- ✓ 炎症後色素沈着(PIH)は、皮膚の炎症後に発生する色素沈着で、ニキビ跡や外傷後に多く見られます。
- ✓ 治療には外用薬やレーザー治療があり、早期の介入が重要です。
- ✓ 予防には紫外線対策が最も重要であり、炎症を適切に管理することも欠かせません。
炎症後色素沈着(PIH)は、皮膚に生じた炎症の後に、その部位に茶色や黒っぽい色素が残ってしまう状態を指します。ニキビや湿疹、やけど、外傷、皮膚炎、さらには一部の美容医療処置(レーザー治療など)が原因で発生することがあります[1]。特に肌の色が濃い人種で発生しやすいと報告されていますが、あらゆる肌タイプの人に起こりうる症状です[2]。
この記事では、炎症後色素沈着(PIH)の原因、具体的な治療法、そして効果的な予防策について、専門的な知見に基づきながらも分かりやすく解説します。
PIHの原因(ニキビ跡・レーザー後・外傷後)と治療法

炎症後色素沈着(PIH)は、皮膚の炎症反応によってメラニン色素が過剰に生成され、皮膚に沈着することで生じます。ここでは、主な原因とそれぞれの治療法について解説します。
PIHの原因とは?なぜ色素沈着が起こるのか
炎症後色素沈着(PIH)は、皮膚が炎症を起こした際に、表皮の基底層にあるメラノサイト(色素細胞)が刺激され、メラニン色素を過剰に生成することが主な原因です[1]。この過剰なメラニンが皮膚の表皮や真皮に沈着することで、茶色から黒色の斑点として現れます。臨床の現場では、ニキビが治った後に茶色いシミが残ってしまい、『これって治らないんですか?』と相談される患者さんも少なくありません。
主な原因となる炎症には、以下のようなものがあります。
- ニキビ(尋常性ざ瘡): 特に炎症性のニキビ(赤ニキビや膿疱)が治癒する過程でPIHが発生しやすいです[2]。
- レーザー治療後の炎症: レーザー治療後のダウンタイム中に適切なケアを怠ると、炎症が遷延しPIHを誘発することがあります。特に、肌タイプやレーザーの種類によってはリスクが高まります。
- 外傷や火傷: 切り傷、擦り傷、火傷などの皮膚の損傷後にも、治癒過程で炎症が起こりPIHが生じることがあります。
- 湿疹や皮膚炎: アトピー性皮膚炎や接触皮膚炎など、慢性的な炎症を伴う皮膚疾患もPIHの原因となります。
PIHの治療法:どのような選択肢がある?
PIHの治療は、色素沈着の深さや原因、患者さんの肌質によって異なります。実際の診療では、色素沈着の程度と患者さんのライフスタイルに合わせて、最適な治療計画を立てることが重要なポイントになります。実臨床では、複数の治療法を組み合わせることで、より効果的な改善を目指しています。
外用薬による治療
外用薬はPIH治療の第一選択肢となることが多く、自宅で継続的にケアできる点がメリットです。複数の成分が報告されています[3]。
- ハイドロキノン: メラニン生成を抑える作用があり、「肌の漂白剤」とも呼ばれます。2~4%の濃度が一般的に使用されます[5]。
- トレチノイン(レチノイン酸): 皮膚のターンオーバーを促進し、メラニンの排出を助けます。ハイドロキノンと併用されることも多いです[6]。
- アゼライン酸: メラニン生成を抑制し、抗炎症作用も持ちます。ニキビ治療薬としても用いられます。
- ビタミンC誘導体: 抗酸化作用とメラニン生成抑制作用があり、マイルドな効果が期待できます。
- トラネキサム酸: 炎症を抑え、メラニン生成を抑制する作用があります。内服薬としても用いられます。
医療機関での治療
外用薬で効果が不十分な場合や、より迅速な改善を希望される場合には、医療機関での治療が検討されます。
- ケミカルピーリング: サリチル酸やグリコール酸などの薬剤を用いて、皮膚の古い角質を除去し、ターンオーバーを促進します。これにより、メラニンの排出が促されます。
- レーザー治療: QスイッチYAGレーザーやピコレーザーなどが、メラニン色素を破壊する目的で使用されます。特に真皮性のPIHに有効な場合があります[1]。ただし、レーザーの種類や設定によっては、かえってPIHを悪化させるリスクもあるため、専門医による適切な診断と施術が不可欠です。
- イオン導入・エレクトロポレーション: ビタミンC誘導体やトラネキサム酸などの有効成分を、電気の力を利用して皮膚の深部へ浸透させる治療です。
PIHの治療は、効果が現れるまでに数週間から数ヶ月かかることが一般的です。また、治療中に紫外線対策を怠ると、色素沈着が悪化する可能性があるため、十分な注意が必要です。
PIHの予防:紫外線対策・外用薬・ビタミンC導入

