- ✓ ADMの治療にはQスイッチレーザーとピコレーザーが有効で、特にピコレーザーは治療回数の減少やダウンタイムの短縮が期待できます。
- ✓ 治療回数はADMの深さや広がり、使用するレーザーの種類によって異なり、複数回の治療が一般的です。
- ✓ 治療後の経過では、一時的な色素沈着や赤みが生じることがありますが、適切なアフターケアでリスクを最小限に抑えられます。
ADM(後天性真皮メラノサイトーシス)は、アジア系の女性に多く見られる顔の左右対称に現れる色素斑で、通常のシミとは異なり真皮層にメラニン色素が存在するため、治療には専門的なアプローチが必要です。特にレーザー治療が効果的であり、Qスイッチレーザーやピコレーザーが用いられます。
ADM(後天性真皮メラノサイトーシス)とは?

ADMは、顔の頬骨部や鼻根部、こめかみなどに左右対称に現れる、やや青みがかったり灰色がかったりする色素斑です。通常のシミ(老人性色素斑)が表皮にメラニンが存在するのに対し、ADMは真皮と呼ばれる皮膚の深い層にメラニンを産生する細胞(メラノサイト)が存在することが特徴です。
- ADM(後天性真皮メラノサイトーシス)
- Acquired Dermal Melanocytosisの略で、皮膚の真皮層にメラニン色素を持つ細胞が存在することで生じる色素斑です。20代以降のアジア人女性に多く見られ、肝斑や一般的なシミと混同されやすいですが、治療法が異なるため正確な診断が重要です。
ADMの診断は、専門医による視診とダーモスコピー(拡大鏡)を用いた観察が重要です。場合によっては、他の色素斑との鑑別のために皮膚生検が行われることもあります。臨床現場では、「これ、シミだと思ってずっとコンシーラーで隠していたんです」と相談される方が少なくありませんが、ADMと診断された場合は、通常のシミとは異なる治療計画が必要となります。
ADM治療におけるレーザーの役割とは?
ADMの治療には、真皮層のメラニン色素を効果的に破壊できるレーザーが不可欠です。主にQスイッチレーザーとピコレーザーが用いられます。
Qスイッチレーザーのメカニズムと効果
Qスイッチレーザーは、非常に短い時間(ナノ秒単位)で高出力のレーザー光を照射することで、メラニン色素をピンポイントで破壊します。破壊されたメラニン色素は、体内のマクロファージという細胞によって少しずつ貪食・排出されていきます。
- 波長の種類: 主に1064nm(Nd:YAGレーザー)や532nm(KTPレーザー)が使用されます。ADMの真皮メラニンには1064nmが適しています。
- 効果: メラニン色素を効率的に破壊し、ADMの色調を薄くする効果が期待できます。
ピコレーザーのメカニズムと効果
ピコレーザーは、Qスイッチレーザーよりもさらに短い時間(ピコ秒単位)でレーザー光を照射します。照射時間が短いため、熱作用が少なく、光音響効果によってメラニン色素をより微細な粒子に粉砕することが可能です。これにより、より少ない回数での治療や、治療後のダウンタイムの短縮が期待されます[1][2]。
- 波長の種類: 755nm(アレキサンドライトレーザー)、1064nm(Nd:YAGレーザー)、532nm(KTPレーザー)、730nm(チタンサファイアレーザー)など、様々な波長があります。特に755nmアレキサンドライトレーザーは、アジア人の真皮色素沈着に有効性が示されています[3][4]。
- 効果: Qスイッチレーザーに比べて、より効率的にメラニンを破壊し、治療回数の減少や炎症後色素沈着のリスク軽減が期待されます。
日常診療では、「以前Qスイッチレーザーで治療したけど、なかなか良くならなくて…」と相談される患者さんも少なくありません。そのような場合、ピコレーザーへの切り替えを検討することで、より良い結果が得られることがあります。特に、ピコレーザーは730nmの波長を用いた研究で、1064nmのピコレーザーと比較して同等以上の効果と安全性が示唆されています[1]。
ADM治療の回数と期間はどのくらい?

