- ✓ サブシジョンは、真皮と皮下組織の線維性瘢痕を切断し、ニキビ跡の凹みを改善する治療法です。
- ✓ 特にローリング型やボックス型のニキビ跡に効果が期待でき、他の治療と組み合わせることで相乗効果が得られます。
- ✓ 術後の内出血や腫れは一時的ですが、適切なアフターケアと複数回の治療が重要です。
ニキビ跡の凹み、特にクレーター状の瘢痕は、セルフケアでは改善が難しく、多くの方が悩みを抱えています。サブシジョン(皮下剥離術)は、このようなニキビ跡に対して直接的にアプローチし、凹みを改善する治療法の一つです。
サブシジョン(皮下剥離術)とは?そのメカニズムを解説

サブシジョン(Subcision)は、ニキビ跡によって皮膚が下に引っ張られてできる凹み(陥凹性瘢痕)を改善するために行われる外科的治療法です。この治療は、真皮と皮下組織の間にある線維性の癒着(瘢痕組織)を、特殊な針やカニューレを用いて物理的に切断することで、皮膚の凹みを持ち上げることを目的とします[1]。
ニキビの炎症が治まった後、真皮層のコラーゲン組織が破壊され、線維組織が異常に増殖することがあります。この線維組織が皮膚の表面を下に引っ張りつけることで、クレーター状のニキビ跡が形成されます。サブシジョンでは、この引っ張っている線維組織を剥がすことで、皮膚が本来の位置に戻りやすくなり、凹みが改善されるというメカニズムです。剥離された空間には、血液や組織液が貯留し、これが新しいコラーゲンの生成を促進し、瘢痕組織の再構築を促すと考えられています。
- 陥凹性瘢痕(かんおうせいはんこん)
- ニキビの炎症や外傷によって皮膚組織が失われたり、線維組織が皮膚を下に引っ張ったりすることで生じる、クレーター状やアイスピック状の凹んだニキビ跡の総称です。
サブシジョンはどのようなニキビ跡に効果的ですか?
サブシジョンは、ニキビ跡の中でも特に線維性の癒着が原因で生じる陥凹性瘢痕に高い効果を発揮します。ニキビ跡のタイプは主に以下の3つに分類されます。
- ローリング型(Rolling scars):緩やかな波状の凹みで、最もサブシジョンの適応となることが多いタイプです。皮膚が広範囲にわたって線維で引っ張られている状態です。
- ボックス型(Boxcar scars):辺縁がはっきりとした四角い凹みで、サブシジョンと他の治療の併用が推奨されることがあります。
- アイスピック型(Icepick scars):深く、狭いV字型の凹みで、サブシジョン単独では効果が限定的であり、TCAピーリングやパンチバイオプシーなどの併用が検討されます。
実臨床では、「顔全体のニキビ跡の凹みが気になって、化粧で隠しきれない」と相談される方が多く見られます。特にローリング型やボックス型のニキビ跡は、サブシジョンによって皮膚の凹みが持ち上がり、肌の表面がなめらかになる効果を実感しやすい傾向にあります。筆者の臨床経験では、治療開始から数ヶ月ほどで、肌の凹凸が改善され、化粧のノリが良くなったと喜ばれる患者さんが多いです。
サブシジョンの治療の流れと使用される器具

サブシジョンの治療は、通常、以下のステップで進められます。使用される器具も進化しており、患者さんの状態に合わせて選択されます[2]。
治療前の準備と診察
まず、医師がニキビ跡の状態を詳しく診察し、サブシジョンが適応となるか、また他の治療との組み合わせが必要かを判断します。この際、患者さんの肌質、ニキビ跡の深さや広がり、過去の治療歴などを確認します。日常診療では、「以前、レーザー治療を受けたけれど、あまり効果がなかった」というケースをよく経験しますが、その場合でもサブシジョンによって改善が見込めることがあります。
麻酔と処置
治療部位に局所麻酔を行います。麻酔が効いたことを確認した後、特殊な針やカニューレ(先端が丸く、横に穴が開いた管状の針)を皮膚に挿入し、皮膚の下で線維性の癒着を剥がしていきます。この際、医師は指で皮膚の凹みを触りながら、癒着の位置や深さを確認し、慎重に剥離作業を進めます。最近では、先端が鋭利な針だけでなく、鈍針(blunt cannula)やノベルティ針(Nokor needle)など、様々な形状の針が使用されており、患者さんの状態や医師の技術に応じて使い分けられています[2]。
剥離後、出血を抑えるために圧迫止血を行い、必要に応じて剥離した空間に生理食塩水やヒアルロン酸などの充填剤を注入することもあります。これは、剥離した空間が再び癒着するのを防ぎ、コラーゲン生成を促進する目的で行われます。
治療後のケア
治療後は、内出血や腫れが生じることがありますが、これらは通常数日から1週間程度で落ち着きます。処置部位を清潔に保ち、医師の指示に従って軟膏の塗布や冷却を行います。また、紫外線対策も重要です。
| 項目 | 鋭利針(Sharp Needle) | 鈍針(Blunt Cannula) |
|---|---|---|
| 先端形状 | 鋭利 | 丸い |
| 剥離効果 | 高い(線維を切断しやすい) | 比較的穏やか(組織を押し広げる) |
| 内出血・腫れ | 生じやすい | 生じにくい |
| 神経・血管損傷リスク | やや高い | 低い |
| 適応 | 深い線維性瘢痕 | 広範囲のローリング型瘢痕、血管・神経が多い部位 |
サブシジョンと他のニキビ跡治療との併用は可能ですか?
