炎症後色素沈着(PIH)とは|原因・経過・治療を医師が解説

炎症後色素沈着(PIH)
Dermatology / Post-inflammatory hyperpigmentation

炎症後色素沈着(PIH)
原因・経過・治療の選び方

茶色い跡だけを急いで薄くするのではなく、残る炎症と診断を確かめ、刺激を減らしながら治療の必要性を判断します。

最終更新 2026-09-05医学レビュー 2026-09-05
FIRST原因となる炎症を止める
DISTINGUISH赤み・凹み・肝斑と分ける
TIME経過を写真で比較する
結論から

炎症後色素沈着(PIH)は、ニキビ、湿疹、かぶれ、やけど、外傷、美容施術などの炎症が落ち着いた後に残る平らな褐色の変化です。第一選択は、原因となる炎症を治療し、こする刺激と紫外線を減らすことです。外用薬や施術は選択肢ですが、完全消失を保証できる方法はなく、刺激やレーザーでかえって濃くなる可能性もあります。赤み、凹み、肝斑、老人性色素斑などを診察で分けてから治療を選びます。

01

炎症後色素沈着は炎症後に残る平らな褐色斑

皮膚の炎症に伴ってメラニンの産生や分布が変化し、炎症が落ち着いた後も褐色〜灰褐色の色調が残る状態をPIHと呼びます。ニキビだけでなく、湿疹、かぶれ、虫刺され、やけど、摩擦、レーザーなど医療行為を含む刺激の後にも起こります。[5]

皮膚の炎症が落ち着いた後にメラニンによる褐色の色調が残る過程を示す医療イラスト
イメージ図:炎症が落ち着く過程と色素が残る過程は同じ速さではありません。図は一般化した模式表現です。

色素が主に表皮にあるか、炎症によって真皮側にも及ぶかで色調や経過が異なります。ただし、見た目だけで深さや原因を正確に判断することはできません。

02

治療より先に原因の炎症を止める

PIHの色だけを治療しても、新しいニキビ、湿疹、かぶれ、摩擦が続けば新たな色素沈着が加わります。ニキビでは炎症期の標準治療と炎症軽快後の維持療法が重要で、日本皮膚科学会のガイドラインも活動性皮疹への継続治療を示しています。[1]

まず続けたい対応

  • 処方された原因疾患の治療を中断しない
  • 洗顔・保湿・遮光を刺激の少ない方法で続ける
  • 同じ照明・距離で月単位の写真を残す

診断・調整を先に行う状態

  • 新しい赤いニキビ、かゆみ、湿疹が続く
  • 美白剤や角質ケアでヒリつき・皮むけがある
  • 病変が盛り上がる、出血する、急に広がる
診察室から

診察では、茶色い跡だけでなく「今も赤い、かゆい、触ると痛い場所があるか」を確認します。活動性の炎症が残る部位に美白外用や施術を重ねると、何が刺激になったか分からなくなるため、先に原因治療とスキンケアを整理します。

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赤み・凹み・肝斑などとの違いを確認する

見える変化考える状態確認すること次の対応
平らな茶色〜灰褐色PIH直前の炎症や施術と位置が一致するか炎症を止め、遮光しながら経過を見る
平らな赤〜紫色炎症後紅斑など押したときの色調、炎症の残り原因治療と血管性変化を評価
凹み・盛り上がり瘢痕影、硬さ、癒着、厚み色素治療とは分けて相談
左右対称に広がる褐色肝斑など分布、摩擦、施術歴強い照射前に診断を確認
輪郭・色が不規則、出血腫瘍性病変など変化の速さ、ダーモスコピー美容施術より皮膚科診断を優先
ニキビ後の平らな褐色斑を皮膚科医が診察している様子
診察イメージ:PIHは赤みや瘢痕、別の色素性病変と混在することがあるため、治療前に分けて評価します。

シミの種類と見分け方では、肝斑・老人性色素斑・ADMなどとの違いをまとめています。

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経過観察・外用薬・施術を比較する

2024年の系統的レビューでは、外用、併用療法、レーザー・光治療などで部分的な改善は報告される一方、完全反応は多くなく、研究条件も不均一でした。レーザー・エネルギーデバイスで悪化した例も含まれます。[2][3]

選択肢向く可能性がある状況根拠の読み方主な注意
原因治療・遮光・経過観察炎症が最近落ち着いた、変化を記録できるすべての治療の土台改善速度には個人差がある
外用薬・化粧品表皮性が考えられ、刺激に耐えられる成分ごとに試験数と対象が異なる刺激性皮膚炎、乾燥、適応外使用
ケミカルピーリング活動性ニキビと色調を同時に評価する場合など小規模試験が多い刺激、びらん、新たなPIH
レーザー・光治療診断が確定し、他の方法と比較したうえで検討機器・波長・設定で結果が異なる熱傷、PIH悪化、色素脱失、瘢痕

ハイドロキノン、アゼライン酸、レチノイド、トラネキサム酸などは海外研究がありますが、日本での承認・保険適用、濃度、製剤、対象疾患は同じではありません。PIH専用の標準薬として自己判断で組み合わせないでください。

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自分に合う対応を選ぶ5つの手順

01
原因を特定

ニキビ、湿疹、かぶれ、摩擦、外傷、施術など、同じ場所に起きた炎症を確認します。

02
活動性を確認

赤み、かゆみ、痛み、新しい皮疹があれば原因治療を先に行います。

03
診断を分ける

PIH、赤み、瘢痕、肝斑などが混在していないか確認します。

04
基本対応をそろえる

こすらない洗浄、保湿、紫外線対策を行い、写真で経過を比べます。

05
追加治療を比較

外用や施術の根拠、費用、副作用、中止基準を確認して一つずつ試します。

日々の皮膚科診療から治療の効果判定では、診察室の照明だけでなく患者さんが撮影した同条件の写真も参考になります。数日ごとの変化ではなく、炎症の再発や日焼けを含めて月単位で見ます。診療上の観察であり、改善時期を保証するものではありません。
06

原因と予防を詳しく確認する

07

皮膚科へ相談したい変化と治療の中止目安

色素沈着と決めつけず早めに診察する変化

急に広がる、形が左右非対称、複数の色が混じる、盛り上がる、出血する、治りにくい傷になる、痛みや膿を伴う場合は、美白剤や美容施術を続けず皮膚科へ相談してください。

外用や施術後に強い赤み、腫れ、水疱、びらん、膿、増していく痛み、白抜けがある場合も、次回予約まで待たず実施施設または皮膚科へ連絡します。

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炎症後色素沈着でよくある質問

炎症後色素沈着は自然に消えますか?

時間とともに目立ちにくくなる場合はありますが、炎症の深さ、肌質、再発、紫外線曝露などで経過は異なります。改善時期を一律に決めず、同条件の写真で経過を確認します。

ニキビ跡の赤みもPIHですか?

赤い・紫色の平らな跡は炎症後紅斑などが考えられ、茶色いPIHとは主な色の成り立ちが異なります。両方が混在することもあるため、色だけで治療を選ばないでください。

ハイドロキノンを塗れば早く消えますか?

治療候補になる場合はありますが、刺激性皮膚炎で悪化することがあります。濃度、使用期間、国内での製剤区分や適応、妊娠・授乳などを確認し、自己判断で広範囲・長期間使わないでください。

レーザーなら早く治せますか?

レーザーで改善した研究はありますが、悪化、新たなPIH、色素脱失、瘢痕のリスクもあります。原因炎症と診断を確認し、外用や経過観察と比較して選びます。

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参考文献