炎症後色素沈着(PIH)は、一度発生すると改善に時間がかかるため、予防が非常に重要です。特に、炎症が生じやすい状況にある方は、積極的な予防策を講じることをおすすめします。
PIHを予防するために最も重要なことは何ですか?
PIHの予防において最も重要なのは、炎症を最小限に抑えることと、紫外線から肌を守ることです[4]。日常診療では、ニキビ治療中の患者さんには、炎症を抑える治療と同時に、日焼け止め使用の徹底を強く指導しています。
1. 徹底した紫外線対策
紫外線はメラノサイトを刺激し、メラニン生成を促進するため、PIHの発生や悪化に大きく関与します。炎症がある部位は特に紫外線の影響を受けやすいため、徹底した対策が必要です。
- 日焼け止めの使用: SPF30以上、PA+++以上の日焼け止めを毎日使用し、2~3時間ごとに塗り直すことが推奨されます。
- 物理的な遮光: 帽子、日傘、サングラス、UVカット機能のある衣類などを活用し、直接的な日光暴露を避けます。
- 日中の外出を控える: 紫外線の強い時間帯(午前10時~午後2時頃)の外出をなるべく避けることも有効です。
2. 適切なスキンケアと炎症の管理
炎症自体を早期に鎮静化させることが、PIHの発生リスクを低減します。特にニキビや湿疹などの皮膚疾患がある場合は、皮膚科医の指導のもと、適切な治療を継続することが大切です。
- 刺激の少ない洗顔: 摩擦を避け、肌に優しい洗顔料を使用します。
- 保湿: 肌のバリア機能を保つために、十分な保湿を行います。
- ニキビや湿疹の早期治療: 炎症が慢性化する前に、適切な治療を受けることが重要です。
- 自己流の処置を避ける: ニキビを潰したり、皮膚を掻きむしったりすると、炎症が悪化しPIHのリスクが高まります。
3. 予防的な外用薬や美容医療の活用
炎症が起こりやすい体質の方や、過去にPIHを経験したことがある方には、予防的なアプローチも有効です。臨床の現場では、ニキビが頻繁にできる患者さんに、炎症が落ち着いた段階で予防的な外用薬やビタミンC導入を提案することがよくあります。
- 美白成分配合の外用薬: ビタミンC誘導体、トラネキサム酸、アゼライン酸など、メラニン生成を抑制する成分が配合された化粧品や医薬品を予防的に使用することが考えられます。
- ビタミンC導入: 炎症後の肌にビタミンCを導入することで、抗酸化作用とメラニン生成抑制作用が期待でき、PIHの発生を抑える可能性があります。
| 予防策 | 主な効果 | 推奨される状況 |
|---|---|---|
| 紫外線対策 | メラニン生成抑制、PIH悪化防止 | 全ての状況で必須 |
| 炎症の早期管理 | PIH発生リスク低減 | ニキビ、湿疹、外傷時 |
| 美白成分外用 | メラニン生成抑制 | 炎症後、PIH既往者 |
| ビタミンC導入 | 抗酸化、メラニン抑制 | 炎症後、肌の調子を整えたい時 |
- メラノサイトとは
- 皮膚の表皮の基底層に存在する細胞で、メラニン色素を生成する役割を担っています。紫外線や炎症などの刺激を受けると、メラニン生成が活発になります。
まとめ

炎症後色素沈着(PIH)は、ニキビや外傷、レーザー治療などの炎症後に生じる色素沈着であり、多くの方が悩む皮膚症状の一つです。その発生には、炎症によるメラノサイトの刺激とメラニン生成の増加が深く関わっています。
治療法としては、ハイドロキノンやトレチノインなどの外用薬が第一選択となることが多く、改善が見られない場合にはケミカルピーリングやレーザー治療などの医療機関での処置が検討されます。治療には時間がかかることが一般的であり、継続的なケアが重要です。
最も効果的な予防策は、炎症を早期に適切に管理することと、徹底した紫外線対策です。日焼け止めの使用や物理的な遮光に加え、炎症を悪化させないスキンケア、そして必要に応じて美白成分配合の外用薬やビタミンC導入などを活用することで、PIHの発生リスクを低減し、美しい肌を保つことが期待できます。
PIHでお悩みの方は、自己判断せずに皮膚科医に相談し、ご自身の肌の状態に合った適切な診断と治療計画を立てることが大切です。
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- Suteeraporn Chaowattanapanit, Narumol Silpa-Archa, Indermeet Kohli et al.. Postinflammatory hyperpigmentation: A comprehensive overview: Treatment options and prevention.. Journal of the American Academy of Dermatology. 2017. PMID: 28917452. DOI: 10.1016/j.jaad.2017.01.036
- Bridget P Kaufman, Taulun Aman, Andrew F Alexis. Postinflammatory Hyperpigmentation: Epidemiology, Clinical Presentation, Pathogenesis and Treatment.. American journal of clinical dermatology. 2018. PMID: 29222629. DOI: 10.1007/s40257-017-0333-6
- Marcus G Tan, Whan B Kim, Christine E Jo et al.. Topical treatment for postinflammatory hyperpigmentation: a systematic review.. The Journal of dermatological treatment. 2022. PMID: 34525885. DOI: 10.1080/09546634.2021.1981814
- Susan Taylor, Pearl Grimes, Joyce Lim et al.. Postinflammatory hyperpigmentation.. Journal of cutaneous medicine and surgery. 2009. PMID: 19706225. DOI: 10.2310/7750.2009.08077
- ハイドロキノン 添付文書 – PMDA(医薬品医療機器総合機構)
- トレチノイン 添付文書 – PMDA(医薬品医療機器総合機構)