サブシジョンは単独でも効果を発揮しますが、他の治療法と組み合わせることで、より高い相乗効果が期待できます。特に、ニキビ跡のタイプや肌の状態に応じて、複数の治療を組み合わせる「コンビネーション治療」が推奨されることが多いです[1]。
ダーマペン・マイクロニードリング
ダーマペンやマイクロニードリングは、微細な針で皮膚に多数の穴を開け、肌の自然治癒力を利用してコラーゲン生成を促す治療です。サブシジョンで線維を剥がした後、ダーマペンで表皮から真皮浅層にアプローチすることで、肌のハリや弾力を改善し、全体的な肌質向上に繋がります。
フラクショナルレーザー
フラクショナルレーザーは、皮膚に微細な熱損傷を与え、新しい皮膚の再生を促す治療です。サブシジョンで凹みを持ち上げた後、レーザーで表面の凹凸を滑らかにしたり、コラーゲン生成をさらに促進したりする目的で併用されます。
注入治療(ヒアルロン酸、PRP、PCLなど)
サブシジョンで剥離した空間にヒアルロン酸やPRP(多血小板血漿)、PCL(ポリカプロラクトン)などの充填剤を注入することで、凹みを物理的に持ち上げ、再癒着を防ぐ効果が期待できます[4]。これにより、より即時的な改善効果と、長期的なコラーゲン生成の促進が期待できます。臨床現場では、特に深い凹みに対して、ヒアルロン酸注入を併用することで、治療効果の持続性や満足度が高まるケースを多く経験します。ただし、注入剤の種類や量、注入部位は医師が慎重に判断する必要があります。
TCAピーリング
TCA(トリクロロ酢酸)ピーリングは、皮膚に化学的な刺激を与えて、新しい皮膚の再生を促す治療です。特にアイスピック型のような狭く深いニキビ跡に対して、TCAをピンポイントで塗布する「TCA CROSS」という手法が有効です。サブシジョンで広範囲の凹みを改善し、TCA CROSSで個別の深い跡を治療するといった組み合わせが考えられます。
高周波(RF)治療
高周波(RF)治療は、熱エネルギーを皮膚深部に与えることでコラーゲン生成を促進し、肌の引き締めやニキビ跡の改善を図る治療です。最近では、サブシジョンと同時に高周波エネルギーを照射する「エンドラジオ波サブシジョン」という新しい技術も報告されており、線維の剥離とコラーゲン生成の促進を同時に行うことで、より効果的な治療が期待されています[3]。
コンビネーション治療は、患者さんのニキビ跡の状態や肌質によって最適な組み合わせが異なります。必ず専門の医師と十分に相談し、ご自身の状態に合った治療計画を立てることが重要です。
サブシジョン治療後の経過と注意すべき副作用

サブシジョン治療後の経過は個人差がありますが、一般的に数日から数週間で落ち着きます。しかし、いくつかの注意すべき副作用も存在します。
治療後の一般的な経過
- 内出血(あざ):針を挿入し線維を剥がす際に、毛細血管が損傷することで内出血が生じます。これは治療の過程で避けられないものであり、通常1〜2週間程度で自然に吸収されて消えていきます。
- 腫れ:治療部位に軽度から中程度の腫れが生じることがあります。これも数日から1週間程度で徐々に引いていきます。
- 痛み・圧痛:治療後数日間は、触れると痛みを感じたり、圧痛があったりすることがあります。必要に応じて鎮痛剤が処方されることもあります。
日々の診療では、「内出血が思ったより広範囲に出て驚いた」と不安を訴える患者さんも少なくありません。しかし、これは一時的なものであり、適切なアフターケアと時間経過で改善することを丁寧に説明しています。特に、治療直後の内出血は目立つことがありますが、コンシーラーなどでカバーできる範囲であることがほとんどです。
注意すべき副作用
- 感染:非常に稀ですが、処置部位から細菌が侵入し感染症を引き起こす可能性があります。治療後は指示された通りに清潔を保ち、異常を感じたらすぐに医療機関に連絡することが重要です。
- 色素沈着:炎症後色素沈着(PIH)として、治療部位が一時的に茶色っぽくなることがあります。特に肌の色が濃い方や、紫外線対策が不十分な場合に生じやすいですが、通常は数ヶ月かけて徐々に薄れていきます。
- 瘢痕の悪化:極めて稀ですが、不適切な処置や体質によっては、新たな瘢痕形成や既存の瘢痕の悪化を招く可能性もゼロではありません。
- 神経損傷:顔面には多くの神経が走行しているため、稀に神経を損傷し、一時的な麻痺や感覚異常が生じることがあります。熟練した医師による慎重な手技が求められます。
実際の診療では、治療後の経過観察を非常に重視しています。特に、内出血や腫れの程度、痛みの有無、そして感染兆候がないかなどを細かく確認し、患者さんの不安を軽減できるよう努めています。また、色素沈着のリスクを減らすため、術後の徹底した紫外線対策や美白剤の使用を推奨しています。
サブシジョンの効果を最大化するためのポイントと治療回数は?