ADMの治療回数と期間は、ADMの深さ、広がり、個人の肌質、使用するレーザーの種類、そして治療への反応によって大きく異なります。
Qスイッチレーザーの場合
Qスイッチレーザーを用いたADM治療では、一般的に5回から10回程度の治療が必要となることが多いです。治療間隔は、肌の回復を考慮して1〜2ヶ月に1回程度が推奨されます。そのため、治療期間は半年から1年以上かかることが一般的です。
- 治療回数の目安: 5〜10回
- 治療間隔: 1〜2ヶ月に1回
- 総治療期間: 半年〜1年以上
ピコレーザーの場合
ピコレーザーは、Qスイッチレーザーよりもメラニン色素を微細に粉砕できるため、より少ない回数で効果を実感できる傾向があります。多くの研究で、ピコレーザーによるADM治療は3回から6回程度の治療で良好な結果が得られることが報告されています[2][3]。治療間隔は1ヶ月から2ヶ月に1回程度が一般的です。そのため、総治療期間は3ヶ月から1年程度となることが多いです。
- 治療回数の目安: 3〜6回
- 治療間隔: 1〜2ヶ月に1回
- 総治療期間: 3ヶ月〜1年
| 項目 | Qスイッチレーザー | ピコレーザー |
|---|---|---|
| レーザー照射時間 | ナノ秒 | ピコ秒 |
| メラニン破壊の効率 | 中程度 | 高い(微細な粉砕) |
| 熱作用 | 比較的大きい | 少ない |
| 治療回数の目安 | 5〜10回 | 3〜6回 |
| 治療間隔 | 1〜2ヶ月 | 1〜2ヶ月 |
| 炎症後色素沈着のリスク | やや高い | 比較的低い |
筆者の臨床経験では、ADMの治療において、ピコレーザーを用いた場合、治療開始から3〜4ヶ月ほどで「肌の色がワントーン明るくなった」「メイクで隠しやすくなった」といった改善を実感される方が多いです。しかし、ADMの深さや濃さには個人差が大きいため、最終的な回数は診察時に詳しく説明するようにしています。
ADM治療後の経過と注意点
レーザー治療後の経過は、使用するレーザーの種類や個人の肌質によって異なりますが、いくつかの共通した注意点があります。
治療直後の反応
- 赤みと腫れ: 治療直後には、照射部位に赤みや軽度の腫れが生じることがあります。これは数時間から数日で落ち着くことがほとんどです。
- かさぶた: Qスイッチレーザーの場合、治療部位に微細なかさぶたができることがあります。これは無理に剥がさず、自然に剥がれ落ちるのを待つことが重要です。ピコレーザーでは、かさぶたができないか、できてもごく薄いことが多いです。
- 色素の濃化: 一時的にADMの色が濃くなったように見えることがあります。これは破壊されたメラニンが浮き上がってくる過程で起こる現象であり、心配はいりません。
ダウンタイムとアフターケア
ダウンタイムとは、治療後に日常生活に支障が出る期間を指します。ADMのレーザー治療では、通常数日〜1週間程度が目安となります。
- 冷却: 治療直後には冷却を行い、炎症を抑えます。
- 保湿: 治療後の肌は乾燥しやすいため、十分な保湿が重要です。
- 紫外線対策: 最も重要なのが徹底した紫外線対策です。日焼け止めクリームの塗布、帽子や日傘の使用を欠かさないようにしてください。紫外線は炎症後色素沈着のリスクを高めるだけでなく、ADMの再発や悪化の原因にもなり得ます。
- 摩擦を避ける: 治療部位をこすったり、刺激を与えたりしないように注意しましょう。
レーザー治療後の炎症後色素沈着(PIH)は、特にアジア人の肌で起こりやすい合併症です。一時的なものですが、適切なアフターケアを怠ると長引くことがあります。日々の診療では、「治療後に一時的に濃くなった気がする」という患者さまも少なくありませんが、これは治療過程で起こり得る反応であり、多くの場合、時間とともに改善します。医師の指示に従い、適切なスキンケアと紫外線対策を継続することが非常に重要です。
ADM治療の副作用とリスクは?

ADMのレーザー治療は効果的な一方で、いくつかの副作用やリスクも伴います。これらを理解し、適切に対処することが安全な治療には不可欠です。
主な副作用
- 炎症後色素沈着(PIH): レーザー照射による炎症反応が原因で、一時的に治療部位が褐色に色素沈着することがあります。これは数ヶ月かけて徐々に薄くなることがほとんどですが、個人差があります。ピコレーザーはQスイッチレーザーに比べてPIHのリスクが低いとされています[4]。
- 赤み、腫れ、痛み: 治療直後に生じることがあり、通常は数日で治まります。
- 水疱、かさぶた: 稀に水疱や厚いかさぶたができることがあります。無理に触らず、医師の指示に従ってください。
稀なリスク
- 瘢痕(傷跡): 非常に稀ですが、不適切な治療やアフターケアにより瘢痕が残る可能性があります。
- 色素脱失: メラニン色素が過度に破壊され、治療部位が周囲の皮膚よりも白くなることがあります。
- アレルギー反応: 治療に使用する薬剤や麻酔に対してアレルギー反応を起こすことがあります。
臨床現場では、治療前のカウンセリングでこれらのリスクについて丁寧に説明し、患者さんが納得した上で治療に進むことを重視しています。特に、炎症後色素沈着は「シミが濃くなった」と感じるため、患者さんの不安につながりやすいです。そのため、治療前から「一時的に濃くなる時期があること」を具体的に伝え、経過を一緒に追っていくことが重要だと感じています。
ADM治療の適切なクリニック選びのポイントは?
