたります。保護者の方々には、手洗いや予防接種といった基本的な感染対策を徹底していただくとともに、子どもの体調変化に注意を払い、異常を感じた際には速やかに医療機関を受診することが大切です。専門医として、正確な情報提供と適切な医療を通じて、子どもたちの健やかな成長をサポートしていきたいと考えています。
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- Charles R Woods, John S Bradley, Archana Chatterjee et al.. Clinical Practice Guideline by the Pediatric Infectious Diseases Society and the Infectious Diseases Society of America: 2021 Guideline on Diagnosis and Management of Acute Hematogenous Osteomyelitis in Pediatrics.. Journal of the Pediatric Infectious Diseases Society. 2021. PMID: 34350458. DOI: 10.1093/jpids/piab027
- Patricia A Normandin. Pediatric infectious diseases.. Journal of emergency nursing. 2016. PMID: 25770000. DOI: 10.1016/j.jen.2014.12.008
- Kenneth Alexander. Infectious diseases.. Pediatric annals. 2016. PMID: 25996194. DOI: 10.3928/00904481-20150512-07
- Paul Spearman, Yvonne J Bryson. The future of careers in pediatric infectious diseases: a call to action.. Current opinion in pediatrics. 2020. PMID: 30531403. DOI: 10.1097/MOP.0000000000000723





