サブシジョンは一度の治療で劇的な改善が見られることもありますが、多くの場合、複数回の治療と適切なアフターケア、そして他の治療との組み合わせが効果を最大化する鍵となります。臨床経験上、サブシジョンは治療回数を重ねることで、より満足度の高い結果に繋がりやすい傾向があります。
治療回数と間隔
ニキビ跡の深さや広がり、個人の肌の回復力によって異なりますが、一般的には3〜5回程度の治療が必要となることが多いです。治療間隔は、肌の回復を待つために1〜2ヶ月程度空けるのが一般的です。複数回の治療によって、徐々に線維組織が剥がされ、新しいコラーゲンが生成されることで、ニキビ跡の凹みが段階的に改善されていきます。
効果を最大化するためのポイント
- 適切なニキビ跡の診断:サブシジョンの適応となるニキビ跡の種類を正確に診断することが最も重要です。医師の専門的な判断が不可欠です。
- コンビネーション治療の検討:前述の通り、サブシジョン単独ではなく、ダーマペン、レーザー、注入治療などと組み合わせることで、より包括的な改善が期待できます[1]。
- 術後の適切なケア:内出血や腫れを最小限に抑え、感染を防ぐために、医師の指示に従ったアフターケアを徹底することが重要です。特に、紫外線対策は色素沈着を防ぐ上で欠かせません。
- 十分なコラーゲン生成期間:剥離された空間に新しいコラーゲンが生成されるまでには時間がかかります。焦らず、長期的な視点で治療に取り組むことが大切です。
臨床現場では、治療計画を立てる際に、患者さんのライフスタイルやダウンタイムの許容度も考慮に入れます。例えば、重要なイベントを控えている場合は、その時期を避けて治療スケジュールを調整するなどの配慮も行います。また、治療効果には個人差が大きいと感じており、特に重度のニキビ跡の場合、一度の治療で完全に平坦になることは難しいことを事前に説明し、現実的な目標設定を共有するようにしています。
まとめ
サブシジョン(皮下剥離術)は、ニキビ跡の中でも特に線維性の癒着によって生じる陥凹性瘢痕に対して、直接的にアプローチし改善を促す有効な治療法です。ローリング型やボックス型のニキビ跡に高い効果が期待でき、ダーマペンやレーザー、注入治療など他の治療法と組み合わせることで、より総合的な肌質改善を目指せます。治療後の内出血や腫れは一時的ですが、適切なアフターケアと複数回の治療が成功の鍵となります。ニキビ跡でお悩みの方は、専門の医師と十分に相談し、ご自身の状態に合った最適な治療計画を立てることが重要です。
よくある質問(FAQ)
- Linlin Miao, Yizhao Ma, Zhifang Liu et al.. Modern techniques in addressing facial acne scars: A thorough analysis.. Skin research and technology : official journal of International Society for Bioengineering and the Skin (ISBS) [and] International Society for Digital Imaging of Skin (ISDIS) [and] International Society for Skin Imaging (ISSI). 2024. PMID: 38303407. DOI: 10.1111/srt.13573
- Yolanka Lobo, Davin S Lim. Surgical Subcision for Acne Scars: A Review of Instrumentation.. Dermatologic surgery : official publication for American Society for Dermatologic Surgery [et al.]. 2023. PMID: 36943759. DOI: 10.1097/DSS.0000000000003706
- Mohammad Ali Nilforoushzadeh, Maryam Heidari-Kharaji, Tannaz Fakhim et al.. Endo-Radiofrequency subcision for acne scars treatment: A case series study.. Journal of cosmetic dermatology. 2022. PMID: 35770321. DOI: 10.1111/jocd.15195
- Mohammad Ali Nilforoushzadeh, Maryam Heidari-Kharaji, Shiva Alavi et al.. Acne scar treatment using combination therapy: Subcision and human autologous fibroblast injection.. Journal of cosmetic dermatology. 2022. PMID: 35426216. DOI: 10.1111/jocd.14988





