ADMの治療は専門的な知識と経験を要するため、クリニック選びは非常に重要です。
専門医による診断と治療計画
ADMは肝斑や他のシミと見分けがつきにくいことがあり、誤診されると適切な治療が行われない可能性があります。皮膚科専門医やレーザー治療の経験が豊富な医師による正確な診断と、個々のADMの状態に合わせた治療計画が立てられるクリニックを選ぶことが重要です。
複数のレーザー機器の選択肢
Qスイッチレーザーとピコレーザー、それぞれに特徴があり、ADMの状態や患者さんの希望(ダウンタイムの許容度など)に応じて最適な機器を選択できることが望ましいです。特にピコレーザーは新しい技術であり、複数の波長(例: 755nm、1064nm、730nm)を使い分けられるクリニックであれば、よりきめ細やかな治療が期待できます。
丁寧なカウンセリングとアフターケア
治療回数、期間、費用、リスク、アフターケアについて、納得がいくまで丁寧に説明してくれるクリニックを選びましょう。治療後の経過観察や、万が一のトラブル発生時の対応体制も確認しておくことが大切です。実際の診療では、初診時に患者さんのADMの状態を詳細に診察し、ダーモスコピーを用いて色素の深さや広がりを評価します。その上で、Qスイッチレーザーとピコレーザーそれぞれのメリット・デメリット、予想される治療回数や期間、費用、そして治療後の具体的な経過について、時間をかけて説明するようにしています。
まとめ
ADM(後天性真皮メラノサイトーシス)は、真皮層にメラニン色素が存在する特殊な色素斑であり、Qスイッチレーザーやピコレーザーを用いた専門的な治療が必要です。ピコレーザーは、より短い照射時間でメラニンを微細に粉砕できるため、Qスイッチレーザーに比べて少ない回数での治療やダウンタイムの短縮が期待されます。治療回数はADMの状態によって異なりますが、ピコレーザーで3〜6回、Qスイッチレーザーで5〜10回程度が目安です。治療後の経過では一時的な赤みや色素沈着が生じることがありますが、適切なアフターケアと紫外線対策を徹底することで、リスクを最小限に抑え、良好な治療結果を目指すことができます。専門医による正確な診断と、個々の状態に合わせた適切な治療計画、そして丁寧なアフターケアが受けられるクリニック選びが、ADM治療を成功させる鍵となります。
よくある質問(FAQ)
- Wanxin Chen, Zhongshuai Wang, Zhenzhen Li et al.. Comparison of the efficacy and safety of a 730-nm picosecond titanium sapphire laser and a 1064-nm picosecond neodymium yttrium aluminum garnet laser for the treatment of acquired bilateral nevus of Ota-like macules: A split-face, evaluator-blinded, randomized, and controlled pilot trial.. Journal of cosmetic dermatology. 2024. PMID: 39180331. DOI: 10.1111/jocd.16511
- Rui Han, Yifang Sun, Mingshan Su. Efficacy and Safety of 730-nm Picosecond Laser for the Treatment of Acquired Bilateral Nevus of Ota-like Macules.. Dermatologic surgery : official publication for American Society for Dermatologic Surgery [et al.]. 2025. PMID: 39773863. DOI: 10.1097/DSS.0000000000004545
- Hui Ding, Yin Yang, Lifang Guo et al.. Use of a Picosecond Alexandrite Laser for Treating Acquired Bilateral Nevus of Ota-Like Macules in Chinese Patients.. Lasers in surgery and medicine. 2021. PMID: 32282092. DOI: 10.1002/lsm.23245
- Sindy Hu, Ching-Sheng Yang, Shyue-Luen Chang et al.. Efficacy and safety of the picosecond 755-nm alexandrite laser for treatment of dermal pigmentation in Asians-a retrospective study.. Lasers in medical science. 2020. PMID: 31965352. DOI: 10.1007/s10103-020-02959-7
- アルボ(カウンセリン)添付文書(JAPIC)





































